和紙を使った独自のアートを生み出している、高知出身でイタリア在住の女性がいる。「ルネサンス発祥の国」の芸術家たちを驚かせた作品が“凱旋帰国”。日本の伝統工芸で切り開く新感覚の芸術美を取材した。

和紙の“透ける”性質を生かした作品たち

川辺世里奈アナウンサー:
ツバキに囲まれた女性の絵。凛(りん)とした表情が印象的ですが、絵の具は使われていないんです。使われているのはカラフルな和紙。近づくと立体的に楽しめます

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透き通った目の女性に、咲き誇るバラの花。

2022年12月、高知・いの町にある「紙の博物館」で、伝統の土佐和紙を使ったアートが楽しめる展示会が開催された。

この風景画は、後ろから光を当てると華やかな人物画に早変わり。和紙の“透ける”性質を生かし、2枚の絵を重ねているという。

日高村からの来場者:
すごく感動しました。いの町の紙を使ったものがこんなにできると本当にびっくりしました

制作したのは、イタリア・フィレンツェ在住の和紙画作家・横山明子さん(47)だ。安芸市出身の横山さんは、高知大学でルネサンス美術を学び、卒業後、イタリアのフィレンツェに留学した。

横山さんは、最も薄い和紙といわれる「土佐典具帖紙」を使ったアートを独学で生み出し、2021年には、イタリアで開かれた世界最大のペーパーアートの祭典「ルッカ・ビエンナーレ」の室内展示作品部門で最高賞を受賞した。

和紙画作家・横山明子さん:
イタリア人にとって見たこともない紙で「こんな表現ができるんだ」というのが彼らにとってすごく驚きで、顔を近づけて作品を見たりとか、いろいろ質問されたりします

4カ月かけて制作した作品「夢」。よく見ると…

和紙画作家・横山明子さん:
草むらの草も1本1本全部(和紙を)よって貼り重ねて。手の部分も(和紙を)5~6枚重ねているところもあれば、明るい色の部分は大体1枚だけ。重ねることによって肌のグラデーションを出しています

離れて暮らす、めいの成長を作品に

新型コロナウイルスの影響で4年ぶりとなる高知での個展に、大阪の大学に通う、めいの西元愛美さん(18)が駆けつけた。

和紙画作家・横山明子さん:
大人になってー!

めいの西元愛美さん(18)
めいの西元愛美さん(18)

横山さんには、愛美さんに見せたかった作品があった。

和紙画作家・横山明子さん:
これ、あなた

めい・愛美さん:
すごい

和紙画作家・横山明子さん:
似てる?

めい・愛美さん:
似てると思う

和紙画作家・横山明子さん:
これは私、似てると思う

離れて暮らす愛美さんの成長を、横山さんは作品として残してきた。

和紙画作家・横山明子さん:
絵を作るために(顔を)まじまじと見るじゃないですか。大人になったなって思いながら、しみじみと作りました。変わった叔母さんだなって思ってるやろ?

めい・愛美さん:
いや、すごい! めっちゃすごいなって。うれしいですね。自分の成長とともに

愛するめいだけでなく、横山さんが描く“顔”は表情豊かだ。髪の毛を動かすと表情が変わるのも和紙画アートの魅力だという。

和紙ならではの魅力が感じられる作品
和紙ならではの魅力が感じられる作品

和紙画作家・横山明子さん:
地元の紙が海外に行ったことでこんなふうに発展するんだというのが、わたしの作品が一つの発展の例だと思うので「和紙でこういうふうな作品ができるんだ」と、見て楽しんでもらえたら

薄くて丈夫な土佐和紙は、イタリアで古い絵画の修復に使われていて、現地の職人からも評判だという。

新型コロナで帰国できない間、横山さんは、和紙を使った修復作業に立ち会ったり、和紙で小物入れなどを作る活動をしていたという。伝統の“土佐和紙”に新たな風を吹き込んでいる。

(高知さんさんテレビ)

高知さんさんテレビ
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