1月6日、茨城県笠間市のJR常磐線踏切で起きた電車と軽乗用車の衝突事故。

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上空からヘリコプターで見ると、軽乗用車が電車の先頭車両とぶつかって大きくひしゃげているのが確認できる。

この事故で軽乗用車に乗っていた50歳の母親と12歳の息子が死亡した。

実はこの踏切では、一昨年2021年12月にも特急列車と車が衝突する事故が起きていた。

遺族の父親は「以前、事故があった時に妻と話をしていて、踏切の交差点(踏切を出たところが)T字路になっているとか、そういう形状のところで難しい踏切だなということは常々思っていたんですけれども…」と無念を口にする。

なくならない踏切での痛ましい事故。

こうした踏切での事故は2021年度には全国で217件、そのうち死亡者数は96人となっている。

一方で、踏切を取材すると見えてきたのは危険な横断。

遮断棒が下りていてもお構いなしに横断する人は後を絶たない。

踏切での“危険な横断”の実態を取材した。
 

JR南武線・矢向駅からすぐ「矢口第二踏切」の場合

向かったのは、横浜市JR南武線・矢向駅から歩いてすぐの場所にある矢口第二踏切。

遮断機の間は25.5メートルもある。

警報機が鳴るとしっかり止まる人がいる一方で、相次いでいたのは警報機が鳴ってから踏切を渡っていく“駆け込み横断”だ。

事故につながる恐れのある危険な行為。

遮断機をくぐり抜けて通っていく人や、遮断機が下りているのに自転車で通行していく人、25.5メートルあるため渡りきる頃には遮断棒が下り、完全に踏切が閉まってから渡り終える人の姿も見られる。

下りきった遮断棒の下をくぐって通ろうとした自転車の人
下りきった遮断棒の下をくぐって通ろうとした自転車の人

下りきった遮断棒の下をくぐって通ろうとした自転車の人は、自転車を低く傾けたため前のかごに載せていた荷物が落ちてつまずいてしまった。

さらに、無理やり踏切を渡ろうとした男性のリュックが下りきった遮断棒に引っかかり、その反動で遮断棒が隣を歩いていた女性に衝突する危険な場面もあった。

なぜ、危険な横断をしてしまうのか?

警報機が鳴ってから横断した人に理由を聞くと、「急ぎでした。慣れというか、もう感覚で。(次の電車にすぐ乗りたい?)あと3分くらいで(電車が来る)」と話していた。

踏切が開くのを待っていた60代の人からは「朝7時半から8時くらいだと全然開かない。不満はありますけど仕方ない」というあきらめの声が聞かれた。

実はこの踏切、いわゆる“開かずの踏切”だったのだ。

実際に朝の通勤時間帯の様子を観察してみると、午前8時頃に電車が4本通過するも踏切は開かない。

警報が鳴って踏切が閉まってから通過した列車の数は6本。

再び開くまで8分40秒かかった。

踏切の利用者からは、「車がすごい台数並んでいて渋滞にもなっちゃうし、みんなその後(踏切が開いた後)走って渡るから危なくて」(30代)、「いつ事故が起きてもおかしくない状況なんじゃないかなって。いつもヒヤヒヤしながら進んでいる」(30代)と安全性を心配する声が聞かれた。

この危険な状況にJR東日本は「鉄道の利便性と踏切の安全性を確保するため現在の遮断時間が必要。警報機が鳴り始めたら無理な横断をやめ、また踏切内で異常を認めたら直ちに非常ボタンを押してください」としている。
 

東武東上線・大山駅からすぐ「東上本線第15号踏切」の場合

続いて訪れたのは東京・板橋区の東武東上線・大山駅近くにある東上本線第15号踏切

商店街が近くにあるため、多くの人が利用している。

ここでも、「やっぱり時間が長いですよね。1回閉まって開くまでの時間が」(30代)、「渡っている途中に次の電車がすぐ来たりとか…待っている時間が長かったりする」(20代)といった声が聞かれた。

踏切がなかなか開かないようで、危険な“駆け込み横断”が続出。

遮断棒を押しのけて通っていく自転車
遮断棒を押しのけて通っていく自転車
遮断棒を手で持ち上げて踏切から出る人
遮断棒を手で持ち上げて踏切から出る人

遮断棒を押しのけて通っていく自転車や、遮断棒を手で持ち上げて踏切から出る人もいた。

押していたベビーカーの車輪が線路の溝に引っかかってしまった
押していたベビーカーの車輪が線路の溝に引っかかってしまった

無謀な横断によって、女性が押していたベビーカーの車輪が線路の溝に引っかかってしまう危険な事態も…。

近くを渡っていた人が遮断棒を上げて
近くを渡っていた人が遮断棒を上げて
無事に渡りきることができた
無事に渡りきることができた

この事態に、すかさず近くを渡っていた人が助けに入り、ベビーカーの上に載せていた段ボールを持ち、遮断棒を上げて無事に渡りきることができた。

しかも、この踏切。閉まるとなかなか開かないだけではない。

踏切が開いたと思ったらわずか3秒で警報機が鳴り始める
踏切が開いたと思ったらわずか3秒で警報機が鳴り始める

踏切が開いたと思ったらわずか3秒で警報機が鳴り始める。

そして車が踏切を渡りきる前に遮断棒が下りてきてしまうこともあった。

踏切が開き、線路内に進入していくごみ収集車
踏切が開き、線路内に進入していくごみ収集車

踏切が開き、ゴミ収集車が線路内に進入していくが、またすぐに警報機が鳴り出す。

停車中のトラックをよけて横断していたゴミ収集車に遮断棒が引っ掛かかり…

その遮断棒の先端が折れ、近くを通行していた自転車に勢いよく直撃した。

幸いにも当たったのは自転車だったが、もし人に当たっていたらケガをする可能性もある危険な瞬間だ。

こうした危険な状況を受け、2030年度を目標に、この前後の区間を高架にしてこの踏切を廃止する計画が進んでいる。

取り返しがつかない事故が起きる前に一人一人が気をつけなくてはいけない…。

(「イット!」 1月19日放送)