全国で相次ぐ高級食材・ナマコの密漁。悪質な密漁を防ぎ、漁業者の貴重な収入源を守ろうと法改正が進む一方で、宮城県内の対策は震災後、沿岸部で進んだ復旧工事の影響で難しさが増している。
狙われる海の黒いダイヤ
宮城県漁協石巻市東部支所漁業研究会 末永智樹さん:
きょうはサイズは、結構大きいので悪くないナマコです。小さいものだと、指のサイズと同じくらいのナマコも多かったりします。

宮城県石巻市の漁師、末永智樹さん。ナマコ漁を始めて4年になる。
宮城県漁協石巻市東部支所漁業研究会 末永智樹さん:
好きなナマコは「赤ナマコ」です。見た目が本当に鮮やかな赤なので。
“海の黒いダイヤ”と呼ばれ、高値で取引されるナマコ。末永さんが所属する宮城県漁協石巻市東部支所では、貴重な収入源を守ろうと、一人が一日に捕れるナマコを、20キロほどに制限するなど、資源の安定確保につとめている。

この「ナマコ」を巡って、近年問題視されているのが「密漁」だ。2022年12月に、宮城県石巻市内で密漁されたその数は、なんと2000個以上、額にすると約100万円にのぼる。

宮城県漁協石巻市東部支所漁業研究会 末永智樹さん:
資源管理は意識して取り組んでいるので、密漁があると憤りを感じますね。

改正漁業法が施行
宮城県内でも後を絶たない密漁。水産庁によると、全国の密漁の検挙件数は増加傾向にあり、10年ほど前から年間1000件を超え続けている。その影響を受け、ナマコの漁獲量は激減。15年ほど前と比べると、6割程度にまで落ち込んでいる。

こうした現状を受け、2020年12月からナマコなどを特定水産動植物とする「改正漁業法」が施行され、許可なしにとった場合、3年以下の懲役か3000万円以下の罰金が課されることになった。悪質な密漁を防ぐための法改正だが、磯遊びをする中でたまたま捕まえ、持ち帰ったものも対象となる。素潜りで捕まえて食べたりする、某テレビ番組のような行為は、特別な許可を得たうえで行っている。知らずにマネをしたりすると、「密漁」として逮捕される可能性がある。

また、2022年12月には、水産流通適正化法も施行され、漁獲物ごとに漁獲番号をつけ、取引記録が追跡できるようになった。国をあげての密漁対策が取られていると言える。
一方で、県漁協の寺沢春彦組合長は、震災後に沿岸部につくられた防潮堤の存在が、対策を難しいものにしていると指摘する。
県漁協 寺沢春彦 組合長:
震災によって長く高い防潮堤ができていて、陸上からの監視活動が難しくなっている実感がある。監視カメラや赤外線カメラを導入してはいるが、全てをカバーできるわけではない。

さらに、寺沢組合長は、「密漁をする側」だけでなく、「購入する側」についても、対策を取るべきだと主張する。
宮城県漁協 寺沢春彦 組合長:
密漁があって育てたものがとられるというのは、漁業者にとっては死活問題。結局は買う人がいるから、なかなか減っていかないのかなという思いもあるので、海上保安庁や県警には、流通の買う側までしっかりと対応してほしいと思っています。
モラルが問われるのは悪質な密漁者だけでない。限りある海の資源と漁業者の生業を守るため、「知らなかった」「少しぐらいなら」では済まされないのだ。
(仙台放送)