いま、数ある栄養素の中でもたんぱく質が注目を集めている。

厚生労働省の国民健康・栄養調査によると、日本人のたんぱく質摂取量が2000年ごろから減少傾向にある。それが日本人の低栄養を招く要因になるという。

そんな社会課題解決のために立ち上げられたコンソーシアム「めざせ1日80g!  たんぱく摂ろう会」(株式会社 明治、伊藤ハム米久ホールディングス株式会社、マルハニチロ株式会社の連携により設立)は現在、食育に関する啓発イベントを通して、たんぱく質摂取の大切さやその価値について認知を広げている。

今回は、同会が長野県・佐久市と共催したイベント「サクッとたんぱく摂ろうDay」にフリーアナウンサーの境鶴丸さんが密着した。

健康上の“黄色信号”にあたる「フレイル」とは

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境が訪れたのは「イオンモール佐久平」(長野・佐久市)内に設置されたイベントスペース。

子どもからお年寄りまで幅広い年齢層が「サクッとたんぱく摂ろうDay」に集まった。

イベントが始まると、まずは「めざせ1日80g! たんぱく摂ろう会」(以下、「たんぱく摂ろう会」と表記)代表幹事社である株式会社 明治の守屋孝さんから挨拶があった。

めざせ1日80g! たんぱく摂ろう会の守屋孝さん
めざせ1日80g! たんぱく摂ろう会の守屋孝さん

「たんぱく摂ろう会は、『たんぱく質から、人生100年時代のウェルビーイングを実現する。』という目標を掲げ、生活者のみなさまが健康に暮らせる社会の実現に向けて、たんぱく質の重要性をしっかり発信していこうと思っています」

続く、佐久市・花里英一副市長の挨拶ののち、長野県住みます芸人・こてつの2人(北村智さんと河合武俊さん)と株式会社 明治の管理栄養士・片岡永恭さんが登場。食育講座が始まった。

株式会社 明治の管理栄養士片岡永恭さん(左)とこてつの2人(中央・右)
株式会社 明治の管理栄養士片岡永恭さん(左)とこてつの2人(中央・右)

片岡さんは、「フレイル」という概念の説明から始める。フレイルとは、健康状態と要介護状態の中間のことをいう。

この状態に入った人は、本人の努力や周囲の人の適切な介入により、健康状態に戻ることもできるそうだ。

そこで肝心なのが、自分がフレイルに入っていることに早く気づくことであり、ポイントは5つあるという。

(1)体重減少…意図せずして半年間で体重が2キロ以上減少してしまう
(2)筋力低下…ペットボトルのフタが開けづらくなる等
(3)疲労感…ワケもなく2週間疲れっぱなしになる等
(4)歩行速度…10分かけて歩いていたところが10分以上かかるようになった等
(5)身体活動…軽い運動や体操、定期的なスポーツをどちらも週に1回もしていない等

このうち3つ以上あてはまる人は、フレイルだとされる。このフレイルを防ぐことは健康にとって重要課題で、特に、筋肉をつけることが肝になると片岡さんは語った。

たんぱく質は一日あたりどれくらい摂ればいいの?

「そこで重要になってくるのが、たんぱく質の摂取と運動です。たんぱく質の主な働きは『体づくり』です。そして、たんぱく質は『エネルギー源』にも、『体の調子を整える』ことにも深く関わっています」(片岡さん)

ところが、2000年頃から日本人のたんぱく質の摂取量は減少していて、70年前ほどの水準=第二次世界大戦後の食糧難が少し落ち着いた頃の水準に落ちているのだという。それが健康問題につながっていると片岡さんは言う。

では、たんぱく質はどれくらい摂れば良いのだろうか。

「一般的には、運動をしていない人であれば体重1キロあたり1グラムほど摂取すれば良いと言われています。しかし、運動をしつつ摂取するとなれば、体重1キロあたり1.3グラム以上を摂るのが理想です。それを男女で平均すると、一日あたり大体80グラムになります」(片岡さん)

たんぱく質をうまく摂りつつ、運動と組み合わせて健康に!

現代の食生活では、たんぱく質不足になりがちだという。では、どう摂取していけばいいのか?

