「赤酢」その名の通り赤みがかった酢で江戸時代から、すし酢として使われていた日本特有の酢。
日本酒を作る時に出る酒かすを有効活用した“赤酢”を製造し、佐賀を赤酢の産地にしようというプロジェクトが進んでいる。酒どころ佐賀だからこそできる取り組みを紹介。

赤酢「赤鶴久(あけづく)」
赤酢「赤鶴久(あけづく)」
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橋爪和泉アナウンサー:
酒かすを原料に作られているのがこちらの“赤酢”です。飲んでみると…とてもまろやかな酸味で後味はすっきりしています

赤酢は、1年以上熟成させることで赤黒くなり、マイルドな酸味とコクのある味わいだが、通常の酢と比べて製造に時間がかかることから、あまり流通していない。

個人で商品の企画開発などを手がける本山智子さん。佐賀市の食酢メーカー「サガ・ビネガー」に依頼して赤酢の新商品「赤鶴久(あけづく)」の販売を始めた。

ホンザン代表・本山智子さん:
佐賀県内のお米で日本酒をつくって、その日本酒の酒かすも赤酢にできる。その赤酢はお米との相性もいいですし、みんなにとっていいものができるんじゃないか

廃棄される“酒かす”を有効活用

商品化にあたって最もこだわったのは原料。

原料の酒かす
原料の酒かす

サガ・ビネガー 右近雅道社長:
これが赤酢の原料になる“酒かす”です

酢をつくるのに必要な酒かすは県内の酒蔵から調達した。酒かすを提供した多久市の「東鶴酒造」は…

東鶴酒造・野中保斉社長:
(酒かすは)全体で何トンも出てくるので、500kg〜1トンいかないくらいはどうしても使い切れない。赤酢という別の形で生まれ変わって商品として出していただけるのはありがたい

2020年に販売がスタートした「赤鶴久」。300mlで1,620円。しかし、赤酢の“知名度”という大きな壁に阻まれる。

ホンザン代表・本山智子さん:
赤酢のことを誰も知らなくて、資金的に余裕があるわけでもないので広報も大々的にできない。もうやめた方がいいんじゃないかと思ったんですけど…

年間約42万kl生産されている食酢のうち、赤酢はわずか1.2%、5,000klしか生産されていない希少な酢。知名度の低さから、1年間の売り上げは150万円ほどで、ほとんど利益にならない。それでも本山さんが赤酢にこだわる理由は…

ホンザン代表・本山智子さん:
「農業しとっても儲からんから子どもには継がせられん」とか「子どもを大学にもやりきれん」とか話をよく聞いていて悲しいなと、生産者の所得をあげていく手伝いをしていきたいなと思った

赤酢の消費量が増えれば、原料の酒かすが必要になる。それが米の販路拡大にもつながると考えている。

酒蔵とタッグ組んだプロジェクト

佐賀県赤酢プロジェクト
佐賀県赤酢プロジェクト

本山さんは2022年4月、佐賀を赤酢の産地にしようと、「サガ・ビネガー」や天山酒造など県内5つの酒蔵とタッグを組み「佐賀県赤酢プロジェクト」を立ち上げた。

東鶴酒造・野中保斉社長:
酒かすを生まれ変わらせて新しい商品として価値を出していくところがすごく魅力的と思いますので、そういう思いで参加させてもらった

酒蔵から味の決め手となる酒かすを提供してもらい、味の特徴が異なる5つの赤酢を販売して産地化を図ることで、5年以内に1,500万円の売り上げを目標にしている。この取り組みが評価され、11月、将来性のあるビジネスプランを競うコンテストで本山さんは最優秀賞を受賞した。

ホンザン代表・本山智子さん:
「黒酢と言えば鹿児島」と言われるように、「赤酢と言えば佐賀だよね」とたくさんの人に思ってもらえるようにしていきたい

5つの赤酢が出そろうのは1年後、2023年11月の予定。

(サガテレビ)

サガテレビ
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