長野県中野市で刃物や銃で襲われ男女4人が死亡した。長野県警は、警察官殺害の疑いで逮捕した男が、容疑を認めていることを明らかにした。この事件について、元埼玉県警捜査一課の佐々木成三さんに、犯人が凶行に至った経緯や動機は何なのか聞いた。

“逸脱した凶行”に至った経緯はどこに…

長野県中野市の市議会議長の長男で、農業の青木政憲容疑者(31)は25日、中野警察署の池内卓夫巡査部長(61)に猟銃を発砲し、殺害した疑いが持たれている。

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佐々木さんは、今回の事件をどう受け止めておられますか?

元埼玉県警捜査一課・佐々木成三さん:
立てこもりの中で猟銃が使われて、4人の尊い命が失われた。銃を持った犯人が立てこもった時の(警察の)判断は難しい。そんな中で粘り強く交渉を続けていたのだと推察されます

まずは、青木容疑者の人物像を佐々木さんと一緒にみていきたい。青木容疑者は、長野県中野市議会の議長の長男で、その議長は議員辞職をした。叔母と同居していて、果樹園を経営していたとみられている。近所の人からは「コミュニケーション取るのが難しい人だった」という証言もある。佐々木さんは、この人物像から何か感じ取れる部分はありますか?

元埼玉県警捜査一課・佐々木成三さん:
動機が分からない中で、どうしてこのような逸脱した行為に至ったのか。容疑者の日常生活においてどんな生活をしてコミュニケーションを取ったのかを調べる必要があります。必ず大きな事案には前兆事案があるもの、そういったものがあったのか。そういったものを含めると、ご家族からの聴取、青木容疑者の日常からの裏付けが必要だと思います

マスクとサングラスに全身“迷彩服”という異様な服装

続いて、青木容疑者は、マスクとサングラスを身に着け全身、迷彩服を着ていたということ。目撃証言をまとめた。

▼村上さんの背中を2回、胸を1回刺した。その際に「殺したいから殺してやった」という発言も。
▼さらには警察官に発砲した際に、「笑みを浮かべていた」という証言。

迷彩服にサングラス・マスクという異様な服装、ここから見えてくるものはなにか?

元埼玉県警捜査一課・佐々木成三さん:
供述の中で「殺したいから殺してやった」とありましたが、その内容から、恨みや怨恨ではなく、自分の自己欲求のために行ったという感じもします。あとは異様な服装。最後までやり遂げるという気持ちで、殺傷能力の高いサバイバルナイフと猟銃を持って犯行に至ったと。かなり危険な状態が長く続いていたのではないか…と感じます。もしかしたら警察の包囲がなければ、さらに被害が大きくなっていたかもしれません
(Q,これだけの用意というところに計画性もあったと考えられますか?)
そうですね、この服装ですね。犯罪を最後までやり遂げるという意思だったのではないでしょうか。なにが凶行に至る引き金になったのか。近日中に容疑者の周辺でなにがあったのかが気になります
(Q.警察官に笑みを浮かべて発砲したとの証言がありましたが「精神鑑定は行われますか?」とLINEで質問もきています)
これは間違いなく行われるでしょう。精神鑑定は弁護士側から行う、警察側から行う、両方がありますが、要は容疑者の“責任能力の有無”を判断しないといけませので間違いなく行われるでしょう

計画的というよりかは突発的な犯行?

ここからは「事件の経緯」を見つつ佐々木さんに話を伺った。

25日午後4時26分、「男が女性を刺した」という110番通報があった。この刺されて亡くなったのが、村上幸枝さんだ。竹内靖子さんも同じ時間帯に襲われたとみられている。その後、通報により駆けつけた警察官に発砲。玉井さん、池内さんの2人の警察官が亡くなった。

その後、青木容疑者は自宅に立てこもり午後8時ごろ発砲音が2回。その後、午後8時35分ごろ母親が逃げ出し、26日午前0時10分ごろ容疑者のおばも逃げ出した。その後、午前4時37分に青木容疑者が確保された。

ここまで経緯から、今回の犯行は計画的なものなのか?突発的なものなのか?どうみますか?

