見分けがつかない? “人間そっくり”のモデルたち

バナー広告やインターネットサイトの案内役など、様々なところで見かける「イメージモデル」。

商品のイメージを伝えたり、広告に説得力を持たせるために使われるが、写真・イラスト・動画素材販売を行うストックフォトサイト「imagenavi(イメージナビ)」を運営するイメージナビ株式会社が、ある写真販売サービスを開始した。

まずは実際に販売されている写真を見ていただきたい。

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一見、特に変わったところのない女性モデルたちだが…実はこの3人、AI技術で作られたモデルの顔と実写のボディを合成した架空の存在。

その名も「INAI MODEL(いないモデル)」は、実在しないバーチャルモデル画像の販売や、オリジナルモデルの生成を請け負うサービスなのだ。

INAI MODELの「あいり」さん。「推定年齢27歳、誰からも愛されるお姉さんキャラ」だそう
INAI MODELの「あいり」さん。「推定年齢27歳、誰からも愛されるお姉さんキャラ」だそう

たとえば、こちらのモデルは「あいり」さん。
緩やかに巻いた髪や明るいメイクが華やかな印象で、「親しみやすい笑顔が好感度抜群、バナー広告などのアイキャッチにおすすめ」と紹介されている。

INAI MODELの「らいむ」さん。現役大学生という設定
INAI MODELの「らいむ」さん。現役大学生という設定

私服の「らいむ」さんは推定年齢21歳の現役大学生という設定で、リュックを背負ったアクティブなイメージから、「旅行メディアなどツアーガイドキャラクターとしておすすめ」とのこと。
 
他にも「さいか」「あいじゅ」「かいな」と名付けられた女性モデルがずらりと並んでいる。現在登録されている写真は“5人”で計48点あり、価格は画像サイズによって、1点20,900円~33,000円(税込)となっている。


見れば見るほど、ごく普通にいそうなモデルに見えてくる「INAI MODEL」たち。

SNSでは「本物と見分けがつかない」という驚きの声のほか、「モデルさんのお仕事がなくなってしまいそう…」「ヘアメイク、カメラマン、スタイリストも不要になるのか」との声も挙がっているが…

「いない」モデルたちを使うメリットとは、一体どこにあるのだろうか。そして実際に需要はあるのだろうか? さっそく、イメージナビ株式会社にお話を伺った。

バーチャルモデルで“スキャンダル”のリスクを回避?

――「INAI MODEL」サービス開始のきっかけは?

弊社では写真素材の制作・販売を行っております。とりわけ、人物画像は使用頻度が高いのですが、用途によってはモデル制約もあり、お客様にご不便をおかけするケースもありました。

昨年、京都大学発のAIスタートアップ企業「株式会社データグリッド」様とご縁があったことがきっかけで、同社の持つクリエイティブAIの技術によってAIによるバーチャルモデルのサービス化を共同プロジェクトとして進めてきました。

バーチャルモデルを活用することにより、クリエイターの想像力を刺激し、幅広い表現を実現可能にしました。


――実在のモデルを使うことに比べてのメリットは?

モデル契約を伴う広告物の場合、契約期間や使用用途などの様々な縛りがある場合が多いです。INAI MODELはモデル契約が不要なため、それらを気にせず永続的に使用することができます。また、モデルが嫌がるようなセンシティブな用途(例えば婚活サービス、身体的な悩み等)にもご使用いただけます。

モデルの私生活でのスキャンダルなどのリスクからも解放される点も大きなメリットです。

オリジナル制作では独占的なキャラクター作成も可能ですので、クライアント様だけの存在しないモデルをご用意することも可能です。

プレスリリースより
プレスリリースより

INAI MODELの“モデル”はいる?

――実在しないモデルたちの“モデル”はいるの?

初回リリースされたモデルたちは、札幌市内の一般女性を元となる体の部分のための画像として撮影しました。その画像を元に、データグリッド社のバーチャルモデル生成システムで実在しないモデルの画像として作成しました。


――女性モデルばかりだけれど、男性モデルは今後登場する?

現在のAIによるバーチャルモデル生成システムの学習データが若い女性中心です。現在、男性や年配の方のデータも学習させており、今後男性モデル等についても更新していく予定です。

INAI MODELの「かいな」さん。異なるポーズを撮影する手間がないこともメリット
INAI MODELの「かいな」さん。異なるポーズを撮影する手間がないこともメリット

実際に存在しないからこそ、様々な制約にとらわれることがないという「INAI MODEL」。

契約の手間だけでなく、モデルのスキャンダルによるクレームリスクなどに悩まされることがないというメリットは驚きだが、昨今、スキャンダルでのCM降板などをよく目にするだけにうなずける部分もある。そして、商品や会社のイメージに当てはまるモデルを探すのではなく、反対に伝えたいイメージからモデルを作ってしまうというのは面白い試みだろう。

現在登録している写真は、サービスを知ってもらい、オリジナルモデル作成(税別50,000円〜)の依頼を受けるために制作しているものということもあるのか、ダウンロード数はまだ0件。
しかし企業からはすでに注目されているようで、オリジナルモデル作成の問合せは6月11日現在、30件ほど寄せられているという。

全身オーダーも今後可能に?

ちなみに、オリジナルモデルの作成は体の部分の画像を持ち込んでもらったり、イメージナビが持つストック写真を使用して、そこに架空のフェイスを合成するというもの。

広告等に「INAI MODEL」を使用する場合、様々なポーズが必要になってくるだろうが、提供可能なのは顔部分の“すげ替え”サービスのみとなり、また現在のAI生成技術では顔が正面を向いたもののみ対応可能ということで、ある程度ポーズに制約はかかりそうだ。

ちなみに、実在のモデルを使わないことで様々な契約の手間から解放されることがメリットの「INAI MODEL」だが、合成に使用する体部分には注意が必要。
ストック写真を使用する場合は被写体への許諾取得を代理してくれるというが、持ち込みに関しては「ご用意いただく体部分も当然権利がございますので、被写体、権利者などに許諾を受けて写真をご用意いただく」必要がある。

しかし「全身をCGで作ってほしい…」という要望は寄せられているそうで「全身生成の実用化も検討して参りたいと思います」とのこと。
全身がAI技術によってつくられた、完全フリーなバーチャルモデルの登場は、今後に期待したい。

撮影現場が不要で“密”も回避

また、もう一点注目したいのが、生身の人間をモデルに使わないことで、カメラマンやスタイリストといった撮影にかかわる人たちが集う必要がなくなるということだろう。

SNSでも撮影スタッフを心配する声も挙がっていたが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、人との接触を避ける様々な工夫がされている現在、イメージナビは「新しい選択肢のひとつになれれば」と話している。


――今後、どのような場面で活躍する?

撮影現場に足を運ばなくても人物画像が入手できるということが、新しい選択肢の一つになれば、と思っています。

メリットでもお伝えしたセンシティブな利用のほか、企業のコンシェルジュ的な役割として、実際の社員の方を使う場合、退職後に差し替えなければならないなどの問題もありますので、そのようなご利用がおすすめです。
 

CGならではの表現方法やメリットがある一方で、生身の人間にしかできない表現や魅力があるのも事実。バーチャルモデルの利用という新しい試みが、今後ひとつの選択肢となっていくのだろうか。
 

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プライムオンライン編集部
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