いよいよJリーグの再開が決まった。
Jリーグは先月29日、J1を7月4日に、それに先行してJ2、J3を6月27日に再開すると発表した。Jリーグは2月に開幕したものの、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、再開スケジュールは白紙状態となっていた。

再開にあたっては選手や関係者にPCR検査を実施し、当面は無観客試合となるなど、感染リスクを睨みながらの再発進となる。ファンやサポーターにとっては待ちに待った再開だが、ここに至るまでは草の根的にリーグを支えようという動きがあった。

試合が無くてもつながりを切らせてはいけない

J3は3月8日が開幕だったが、コロナの感染拡大を受け2月終わりに開幕節は延期となった。愛媛県今治市にホームタウンを構えるFC今治。今年度初めてJ3リーグへの参入を勝ち取っていただけに、その動揺は大きかった。経営企画室長の中島啓太氏は、当時の様子をこう語る。

FC今治の中島啓太氏「試合は無くなったがファンとのつながりを切らせてはいけない」
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「試合というコンテンツが無くなりましたが、ファンやパートナー企業などステイクホルダーとのつながりを切らせてはいけないと思いました。クラブの中でも、チームは選手のケア、マネジメントはクラブ経営や資金繰り、私の立場はファンのケアが中心でしたが、それぞれの立場で、自分たちのやらなければいけないことに集中しました」

地元ファンは「いまは安全第一だからね」

中島氏は、公開予定だったクラブの公式noteを前倒しして開設するなど、ファンとの絆が切れないように務めた。
「選手27人のインタビューを毎日掲載しましたが、当初は再開までこんなに長くなると思いませんでした。また、内容も社会情勢に合わせて、コンテンツをかえたり前倒ししたりしました」

ただ、地元のファンは、暖かい声をかけてくれたという。
「いまは安全第一だからねと温かく見守って頂きました。今治は穏やかな地域柄ですし、小さな街で娯楽もそんなに無かったので、週末の楽しみにしているという方も多いです」

(画像はイメージ)

どうやったら安全に試合を取り戻せるか

コロナ以前の中島氏は、リーグや他のクラブと連携する機会は限られていた。しかし試合の無い日々が続く中、リーグや日本のサッカーの将来に危機感を持つ関係者と話す機会が増えたという。

「リーグとクラブの意識が、希望を届ける状態にどう戻せるかに集中して、1つになった感覚がありました。プライベートな知人とも、どうやったら盛り上げられるか、どうやったら安全に試合を取り戻せるのか考えました」(中島氏)

こうした中、有志が集まり生まれたのがプロジェクト「ONE FIELD(以下ワンフィールド)」だ。

試合が無い中クラブの情報をまとめて発信

「Jリーグが再開されないと、サッカーとの距離が広がっていく気がする」というサポーターの声に応え、ワンフィールドではnoteを通じてJリーグの公式サイトやSNSの情報をまとめて発信した。

情報は主にクラブの社会貢献活動やグッズ販売情報、SNSやデジタルツールを活用したサポーターとの交流などだ。プロジェクトには中島氏やJリーグ理事の藤沢久美氏の呼びかけに応じた、十数人が集まった。

試合が無い日が続くと慣れてしまう

そのうちの1人、東京大学の元女子サッカー部、横堀ミラノさんはいう。
「試合という圧倒的なコンテンツが無くなって、クラブだけでなく、サポーターも、いままでは応援に行っていれば良かったのが、何をしたらいいのだろうかと見直せるタイミングになるんじゃないかなとポジティブに捉えました」

横堀ミラノさん「サポーターも見直せるタイミングになるんじゃないかな」

普段はデジタルエージェンシーに勤務し、今回はプロボノで参加した西原雄一さんはこう語る。
「コロナ禍の中、いろいろな競技の人と話をして、何かやりたいけどと言う相談はありました。サッカーが好きだからというのもあるけど、中島さんの依頼なら、と。試合が無い日が続くと無い状態に慣れてしまう人が多いと考え、競技場に試合を観に来られる日まではこれは必要だと思いました」

人が集まり日本のサッカーを対話する場に

ワンフィールドは立ち上げの初回記事が1万PVをこえ、これまで延べ2万7000ビューされている(6月1日現在)。Jリーグの再開が見えてきて、ワンフィールドはいったん役割を終えるのか?

「活動紹介としての役割は終わりますが、このプラットフォームはサポーターの意見やコメントが集まる場になるのではないでしょうか」(中島氏)

これまでJリーグでは、サポーターの声が直接届くことは無かったと中島氏はいう。

「これまではJリーグが上にあって、クラブがあってサポーターで、サポーターの声がリーグに直接届くことはありませんでした。こうした垣根を取り払って、人が集まり日本のサッカーをどうしたらいいのかと対話する場を作るのが、これからのワンフィールドの活動になると思います」

(表紙イラスト:中尾仁士)

【執筆:フジテレビ 解説委員 鈴木款】

記事 429 鈴木款

政治経済を中心に教育問題などを担当。「現場第一」を信条に、取材に赴き、地上波で伝えきれない解説報道を目指します。著書「日本のパラリンピックを創った男 中村裕」「小泉進次郎 日本の未来をつくる言葉」、「日経電子版の読みかた」、編著「2020教育改革のキモ」。趣味はマラソン、ウインドサーフィン。2017年サハラ砂漠マラソン(全長250キロ)走破。2020年早稲田大学院スポーツ科学研究科卒業。
フジテレビ報道局解説委員。1961年北海道生まれ、早稲田大学卒業後、農林中央金庫に入庫しニューヨーク支店などを経て1992年フジテレビ入社。営業局、政治部、ニューヨーク支局長、経済部長を経て現職。iU情報経営イノベーション専門職大学客員教授。映画倫理機構(映倫)年少者映画審議会委員。はこだて観光大使。映画配給会社アドバイザー。