元埼玉県警捜査一課・佐々木成三さん:
状況を見る限り、村上さん竹内さんの2人はいきなり襲われた感じがします。少なくとも警察官2人はいきなり猟銃で撃たれていますので、恨みはなく一方的になにか自己欲求のために犯行に至ったのではないかという気がします

確保されるまで12時間…「突入」は難しかったのか?

確保されるまで12時間近くあった中で、警察としての突入は難しかったのか?

元埼玉県警捜査一課・佐々木成三さん:
この容疑者は猟銃を持っていた、弾は何発あるのか…という状況を把握しないといけない。人質もどのような状態なのか、銃口を向けられていないのかどうか…など。そういう状態がわからない中での突入は難しいです。交渉と突入と選択がある中でベストな方法は交渉という判断だったのではないかと。
(Q.どういうカタチで説得・交渉したのでしょうか?)
大原則として人質の身の安全を第一優先、そして周辺住民に危害が及ばないこと。そして容疑者を無傷で捕まえる、自殺をさせてはいけない。突入した際に警察官も負傷しないようにしないといけない。猟銃はかなり殺傷能力が高いので、どこに銃口を向けているか分からない中で、突入に向けてコミュニケーションは取っていた。人質とみられる2人が逃げ出した後も、人質が他にいるかどうか確認しつつ、容疑者も自殺させずに自ら投降させるために、会話のキャッチボールしつつ、刺激せずに説得を続けていたと思われます

なぜ?4丁もの銃を持っていたのか

この事件のもう一つのポイントは、なぜ銃を持っていたのかという点だ。
殺人容疑で逮捕された青木容疑者は、許可を得て4丁の銃を所持していたということ。知人からは「よくクレー射撃に通っていて、銃の扱いには慣れていた」という証言もある。こういった銃の殺傷能力はどれほどなのか?

元埼玉県警捜査一課・佐々木成三さん:
4丁のうち今回どの銃を使ったのかは分かりませんが、かなりどの銃も殺傷能力は高いです。ただ、所持の許可を得るのはかなりハードルが高い。精神状態や前科・前歴をちゃんと確認した上で許可をしている訳で、許可が下りた段階では何かしら問題がある訳ではなかったということです。なので、どこで危険な人物になったのか、どこに犯行の引き金があったのかがかなり気になります

許可を得て銃を所持していたということですが、簡単に許可が下りるものなのか?

関西テレビ 神崎博デスク:
そもそも日本では、銃の保有にはかなり厳しい規制があります。銃を使った事件が起こるたびに規制もさらに厳しくなっています。申請は警察署にするものですが、講習会や検定を受けて、前科・前歴を含めた経歴書の提出も必要です。その他に、医師の診断書、精神疾患の有無、薬物中毒は大丈夫かどうかなど、厳しい審査を経たうえで所持が許可されるもの。しかも今回、4丁保持とのことですが、実は1丁ずつ許可がいる。しかも1丁ごとに毎年、警察署に行って確認もありますし、所持の許可も3年ごとに更新する必要があります

こういった猟銃の規制の在り方も今後、考えていく必要がありそうだ。

京都大学大学院 藤井聡教授:
ぜひその方向で規制を高めないといけない時に、この制度の中で安全に適切に銃を許可受けて使っている人も沢山いる。そのバランスをしっかりと考えないといけません。仮に包丁を使った事件があった時に、すぐに包丁の販売を禁止するかといえばそうではない。非常に難しい問題ではありますが、バランスを取りながら適切な規制を取ることが必要だと思います

容疑者の「精神鑑定」が行われる可能性について

視聴者の皆さまからLINE届いた質問を紹介したい。

Q.不特定の人を狙った事件なのですか?

元埼玉県警捜査一課・佐々木成三さん:
地方で起きたという点では、顔見知りの可能性は高いと思います。ただ、目の前にいた人を狙った可能性が高いと思います。この4人を狙ったのではなく、4人が近くにいるから狙ったという感じもします

今後の捜査のポイントはどんなところにあるのか?

元埼玉県警捜査一課・佐々木成三さん:
4人の殺害事件なのでこれから再逮捕を繰り返す中で、まず精神鑑定は行うでしょう。起訴できる証拠はあると思いますので、やはり動機ですね。そこで事件の真相が明らかになると思います

犯行の動機がどういうものなのか、容疑者の口から何が語られるのか、捜査の行方を見守りたい。

(関西テレビ「newsランナー」5月26日放送)

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