突然だが、皆さんは自分が入るお墓や葬儀について、考えたことはあるだろうか?街ゆく人に聞いてみた。

1人暮らしの高齢者は40年で約7.5倍に

取材班:
葬儀の準備はしている?

70代女性:
してます。いつ自分がどうなるか分からないので、子供にも「こういうふうにしてほしい」とは話し合いはしてます。

「だからお墓の心配はないですね。娘がいるし、いつコロッと逝っても安心」
「だからお墓の心配はないですね。娘がいるし、いつコロッと逝っても安心」
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90代男性:
お墓は山梨県の甲府に。ちょっと遠いけどね。だからお墓の心配はないですね。いつコロッと逝っても安心ですね。娘はいるしね。

具体的な葬儀プランや入るお墓が既に決まっている人がいたが、少し下の世代になると…。

取材班:
具体的なプランは?

60代女性:
ないですね。お墓はちょっと今、検討中。

「れで実感が湧いてきて、考えられるようになるのかなと」
「れで実感が湧いてきて、考えられるようになるのかなと」

30代女性:
考えたことないですね。親が亡くなったら手続きにも参加すると思うので、それで実感が湧いてきて、考えられるようになるのかなと思います。

多くの人がまだ考えていないようだ。そんな中、こちらの男性は。

取材班:
お墓は用意していますか?

70代男性:
ないです。無縁仏だね。役所に世話になるしかないじゃないですか。

取材班:
どうしてその可能性があるんですか?

「無縁仏だね。役所に世話になるしかないじゃないですか」
「無縁仏だね。役所に世話になるしかないじゃないですか」

70代男性:
1人でいるからそうなるわけじゃん。独身。別れたんだけどさ、1人だから。

年々増え続け、40年間で約7.5倍に
年々増え続け、40年間で約7.5倍に

実は、一人暮らしの高齢者は年々増え続け、1980年から2020年までの40年間で約7.5倍に増加。それに伴ってある問題が起きていた。

引き取り手がない…市役所に大量の骨箱

取材班がやってきたのは、神奈川県の横須賀市役所。その一角にあったのが…。

横須賀市 終活支援センター 福祉専門官 北見万幸さん:
こちらがご遺骨の一時安置室ですね。

骨箱や紙袋に収められ、棚いっぱいに並んでいた(横須賀市役所)
骨箱や紙袋に収められ、棚いっぱいに並んでいた(横須賀市役所)

棚にびっしり並ぶのは、骨箱や紙袋に収められた遺骨だ。

取材班:
全部でどれくらいあるんですか?

横須賀市 終活支援センター 福祉専門官 北見万幸さん:
100~150くらいです。

骨箱の氏名欄を見ると、「不詳」と記された遺骨もあるが、ほとんどは亡くなった方の名前が書かれている。

氏名欄に「不詳」と記された遺骨も
氏名欄に「不詳」と記された遺骨も

一時的に安置されているというが、その理由は…。

横須賀市 終活支援センター 福祉専門官 北見万幸さん:
引き取り手がないんです。いろいろな役所で、こういうお部屋はあると思います。

引き取り手が見つからなければ、市内の別の納骨堂へ
引き取り手が見つからなければ、市内の別の納骨堂へ

ここにある遺骨はすべて、引き取り手が見つかっていないのだという。約2年間はこの場所で安置されるが、その間に引き取り手が見つからなければ、市内の別の納骨堂に移される。

横須賀市 終活支援センター 福祉専門官 北見万幸さん:
引き取り手のないご遺骨は、何もしないでいれば増えるばかりです。

増加傾向にある引き取り手のいない遺骨。いわゆる「無縁遺骨」の数は増えているという。

こういった“無縁遺骨”を減らすため、横須賀市ではある取り組みが行われていた。

本人の希望通りに弔い 存命中は安否確認も

お寺の本堂に置かれていたのは、92歳の女性の遺骨。

焼香に訪れていたのは親族や知人ではなく、横須賀市の職員だ。

「この間亡くなられたので、それを職員が見届けたということです」
「この間亡くなられたので、それを職員が見届けたということです」

横須賀市 終活支援センター 福祉専門官 北見万幸さん:
頼れる身寄りがなくて、経済的にもゆとりがない方の葬儀・納骨の支援。この間亡くなられたので、それを職員が見届けたということです。

