6月9日、新型コロナウイルスの最新の感染状況が公表され、加藤厚生労働大臣は「緩やかな増加傾向にある」と懸念を示した。ただこの夏はコロナではない、別のウイルスによる感染症が増えるおそれも指摘されている。流行しているウイルスについて取材した。

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新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類になってから1カ月。9日朝のJR大阪駅で、どれだけの人がマスクを着用しているか分析してみた。AIで解析(技術提供:デジタルみらい)をしてみると、6月9日午前9時は65%だった。5類移行直後の5月8日午前9時は87%だったので、少しずつマスクを外す人が増えているようだ。

10代男性:
先週ぐらいから外しました。着けてても息苦しい

40代女性:
いったん取った(外した)時期が3日間・4日間続くと、再度着けると苦しくなってきたということもあって、取ってます

40代女性:
マスクを外す生活に入っていけない感じです。まだ習慣が抜けないです

70代男性:
年いってきたんで、用心のために(マスクは外さない)

新型コロナウイルスの感染状況は、定点観測で、6月4日までの直近1週間の患者数は、1医療機関あたり4.55人。2022年12月の第8波のピーク時に比べると、大きく下回っているが…

加藤勝信厚生労働大臣:
(コロナの発生状況は)緩やかな増加傾向にあると承知しており、様々な点を含めて重層的に評価していきたいと考えております

9日の会見で加藤厚生労働大臣は、夏以降、一定の感染拡大が生じる可能性があるとの認識を示した。

一方で、実は今、コロナ以外の感染症も猛威を振るっている。その1つが“インフルエンザ”。季節外れの流行が続いていて、6月4日までの直近の1週間で、全国302の学校や保育所などが休校や学年閉鎖などの措置を取っている。

40代女性:
(子供の小学校で)インフルエンザがはやって、学級閉鎖がありました

10代男性:
僕の友達の学校が学級閉鎖になってまして、怖いですね

大阪府岸和田市の小児科クリニックを取材すると、インフルエンザ以外の“風邪”の症状の患者が多いこともみえてきた。

あぶみ小児科クリニック 鐙連太郎院長:
間違いないでしょう、これでしたら。しっかり赤いね。ヘルパンギーナでしょう。典型的だと思う。大人もかかるんですよね

「ヘルパンギーナ」とは、発熱や口の中に水泡ができる感染症で、夏風邪の一種だ。こちらのお母さんは子供がヘルパンギーナにかかり、看病を続けていた。

4歳と1歳の子を持つ母親(36):
(子育てや看病で)ほぼ寝られずだったんです。睡眠不足で多分もらいやすくなっていた

あぶみ小児科クリニック 鐙連太郎院長:
この時期なので、例年、夏型感染症のヘルパンギーナ・手足口病・アデノウイルスとかが出る時期にきてて。特にヘルパンギーナがかなり流行しています。先週32人出てて、今週もすでに20人以上出てます。2022年この時期はほぼなかったです

国立感染症研究所の発表によると、コロナの5類移行直前の1週間と比べるとヘルパンギーナの全国の患者数は約5倍。他にもRSウイルスは約2倍に増加している。なぜコロナ以外の感染症が今、増えているのか?

あぶみ小児科クリニック 鐙連太郎院長:
皆さん小さい病気にちょこちょこかかって免疫を維持してたんですが、小さい病気にかかるというのをコロナ対策で完全に防御していたので、そこから急に普通に人と人と会って、病気もらうみたいな感じになっていると思います

増加しているコロナ以外の感染症を解説

新型コロナが5類に移行してから1カ月。新型コロナ以外の“季節外れ”の感染症が増えている。なぜこれらの感染症が増えてしまうのか?どのような対策を取るべきなのか?感染症の専門家、関西医科大学付属病院の宮下修行さんに聞いた。

