“コロナ太り”が深刻化

緊急事態宣言の解除からしばらくたつが、外出自粛を続けた皆さんの体型にはどのような変化があっただろう。鏡を見るとなんとなく、お腹周りがふくよかになってはいないだろうか。

健康課題の解決などに取り組む企業「リンクアンドコミュニケーション」は、自社開発のAI健康アドバイスアプリ「カロママ プラス」(旧名称:カラダかわるNavi)の利用者を対象に、2020年1月~5月の間で「歩数・体重・体脂肪率」にどのような変化があったのかを調査した。

そうしたところ、新型コロナウイルスの影響で“コロナ太り”する人が増えていることが分かったというのだ。まずは、調査結果を見ていきたい。

新型コロナの表面化に連れて、歩数が減っているのが分かる
新型コロナの表面化に連れて、歩数が減っているのが分かる
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歩数については、ここ数カ月を新型コロナウイルスの影響前(1月12日~26日)、自粛要請下(2月23日~4月4日)、緊急事態宣言下(4月5日~5月16日)と分けて、1万3250人のデータから、1日あたりの歩数がどう変化しているのかを分析した。

その結果、新型コロナウイルスの影響前と比べて、自粛要請下や緊急事態宣言下では歩かない人が増えていた。1日当たり3000歩未満の人は、新型コロナウイルスの影響前は13.85%にとどまっていたが、自粛要請下では15.43%、そして緊急事態宣言下では27.60%にまでのぼった。

最大で約9.8キロ太った人も

体重と体脂肪率については、提供された4595人のデータを分析。こちらは2月1週(2日~8日)の数字を基準として、5月2週(10日~16日)まで、週ごとの変化を調べた。

そうしたところ、2月1週から5月2週の間に、なんと全体の約57%で体重の増加が見られた。増えた重量は多くが「0キロ以上~2キロ未満」だったが、中には約9.8キロ太った人もいたという。

1日当たりの歩数と体重の変化
1日当たりの歩数と体重の変化

また、体脂肪率の変化を見ても、全体の約60%がこの期間で増えていた。こちらも多くは「0%以上~2%未満」の増加だったが、中には約8.9%も体脂肪が増えた人がいたという。

体脂肪率の変化。※グラフの色は体重の変化とそれぞれ同じ
体脂肪率の変化。※グラフの色は体重の変化とそれぞれ同じ

このほか、1日当たりの歩数が3000歩未満の人は、体重が平均で約0.3キロ、体脂肪率が平均で約0.1%増加したのに対し、1日当たりの歩数9000歩以上の人は、体重が平均で約0.2キロ、体脂肪率が平均で約0.2%減少したことも分かっている。

これらの調査結果からは、ここ数カ月の状況が運動不足を招いていること、歩数と体重・体脂肪率の変化に関連性がありそうなことが分かる。

それでは、コロナ太りしないためには、どうすればいいのだろうか。今回の調査・分析に携わった、リンクアンドコミュニケーションの管理栄養士・佐々木由樹さんに見解を聞いた。

外出自粛で日々の活動量が減少

――なぜ、コロナ太りする人が増えている?

外出自粛で日々の活動量が減ったことが影響したと考えられます。歩数も減りましたし、スポーツジムなどの運動施設を利用しにくくもなりました。当社の調査では、2月から3月にかけて有酸素運動が減り、筋力トレーニングや軽い運動が増えたというデータもあります。有酸素運動の方がカロリーを消費しやすいので、太る要因として考えられます。

私見としては、他人に会わないことも影響していると思います。人から見られている意識が減ったり、体型を気にしなくなったのではないでしょうか。在宅勤務などで自宅にいることから、「3食しっかり食べるようになった」という話も聞きます。
 

2020年2~3月の運動内容。2019年の同時期と比べると変化が見られる
2020年2~3月の運動内容。2019年の同時期と比べると変化が見られる

――外出しにくい状況で太る、健康リスクは?