頼れる身寄りがいない高齢者を対象にした終活サービス
頼れる身寄りがいない高齢者を対象にした終活サービス

頼れる身寄りがいない高齢者を対象にした終活サービス「エンディングプラン・サポート事業」。生前に26万円の預託金を市に支払うことで、本人の希望通りに弔ってもらえる。

遺骨が納められる場所は…。

「身寄りのない方、お子さんのいらっしゃらない方など、ワケありの方が入っております」
「身寄りのない方、お子さんのいらっしゃらない方など、ワケありの方が入っております」

お墓を管理する寺の住職:
永代供養といいまして、身寄りのない方、お子さんのいらっしゃらない方、お子さんが女の子で嫁いでしまった方とか、ワケありの方ですね。そういう方が入っております。

92歳女性の遺骨は、寺院や霊園が遺骨を管理し、故人の供養を続けてくれる共同墓地に納骨された。

これまで122人と契約し、51人の納骨を市の職員が見届けた
これまで122人と契約し、51人の納骨を市の職員が見届けた

横須賀市では“身寄りのない高齢者”を対象にした終活支援サービスを2015年から開始。これまで122人と契約し、そのうち51人の納骨を市の職員が見届けた。

さらに、このサービスの特徴は、本人の望み通りに弔ってもらうだけではない。

「今大変そうなことはありますか?」電話や家庭訪問で安否確認
「今大変そうなことはありますか?」電話や家庭訪問で安否確認

終活支援センターの職員:
横須賀市役所 地域福祉課の高井ですけども、どうですか?何とかやってます?今、何か大変そうなことはありますか?大丈夫ですか?

存命中は電話や家庭訪問などで相談に乗ったり、安否確認を行う。

夫と死別し40年間1人暮らし 介護サービスを相談

この日、市の職員が訪れたのは…。

終活支援センターの職員:
こんにちは。明けましておめでとうございます。今年初めてでしたね。

田中さん(仮名):
ありがとうございます。どうぞ、お上がりくださいませ。

横須賀市に住む田中さん(仮名)、88歳のご自宅。44歳の時に警察官の夫と死別し、以来、40年間、1人で暮らしている。

田中さん(仮名):
1人全く身寄りが無い状態になっちゃったので。どこにお願いしたらいいのかなって、色々考えた末に。おかげさまでご縁をいただいて。

「どこにお願いしたらいいのかなって、色々考えた末に」頼れる身寄りがなく、終活支援サービスを契約
「どこにお願いしたらいいのかなって、色々考えた末に」頼れる身寄りがなく、終活支援サービスを契約

子供がいない田中さん(仮名)は頼ることのできる身寄りがおらず、2022年4月に「エンディングプラン・サポート事業」を契約した。

この日は、3カ月に一度の訪問日。

終活支援センターの職員:
1人で住んでるから、ボケちゃったら心配だなって言ってたじゃないですか。

田中さん(仮名):
はい。

「ボケちゃったら心配だなって、言ってたじゃないですか」認知症の介護サービスや予防法を話し合う
「ボケちゃったら心配だなって、言ってたじゃないですか」認知症の介護サービスや予防法を話し合う

終活支援センターの職員:
認知症予防のための運動みたいなのがあるのね。

認知症の介護サービスや予防法について話し合う。さっそく職員と一緒に、手と足を使った運動を実践。

認知症予防の運動を実践 直接会うことで様子を確認し、利用者に寄り添う
認知症予防の運動を実践 直接会うことで様子を確認し、利用者に寄り添う

終活支援センターの職員:
(手と足を動かして)1、2、3。

田中さん(仮名):
(職員の動きをまねして)1、2、3。

終活支援センターの職員:
そう。

直接会うことで様子を確認し、利用者に寄り添う。

終活支援センターの職員:
あとは何か困っていること、ご要望はないですか?

困り事なや要望はないかと聞かれ、「ないです。あとはずっと、(職員の)高井さんと鈴木さんにお願いします」
困り事なや要望はないかと聞かれ、「ないです。あとはずっと、(職員の)高井さんと鈴木さんにお願いします」

田中さん(仮名):
要望ないです。あとはずっと、(職員の)高井さんと鈴木さんにお願いします。もう本当に安心していられるの。

未婚率の増加などから、今後確実に増えるとみられている身寄りのない高齢者。自分の葬儀やお墓の準備は、生前に自分でする時代が来ているのかもしれない。

(「イット!」1月30日放送)