古くから受け継がれてきた博多の伝統技術に今、外国人観光客から熱い視線が向けられている。水際対策が緩和され、福岡の街に押し寄せている外国人観光客。インバウンド需要が回復傾向にある中、メイドインジャパンの意外な商品が人気となっている。

老舗の刃物専門店に…大勢の外国人観光客の姿

福岡市中央区天神の商店街「新天町」では、外国人観光客の姿が多くなっている。

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中でも大勢の外国人観光客と思われる買い物客が目に付く刃物専門店があった。そこで見ていたのは、日本の包丁だ。

アメリカ人買い物客:
こっちはラインが真っすぐだけど、こっちはカーブしているから切れそうだね

福岡市の新天町商店街で90年近く続く、老舗の刃物専門店「豊勝」。プロ仕様から家庭用まで1,000点以上の包丁を取りそろえている。

刃物の店 豊勝 店主・泰松敏夫さん:
年末から今年頭に入ってから、外国人客がちょっと増えてきた気がしますね

最近は海外からの客が徐々に増え、1割ほどが外国人だという。

アメリカ人買い物客:
これはとても美しい。持った時のバランス。柄の重さがいい感じ。あとカーブがいいから、切った時の感触がすごくいいことがわかる

買い物に来たアメリカ人観光客は、家庭で料理する際に使用したいと、1本1万円以上する包丁を3本購入していった。

刃物の店 豊勝 店主・泰松敏夫さん:
やっぱりよく切れるよって、切れ味よく切れるよということで買いに来られているようですね。今後、お客さんが増えてくると売り上げもあがっていくのではと予想しています

優れたデザインや鋭い切れ味などが、外国人から高い評価を受ける日本の包丁。実はここ福岡にも、古くから受け継がれてきた伝統の包丁がある。
福岡市の天神にあるデパート。期間限定で販売されていたのは、福岡で受け継がれてきた伝統の「博多包丁」だった。

訪れる買い物客は日本人だけでなく、外国人の姿も見られた。

「刀みたい」切れ味鋭い日本の包丁が人気に

品定めしていたオランダ人の女性は、魚をさばく包丁を探しているといい、博多包丁の独特な形が刀みたいだと気に入ったようだった。

オランダ人 マライカ・ジョンセンさん:
刀みたいですね。すごいですね! 強くて鋭く見えます。形もかっこいいです! 日本の包丁は有名です。多くの人が知っています

コロナ禍で世界的に「おうち時間」が増えるとともに、家庭で料理する人も増加。特に切れ味が鋭い日本の包丁は、外国人に人気だという。中でも、博多包丁は1本で野菜、魚、肉までさばくことができる万能さが魅力で、売り場に訪れる客の約1割は外国人だ。

「ちくぜん」4代目 牛原滉貴さん:
思っていた以上に反響があってうれしいです。日本の方もそうなんですけど、旅行に来られた海外の方からもかっこいいと言っていただけるのでうれしいです

川崎健太キャスター:
古賀市にやって来ました。博多包丁を作っている工房です。すごく歴史を感じるんですが今、まさに博多包丁を研いでいます

100年にも及ぶ歴史を持つ、福岡・古賀市の博多包丁の工房「ちくぜん」。

「ちくぜん」3代目 牛原健一さん:
だいたい博多包丁自体が、江戸時代中期くらいから庶民の皆さんに使われていました。日本の万能包丁や三徳包丁の起源となったのが、博多包丁だと言われています

「日本の刃物」輸出額341億円 20年間で1.5倍に

1本で何でも切れる万能包丁として、300年ほど前から使われていた博多包丁。その技術の根源は日本伝統の「刃」だ。

「ちくぜん」3代目 牛原健一さん:
背が反ることによって先端に重みがいきますので、軽い力で切れるようになっています

川崎健太キャスター:
デザインではなく、力を伝えやすい?

「ちくぜん」3代目 牛原健一さん:
そうです。日本刀の反りと同じです

日本刀は、引いて切ることに特化した日本特有の刃物で、反りがあることで振り下ろした時にあまり力を使うことなく、効率的に切ることができる。

日本刀の持つ極限の切れ味を受け継いだ博多包丁。紙を使ってどれくらい切れるのか試すと、切れ味抜群だった。

川崎健太キャスター:
あー、どうですか、これ、本当に力を入れてないんですけど、サクサク行くんですよ

さらに、一般にはカットしにくい、トマトを切ってみる。

川崎健太キャスター:
食べ物を切ると、本当に違いが分かるかも! トマト自体に触れている感触もあまりないんですよ

「ちくぜん」3代目 牛原健一さん:
繊維を崩さないので、野菜本来の味がする

川崎健太キャスター:
切れ味がよいものを使うと、味がよくなる?

「ちくぜん」3代目 牛原健一さん:
それは間違いないです

野菜と同じく、肉や魚を切っても繊維を崩さないため、食材の本来の味を引き出せるのが博多包丁の魅力だ。

「ちくぜん」3代目 牛原健一さん:
日本のモノ作りが世界で認められている証拠なので、とてもいいことだと思います

包丁など「日本の刃物」の輸出額の推移を見ると、2000年以降、150~200億円程度で推移していたが、2013年ごろから増え始め、2022年は約341億円を記録。20年間で1.5倍ほど伸びている。急増した理由は、2013年に「和食」が世界文化遺産に登録されたことがあげられると関係者は話す。
海外から高い評価を受ける日本の伝統技術。アフターコロナでこうした動きが加速するかもしれない。

(テレビ西日本)

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