こてつの2人が、「肉?肉ですよね」と、たんぱく質が入っていそうな食品を挙げるが、ここで片岡さんは、たんぱく質を豊富に含んだバランスの良い食事を提示。

こてつ・北村さんが「肉だけじゃないよ。ヨーグルト、牛乳、チーズも?それから卵。これ全部たんぱく質?」とさまざまな食事に含まれていることに気づく。

すると「特にお肉、魚は一回につき、片手のひらにちょんと乗るくらい食べていただくといい」と片岡さんがアドバイス。

こてつ・河合さんは「それくらいなら摂れそうな気がします」と前向きに捉えるも「ただ毎食となるとどうですかね」と継続できるかどうか、不安そうにした。

意外とこれらの食品を常に食べてはいないかもしれない。そこで片岡さんは、「食事」と、そして「運動」を勧めてくれた。

「まずは運動をしてください。筋肉をつけることが大事なのですが、筋肉は『運動』と『たんぱく質』どちらかが欠けてもつけることができません。運動といっても、少し息がはずむものから、生活の中で、早足で歩いてみるとか、意識的に階段を使うといったことでも構いません。いま、何も運動をしていない人なら、まずはプラス10分、運動をしてみるといいでしょう。たんぱく質の摂取ですが、こちらは朝食にプラス10グラム摂ることを意識してください。日本人は、昼食と夕食ではたんぱく質を摂っているんです。一方で、朝食は少ない傾向にある。朝にプラス10グラムのせるようにすると、たんぱく質摂取量の底上げができます」(片岡さん)

運動プラス10分、たんぱく質プラス10グラムを「合言葉は『ちょい足し』ですね!」とこてつさんの2人が言った。

健康医療ジャーナリスト西沢邦浩さん(左)と長野県栄養士会副会長花岡佐喜子さん(右)
健康医療ジャーナリスト西沢邦浩さん(左)と長野県栄養士会副会長花岡佐喜子さん(右)

イベントでは、クイズ形式のトークショーも催され、そこで登壇した長野県栄養士会副会長・花岡佐喜子さんと、健康医療ジャーナリスト・西沢邦浩さんも、さまざまな健康へのポイントを述べた。

「朝食時にたんぱく質を多く摂る人たちと、夕食時にたんぱく質を多く摂る人たちが、それぞれ同じ運動を日中にして、3カ月間でどれくらい違いが出るかを試した研究があります。どちらの方が、筋肉がたくさんつくか。実は、朝食派です。同じようにたんぱく質をたくさん摂るなら、朝の方がいいんです」(西沢さん)

「たんぱく質には、植物性のもの(納豆などに含まれる)と、牛乳や卵などに含まれる動物性のものがあります。ぜひいろいろなたんぱく質をとっていただきたいです。また、先ほどプラス10グラムという話がありましたが、10グラムは意外と量が多いので、たとえば納豆に卵をかけるとか、納豆を食べて牛乳も飲むといった形で、たんぱく源を組み合わせるといいです」(花岡さん)

「めざせ1日80g!」をキーワードに啓発活動を広げる

こてつの2人とシールラリーで触れ合う子どもたち
こてつの2人とシールラリーで触れ合う子どもたち

トークショーの後に開催されたシールラリーはスーパー内のたんぱく質を含む食品の売り場にシールを設置。

シールを4枚集めると、たんぱく質を効果的に摂れる商品が当たるという企画。こてつさんたちと一緒に回ることができ、子どもたちの顔には笑みが浮かんでいた。

イベントに参加したご家族
イベントに参加したご家族

参加した保護者からは、「たんぱく質のことをあまり知らなかったので、今日はとても勉強になりました。最近、子育てが大変で、自分の健康についてそれほど考えられていなかったのですが、毎日運動・散歩はしています」との話すとともに、たんぱく質への関心が高まったとの声があった。

日本栄養士会の「走る栄養相談室」
日本栄養士会の「走る栄養相談室」

また、会場では同時に、管理栄養士や栄養士による「地域の皆さまの食事をサポート!無料栄養相談会」や、日本栄養士会による「災害に備える!“走る栄養相談室”出動」の展示会も開かれた。

最後に、「たんぱく摂ろう会」の代表幹事社である株式会社 明治の守屋さんに今後の展望を聞いた。

「今回のようなイベントや、食育授業などを実施しながら、私たちが持っているたんぱく質に関する知見や、有識者にインタビューした内容などを情報発信していきたいと考えています。今後は、啓発的な活動も続けながら、本日話題になった『フレイル』をキーワードに、たんぱく質の価値を中高年の方々にも伝えていける場を増やしていきたいです。フレイルは、健康状態に『まだ戻れる』状態です。だからこそ、たんぱく質を起点に、食生活や運動を見直すことで、皆さんに、より長く健康に過ごしていただければと思っています」

めざせ1日80g! たんぱく摂ろう会 ホームページ
https://tanpakutoroukai.jp/