今、どんな感染症が増加傾向にあるのか整理する。

・例年夏に流行する「ヘルパンギーナ」
・例年冬に流行する「RSウイルス」
・同じく冬に流行する「インフルエンザ」

今増加しているこれらの感染症だが、感染レベル=ウイルスの毒性は、ヘルパンギーナ、RSウイルス、インフルエンザの順に強くなっていくということだ。

関西医科大学付属病院 宮下修行さん:
(それぞれの感染症の特徴)ヘルパンギーナはいわゆる夏風邪。喉を中心としたような風邪です。あまり重篤化はしませんですから、そう心配される必要はありません。
RSウイルスは、大体皆さん2歳までに感染して、繰り返し感染するものです。喉と違い、気管支がやられて、ぜんそくのように「ぜえぜえ」と症状が出て、特に1歳未満の方がかかると重篤化してしまいます。大人は重篤化はあまりしないです。
インフルエンザは毎年冬にはやりまして、インフルエンザがはやると超過死亡(死者数が例年の水準を上回ること) が出るぐらいで、特に高齢者に肺炎を起こしやすいです。インフルエンザに関しては、薬があるという点はありますが、やっぱり注意が必要になります

Q.治療薬は?

関西医科大学付属病院 宮下修行さん:
ヘルパンギーナ、RS ウイルスに関して治療薬はありません。RSウイルスではぜんそくのような症状が出るので、気管支拡張薬といった薬剤が必要になってきます。

危険レベルが高く、流行中のインフルエンザについて詳細解説

危険レベルが高いインフルエンザについて詳しくみていく。

5月下旬から6月上旬のインフルエンザの定点報告数だが、新型コロナ流行前の2018年は900人ほど、2019年は2400人ほどだった。新型コロナが流行した期間は、劇的に感染者が少なくなり、2020年が9人、2021年が9人、2022年は2人。それが2023年は7483人とかなり増えている。

宮下先生は「免疫力低下、夏までダラダラ、冬に大流行も、ワクチンなし」と指摘。

関西医科大学付属病院 宮下修行さん:
今、(インフルエンザの)流行しているのはH3N2といって、昨年からずっと続いてるものです。例年だと次の年は別の型が順番にはやっていたものが、今回は昨年からのH3N2がはやったまま、ここに別の型も入って、大流行してしまうかもしれないという考え方もできます。(インフルエンザの)ワクチンは大体秋、10月・11月に打ちます。供給量は大方決まっていて、もう昨年からのH3N2に対するワクチンはなくなっている状況です

感染症にどういった対策をすればいいのか、宮下先生によると「子供のいる家庭は要注意!飛沫感染対策しかありません」とのことだ。

関西医科大学付属病院 宮下修行さん:
重要なのは誰が重症化するか。重症化することを防がなくてはなりません。RSウイルスは1歳未満が危ない。インフルエンザには脳症という合併症があり、5歳未満が起こしやすいものです。やはり小さいお子さんがいる家庭で対策が必要。それから子どもの間で広がりますので、お兄ちゃんお姉ちゃんが家庭に持ち込んでしまうおそれがある。さらにそこに高齢者が一緒にいると危険なことになります

感染予防のため、マスクや手洗いなどの対策を考える必要がある。

最近はやり出している「はしか」 見分け方と対策

「はしか」がはやってきているが、風邪とはしかの見分け方はあるのか?また、はしかはマスクしていてもうつるものなのか?

関西医科大学付属病院 宮下修行さん:
はしかについて、コロナ禍においてワクチン接種控えが起こってしまいました。また、はしかは輸入感染症の一つで、コロナで観光をストップしていたのが、再開されることによって、海外から運び込まれてきています。はしかの見分け方ですが、発疹が体に出ます。高熱と発疹。風邪というのはのど、鼻、くしゃみ、鼻水、のどの痛みといった症状で、こういったところが違います。はしかは空気感染するので、飛沫感染とは違う対策を取らないといけません。マスクだけではちょっと不十分です。はしかにはワクチンがあります。打っていない方がいるので、要注意です。

(関西テレビ「newsランナー」2023年6月9日放送)

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