若者に防災に関心を持ってもらおうと静岡県掛川市が新たな取り組みを始めた。高校生によるドローン防災航空隊の結成だ。災害時には避難所となる高校の周辺の被害状況をドローンで撮影し、市に報告する。高校生たちは操縦の上達も早く、上々の滑り出しのようだ。
第一期生は全4校から2人ずつ計8人
2022年12月4日、 掛川市である組織の結成式が行われた。

掛川市・久保田 崇市長:
高校生ドローン防災航空隊員を委嘱します。任期は高校卒業までです
掛川市の久保田市長から委嘱書を受け取るのは「高校生ドローン防災航空隊」の隊員だ。第一期生には、市内に4つある高校のすべてから2人ずつ計8人が志願した。

掛川東高2年・榑林 幸助さん:
私は災害が起こったときに多くの命を助けられるよう、今できることをしっかりと行い成長していきたいと思います
「防災に関心を」市若手職員の発案
4カ月前の2022年8月、ドローン防災航空隊の結成に向けた活動が始まった。

夏休みを利用して高校生たちは、ドローン操縦の経験が豊富な建設業の男性に講師をお願いし、飛行許可申請に必要な10時間以上の操縦訓練を積み重ねた。

「防災に特化したドローンの高校生組織」は、消防に勤務経験がある市の若手職員の発案だ。若者が防災に関心をもち、災害時に即戦力になってもらうことが狙いだ。 全国的にも珍しく、県内では初めてだ。
4校にドローンを1機ずつ計4機配備し、その購入費や講習費用などで市は約150万円をかけた。

掛川市・戸塚 美樹 危機管理監:
高校生が防災に興味をもってもらい、地域の活動に参加してくれることを期待しています
高校は避難所 周辺の被害を撮影し報告
隊員たちの主な役割は、災害が発生した際に広域避難所となる高校周辺の被害状況をドローンで広範囲に撮影し、写真や映像を市の災害対策本部へ報告することだ。災害対応の効率化を図る重要な任務が期待されている。

災害現場でのドローンの導入が進んだのは、2014年に広島県で起きた大規模な土砂災害や御嶽山の噴火が契機となった。
静岡県内でも2021年7月に熱海市で発生した土石流災害で、県が発生直後に土石流の起点をドローンで撮影して公表し、初動の状況把握に生かされた。

掛川工業高2年・角皆 海斗さん:
自分は消防士や警察官を目指していて、市民に少しでも貢献でき自分の中で良い経験になると思って志望しました

横須賀高1年・藤田 忍さん:
繊細な操作がかなり難しい。(静岡県は)地震の心配も大きいので、そういう時に役立てるようにやりたい

掛川西高校の三澤日和さんは、以前から地域との関わりやボランティア、防災に関心をもっていて、今回 志願した。
掛川西高2年・三澤 日和さん:
自分の中にある可能性をチャレンジして出していって、地域のために役立てたらいい
4カ月の訓練 講師も上達に感心
講習では航空法やドローンの仕組み、飛ばすための気象条件も学んだほか、ドローンを同じ高さで保ちながらの円を描く飛行や、8の字飛行などの操縦技術を習得する。
12月の地域防災訓練でドローン操縦を披露することが当面の目標だ。

講師:
なるべくセンターにヘリポートを入れながら、そうそうオッケー。すごくうまいです。逆にびっくりするくらい
高校生の、のみ込みの早さに講師も感心していた。

11月にはいよいよ実地訓練だ。
市 担当者:
本日は実際に飛ばして、写真と動画を撮影してもらう(防災訓練の)“事前訓練”という形で行いたいと思います
飛行許可を受けた高校生の隊員たちは、より実践に近い場所に移り、上空50mまで機体を上昇させていく。写真や映像の撮影方法も学び、操縦技術を高めていった。

地域防災訓練まで2週間を切った。
市 担当者:
土砂災害警戒区域が東側に多くあります。こちらの方を実際に飛行や撮影して、掛川東高校のグラウンドへ戻ってきて、その後に災害対策本部へ報告する
高校生たちの隊員としての初任務を成功させようと、市職員たちも念入りに訓練当日の動きや流れを最終確認していた。
地域防災訓練で上々のデビュー 使命感を新たに
2022年12月4日、いよいよ地域防災訓練の当日だ。
高校生たちは無事、任務を果たせるだろうか。

市 担当者:
地震が発生し、掛川東高校東側において土砂崩れが発生した模様。それでは訓練に入ります
土砂崩れが起きたという想定で訓練は始まり、隊員たちは1人ずつドローンを操縦していく。上空から山の周辺の被害状況を撮影し、市の災害対策本部に映像を送信するのが今回の任務だ。

久保田市長も視察に訪れ、隊員たちに注目する。
掛川市・久保田 崇 市長:
若い世代が防災に関心をもってもらって参加してくれて、大げさになるかもしれないけど、掛川市全体の防災力底上げになると思っています

三澤さんの出番がまわってきた。市の担当者が訓練の見学者に、三澤さんの活動を紹介する。
市 担当者:
飛行する前に安全の点検をしています。左右・前後・旋回を確認しています

この日はやや風があったが、上空40mまで機体を上昇させ、目的地まで飛行して撮影する。これまでの訓練の成果を発揮して、無事に任務を務めることができた。

掛川西高2年・三澤 日和さん:
無事に自分で考えて行動して操作して帰ってこられたので良かった。最初はドローンに触ったこともなかったので不安の方が大きかったけど、今は自信もついたし不安より自分の任務に対する気持ちの方が強くあります
他の隊員たちも防災に対する意識を高め、やりがいを感じている様子だった。
掛川工業高2年・角皆 海斗さん:
「やってやるぞ」という気持ちになりました。高校生という若い力として、掛川市で災害が起きた場合に少しでも力になれたら
掛川東高2年・角替 勝信さん:
未来に何かに役立つなら、自分ができることを一生懸命やりたい

いよいよ本格始動した高校生ドローン防災航空隊。
平常時には土砂災害警戒区域を撮影して市民に公開するなど、地域の防災力向上に向けて活躍の場を広げていく。
(テレビ静岡)