宗教団体「エホバの証人」が子どもに輸血を受けさせないのは虐待に当たる疑いがあるとして、2月27日、弁護士らが厚生労働省に通報した。
親の信仰によって被害を受けたとして、元信者の女性が体験を語った。

「エホバの証人」の輸血拒否は虐待 厚労省に通報

午後1時過ぎ、東京・千代田区の霞が関。

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「エホバの証人」問題支援弁護団 田中広太郎弁護士:
現役の信者の方たちから、特に輸血の拒否に関して、児童虐待に該当する行為が行われているのではないかと、複数の方からの声があったので

宗教団体「エホバの証人」が、子供に輸血を受けさせないよう信者に指導しているのは虐待にあたるとして、弁護団が厚生労働省に通報した。

エホバの証人は、アメリカに本部を置くキリスト教系の宗教団体。教団によると、日本にいる信者は約21万人(エホバの証人HPより)。聖書に従い、“輸血を受け入れるべきではない”としている。

「輸血拒否」署名やカードの携帯を親が強要

元3世信者の女性はこう話す。

輸血拒否カードを首にかけていたという
輸血拒否カードを首にかけていたという

「エホバの証人」元3世信者 夏野ななさん(30代・仮名):
私自身が、輸血拒否カードの署名や携帯を強要されていた経験があった。学校に行くときに毎日親からチェックが入るので、出る前に(輸血拒否カードを)首にかけたかっていう

親子三代にわたり、エホバの証人の信者として育った夏野ななさん(30代・仮名)。

「エホバの証人」元3世信者 夏野ななさん(30代・仮名):
「生き死に」を勝手に教団から強制されるということに、憤りを感じていた

教団の内部資料には、「親は『血を避ける』ことを固く決意し、子供のために輸血を拒否しなければなりません。」と記されている。

親が子に持たせるという身元証明書には、信仰上の理由で「無輸血の治療を希望する」と書かれていた。

過去には死亡事故も…厚労省ガイドライン策定

「エホバの証人」元2世信者 団作さん(仮名):
「エホバの証人」の考え方では、輸血を拒否して仮に死んだとしても、“楽園で復活する”という教義になっている

1985年、「エホバの証人」の名が知られるきっかけとなる事故が起きた。

川崎市で男子小学生がダンプカーにはねられ、病院に搬送されたが、信者だった親が輸血を拒否。男の子は死亡した。

安倍元総理銃撃事件をきっかけにクローズアップされることになった、いわゆる“宗教2世”をめぐる問題。

“親による信仰の強制”などによる宗教2世の児童虐待を防ぐため、2022年12月、厚労省がガイドラインを策定。

そこには「医師が必要と判断する医療行為(手術・投薬・輸血等)を受けさせないこと(輸血を拒否する旨の意思表示カード等を携帯することを強制することを含む。)はネグレクトに該当する。」と明記されている。

輸血拒否だけでなく“むち打ち”問題も

こうした子どもへの輸血拒否とともに、弁護団が問題視するのが、子どもに対する“むち打ち”の虐待。

元2世信者の小松さんはこう訴える。

「エホバの証人」元2世信者 小松猛さん(40):
ビニール製のベルトを二重三重に折り曲げて、それを手製のむちとしてたたく。本当に日常茶飯事で

教団のHPでは、聖書の言葉として「むちを控える人は子供を憎んでいる。子どもを愛する人は懲らしめを怠らない」との一文が紹介されている。

「エホバの証人」元3世信者 夏野ななさん(30代・仮名):
手でたたかれるというのと、家では父親の革ベルトでたたかれる。ベルトの場合は、みみずばれになって血が出るくらいたたかれます。何日もしみるし、痛いしという状況が続きます

弁護団には、宗教を背景とした理由から“むちでたたかれた”とする虐待相談が77件寄せられたという。

「どうして自分の家は…」元2・3世信者の思い

「エホバの証人」元2世信者 小松猛さん(40):
どうして自分の家はエホバなんだと。隣の家に生まれたかったなというのが正直な気持ち

「エホバの証人」元3世信者 夏野ななさん(30代・仮名):
数え切れない人の人生を壊した責任を、必ず取っていただきたいと思っています

厚労省のガイドラインでは、「理由の如何にかかわらず、児童を叩く、鞭で打つなど暴行を加えることは身体的虐待に該当する」と定められている。

「エホバの証人」問題支援弁護団 田中広太郎弁護士:
エホバの証人の中の児童虐待について、厚労省が相当理解くださっていて、実態を把握していこうという気持ちは強く感じました

“輸血拒否”や“むち打ち”について、エホバの証人側はこれまでに「モラルに従って生活するよう教える責任を真剣に受け止めている」などとする声明を出している。

(「イット!」2月27日放送分より)