台湾を訪問している自民党の世耕弘成参院幹事長は28日、蔡英文総統と会談し、軍事的圧力を強める中国をめぐり意見交換した。
会談には、清風会(参議院安倍派・世耕会長)の議員らも同席した。
台北の総統府で行われた会談の冒頭、蔡総統は中国を念頭に、「台湾と日本は共通の地域的な挑戦に立ち向かっている」と述べた。

これに対し、世耕氏は、台湾のミサイル能力の増強などを挙げ、「台湾が『自らの国は自らで守る』という決意と行動を明確に示していることを高く評価したい」と述べた。
今回の会談について、ある安倍派議員は「『安全保障3文書』が決まった後の訪問になったので、安全保障について日本がどういう考えをもっているのか、今回はその姿勢をしっかり見せる」と狙いを説明した。

実際、会談で世耕氏は、「日本が『安全保障3文書』を策定、防衛予算を大幅に増額し、防衛能力を抜本的に強化をしていく決意を示した」と言及し、「アメリカ政府が国防権限法によって台湾をしっかり支援をしていくという意思を明確にしたこと」とともに、「この地域において力による現状変更を試みる者に対し、明確で強力な抑止が働くことになった」と指摘した。
また、会談の中で世耕氏は、自民党と台湾の民進党による外務防衛の責任者協議「2+2(ツープラスツー)」の開催を提案し、蔡総統も賛意を示したという。
安倍元首相の銅像を前に「努力していきたい」
会談に先立つ27日、世耕氏らは台湾南部・高雄の「紅毛港保安堂」にある安倍元首相の等身大の銅像のもとを訪れた。
銅像は安倍元首相が銃撃後、安倍氏が日台親善を推進した功績を称えて建てられたもの。
台湾の民間団体などが寄付を募ったということで、足元には「台湾の永遠の友人」と刻まれている。

この像について、世耕氏は、記者団に対し「今にも話し出しそうな顔をされているなと思う」と感想を述べた上で、「安倍さんの銅像を見て、この地域の皆さんの気持ちを感じたことによって、自民党参院議員も、さらに日台の絆を深めるべく、しっかり努力をしていかなきければならないという気持ちになった」と心境を語った。
この際、「首相を目指すか」との質問を受けた世耕氏は、「国会議員になった以上は、いずれは国の舵取りをしっかりやってみたいという思いは持っている」と話す一方で、会長不在が続く安倍派については「何か慌てて結論を出す必要はないと思う」と述べるに留めた。
世耕氏の台湾訪問は、安倍氏や萩生田政調会長らとともに訪れた2010年以来で、萩生田氏は今月中旬に再訪問している。
今回の世耕氏の台湾訪問には、派閥の今後をにらんだ上で、安倍氏の後継者であることをアピールする狙いもありそうだ。