太ること自体に糖尿病や心臓病などのリスクがありますが、外出自粛のような状況だと活動量も減るので、将来、筋力が衰えたり、寝たきりになってしまう、いわゆる「ロコモティブシンドローム」となる可能性が高まると考えられます。

また、他人との接点が減るので、認知症のリスクが増える可能性もあるでしょう。ただ、人付き合いが減ることについては、孤独感を感じてうつ傾向になる人もいれば、逆にメンタルが改善される人もいます。メンタルの部分は人それぞれだと思います。


――コロナ太りを解消するにはどうすればいい?

他人に会わない生活を続けると、元の生活に戻るときに、1~2週間の短期間で痩せようとする人が増えると想定されます。こうしたダイエットは筋肉が落ちてリバウンドもしやすくなるため、お勧めしません。健康的に痩せるには、2~3カ月の期間で月1~2キロの減量を目指すなど、十分な期間を設けることが大切だと思います。


――運動不足の解消と感染予防はどう両立する?

痩せるには日々の活動量を増やすことが大切です。自宅でも運動はできるので、動画を参考にできる運動を取り入れてはいかがでしょうか。「ダンスエクササイズ」や「30分エクササイズ」などで検索すると、いろいろな動画が出てきますよ。

人の少ない場所や時間帯であれば、外に出てジョギングやウォーキングするのも悪いことではありません。感染に気を付けながら、積極的に外でも運動してもらいたいです。
 

自宅での運動習慣を取り入れよう
自宅での運動習慣を取り入れよう

テレワークで太らないためには?

――テレワークで太らないためのポイントはある?

テレワークになると、当然ですが通勤時間は減るはずなので、その時間を運動に充ててはいかがでしょうか。椅子に座りっぱなしだと運動不足にもなるので、1時間ごとに2~3分、ストレッチをしたり、軽く体を動かす時間を作るようにしましょう。


――食事面でのアドバイスはある?

テレワークだと毎食、自宅で食べることが多いと思います。最初は自炊していても、次第に「作るのが面倒だな」と思うようになる方も多いのではないでしょうか。そうなると、準備に時間がかかる野菜の摂取量が減ることも考えられます。

野菜不足とならないためにも、サラダやマリネを作り置きしておくといいかもしれませんね。ダイエットにも効果的だと思います。
 

時間的余裕があるからこそ、野菜も食べよう
時間的余裕があるからこそ、野菜も食べよう

仕事がないと運動にも気持ちが向かない

――企業(事業主)が働く人の健康を守るために、できることはある?

活動量が増えやすい環境を整えることと、メンタルのケアはぜひしていただきたいと思います。

当社は緊急事態宣言後の時間の使い方も調査しているのですが、そちらでは、緊急事態宣言後に仕事をしていない人(休職を含む)は活動時間があるにも関わらず、さらに歩かなくなったという結果も出ています。仕事にはやりがいなど、気持ちを安定させる効果もあるので、できる仕事がなければ運動にも気持ちが向かないのではないでしょうか。

ただ、緊急事態宣言後に労働時間が増えると、メンタルに不安を抱えやすいというデータもあるので、労働時間が増えた人、逆にできる仕事がない人、両方のメンタルケアが求められていると思います。


――コロナ太りを感じる人にアドバイスを。

急激に痩せようとしないことですね。急激なダイエットで筋肉が落ちると、リバウンドしやすくなりますし、そこに脂肪が付くと痩せにくい身体になってしまいます。

太らないためには、自身の健康状態を確認することも大切なので、アプリなども活用して自身の健康管理に役立ててください。当社では「カロママ プラス」とは別に、無料で利用できる「カロママ」もリリースしているので、お役に立てると思います。  


コロナ禍では外出自粛や在宅勤務の推奨など、さまざまな変化が起きているが、それが太りやすい環境を整えてしまったとも感じられる。新型コロナウイルスの影響はまだまだ続くことだろう。感染を恐れるあまり、運動不足や食生活の偏りなどで体調を崩すことのないように気を付けたい。

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プライムオンライン編集部
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