学校で行われる健康診断。医師や同級生の前で裸になることに、抵抗があったという人もいるのではないか。今、学校健診の在り方を見直すべきという声が増えてきている。

■きっかけは“医師による盗撮事件”

子どもたちの安心できる健康診断をめざす会 江川学さん:
着衣での健康診断を許可していただくようにお願い申し上げます

 11月22日、上半身裸で行う学校健診の見直しを求め、京都府長岡京市の教育委員会に、5000人を超える署名が提出された。

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子どもたちの安心できる健康診断をめざす会 江川学さん:
娘から聞いた話によると(小・中・高)12年間、健康診断を受けるときに上半身裸でやっていたと。まさかこのような、上半身裸に強制的にされているのは、今の時代にはそぐわないのではと考えています

 市内に14ある全ての小中学校で、今も男女共に上半身裸での健診が行われている長岡京市。
 署名した女子大学生は、中学時代の学校健診の様子を振り返る。

署名した大学1年生:
健診の順番が回ってくる2番目前くらいに、全部下着も脱いで、ずっとこのまま隠した状態で、健診のときに全部外すっていう感じ。こういう(腕で胸を隠す)感じで待ってました。嫌でしたね、ここまで脱ぐ必要はあるのかなって、ずっと思ってたし。嫌だったので、誰にも話さずに早く忘れようって感じで

 署名では、なるべく裸をさらす時間を減らしたいという思いから、直前まで服を着て待ち、下着をつけたまま診察を受けることを認めてほしいと訴える。。

 この署名が集められるきっかけになったのが、2022年7月に発覚した、小中学校での医師による健診中の盗撮事件だ。

 岡山市の医師・藤原大輔被告(47)は、学校健診でペン型のカメラを胸ポケットに入れ、女子の上半身を盗撮。自宅からは、のべ281人の動画が見つかった。

 この事件を機に、長岡京市議会でも、学校健診の見直しを求める声が上がった。

長岡京市 川口良江市議:
思春期のお子さんたちが全部上半身裸で健診を受けるってどうなんだ?っていう思いがあったので

 上半身裸にならなくても、タオルなどで隠しながら診察できるのではないか。保護者から相談を受けた川口市議は、まずは子供たちや保護者の声を聞いてもらいたいと、議会で教育委員会にアンケートの実施を求めたが…

長岡京市・川口良江市議:
そこに関しては「アンケートを取るつもりはありません」っていうことだったんです。健診がこのやり方でいいのかを、みんなで考えたいということなので…そこは、学校医さんと学校が今は話し合われてるんですけど、子供たちの声とか保護者の声もその中に入れていただいて、話し合いの場を設けてほしいということをまず一番に求めたいと思っています

 これについて長岡京市の教育委員会は、直前までバスタオルを羽織らせるなど年齢に応じた配慮は学校により行っているものの、上半身裸での診察は「必須」との立場を取る。

 その理由として、着衣のままの診察では、虐待や、思春期の女子に発生しやすいとされる、背骨が左右に曲がる脊柱側弯症(せきちゅうそくわんしょう)などの病気を見落とす原因につながりかねないとしている。

■「強制的に裸にしないで」 全国でも広がる動き

 学校健診にまつわる署名活動は、全国的にも広がっている。

 「子どもたちを強制的に裸にしないで!本人の同意を大事にしてほしい」と訴えるオンラインの署名サイトは、健診を受ける方法を子供本人の意思で決められるよう求めている。2年間で集まった署名は、2万6000を超えた。

 呼び掛け人は、千葉県に住む会社員の高田愛子さん(34)。学校健診が、後々まで心の傷になった。

高田愛子さん:
養護教諭に「裸の健診を受けたくない」って相談したんですけど、怒鳴られるような形で、「医者がいやらしい目で見てると思っているの」とか「他の子はそんなこと言ってないのに、疑ってかかっているあなたの方が悪い」というようなことを言われてしまって

 中学・高校時代に受けた学校健診の経験がトラウマになり、街中で半裸のマネキンを見たときや着替えをするときに、当時の出来事がフラッシュバックするという。

高田愛子さん:
「内科健診」という言葉を思い出さない日はなかったです。カウンセリングに行って治そうかなとも思ったんですけれど、「こんなことで相談に行く人いるのか?自意識過剰と思われるんじゃないか?」という心配があって、カウンセリングに行くこともできなかったです

 健康診断の実施方法はどのような形が望ましいのか、学校医を務める医師に聞いた。

正木クリニック 正木初美院長:
心尖部という心臓の雑音を聞く場所があるんですが、そこがちょうどブラジャーのところなんです。1人1人ブラジャーを上げて…だと手間もかかりますし、しっかり聞きにくい。ブラジャーを外して下着も外して体操服だけになってもらって、順番を待って、順番が来たら体操服を上げてもらうっていう感じにしてます

(Q.上半身裸にならなくても、体操服を上げることで対応できる?)
私はそれでいいんじゃないかなって思います

 文部科学省は小・中学校の健康診断について、プライバシーへの配慮を含む実施方法を丁寧に説明し、児童生徒や保護者の理解を得るよう通知しているが、国としての統一ルールは設けていない。

 誰もが納得して受けられる健診の在り方へ、今、議論が求められている。

■学校健診 上半身裸の理由は?

 京都府医師会による2019年の調査では、京都市を除く公立の小中学校259校のうち、男女共に上半身裸で健診していたのは小学校で71パーセント、中学校で32パーセントという結果だった。

 この調査に京都市が入っていないのは、京都市内の小中学校の100パーセントが、上半身裸で健診しているためだ。

 上半身裸での健診を受けた人たちからは、「ここまで脱ぐ必要がある?」「もはや性暴力」といった声も上がっている。

 こういった声に対して、健康診断を行っている側の京都府医師会は「脱衣でないと疾患を見逃す恐れがある」としている。

 医師が学校健診で何をチェックしているのか、学校医を務める正木クリニックの正木院長に聞いたところ、肌の変色やアトピー・発疹といった疾患や、虐待の痕や外傷の有無ということでした。また心音は、下着を着用していると聞き取りづらいということだ。

 中でも一番、医師がチェックしたいというのが、背骨が曲がってしまう脊柱側弯症。全体の8割が特発性側弯症で、そのほとんどが11歳以上の女児だそう。

 小学4年生~中学3年生が進行しやすく、早期に発見できれば軽度の治療で済むものの、見逃して悪化した場合、呼吸器などにも影響が出てくるということだ。

 玉木院長は学校健診について、「上半身裸が理想だが、体操服着用(下着なし)が現実的」だと話す。

(関西テレビ「報道ランナー」2022年11月22日放送)

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