静岡県裾野市で市民文化センターのスプリンクラーが突然作動し、オーケストラの楽器が水浸しになった問題は、いまだ原因がわかっていない。「施設の老朽化による誤作動」か「人為的な操作」か。原因の究明が急がれている。

大ホールで突如スプリンクラー作動

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雨宮帆風記者:
1991年、約30年前にオープンした、裾野市民文化センター。2022年9月、大ホールでの演奏会直前、まさかの事態が発生しました

(シンフォニエッタ静岡撮影)
(シンフォニエッタ静岡撮影)

2022年9月24日午後1時頃、大ホールのステージと舞台裏に降り注いだのは“大量の水”だ。

天井のスプリンクラーが突然、作動した。

(シンフォニエッタ静岡撮影)
(シンフォニエッタ静岡撮影)

大きな水滴がついたシンバル。

(シンフォニエッタ静岡撮影)
(シンフォニエッタ静岡撮影)

譜面台に滴り落ちる水で、楽譜は水浸しになっている。

中原芸術監督:悲鳴が聞こえ、見たら真っ白だった
中原芸術監督:悲鳴が聞こえ、見たら真っ白だった

シンフォニエッタ静岡・中原朋哉芸術監督:
衝撃的でしたね。悲鳴が聞こえ、見たらもう真っ白だったんです。ザーって音がして滝のようでした

(シンフォニエッタ静岡撮影)
(シンフォニエッタ静岡撮影)

1000万円以上するヴァイオリンなど約100点の楽器に水がかかり、被害額は少なくとも数億円に上ると想定されている。

中原芸術監督:楽器は体の一部
中原芸術監督:楽器は体の一部

シンフォニエッタ静岡・中原朋哉芸術監督:
修理だけで数千万円から1億円かかる可能性があります。買い替えになると数億円になるでしょうね。楽器は体の一部なので、体が傷つけられるのと同じくらいのことを感じています

(シンフォニエッタ静岡撮影)
(シンフォニエッタ静岡撮影)

60人いた楽団員のうち、楽器を守ろうとした5人が転んでケガをして、このうち1人は肩の骨を折る重傷を負った。

楽団は「施設と設備の老朽化」と推測

原因について楽団は、施設と設備の老朽化だと考えている。

シンフォニエッタ静岡・中原朋哉芸術監督:
不審者の侵入を許す作りである文化センター、操作盤周辺に防犯カメラを設置していない時点で裾野市に責任があることは明白です。(楽団員の)居場所も全員特定できており、それは警察に提出しています。あそこの目の前にいて触っているような人はいないと

裾野市の会見(10月27日)
裾野市の会見(10月27日)

一方、裾野市は発生から1カ月以上たった10月27日、会見を開いた。

自治体は「人為的操作の可能性」

裾野市・村田市長:軽々に謝罪はできかねる
裾野市・村田市長:軽々に謝罪はできかねる

裾野市・村田悠市長:
大ホールを再開する見通しは現在たっておりません。原因が明らかになっておらず第三者の人為的操作の可能性もある中で、市の責任者の立場として軽々に謝罪はできかねると思っています

(裾野市提供)
(裾野市提供)

市は点検業者から「スプリンクラーに異常や故障はなかった」と報告を受けていて、いまだ原因はわかっていない。

市が主張する「第三者による人為的操作の可能性」とは一体どういうことなのか。

雨宮帆風記者:
こちらの中にスプリンクラーの開栓用レバーがあります。体がぶつかったり触ったりしただけでは作動しない仕組みであることがわかります

スプリンクラーの操作盤(裾野市提供)
スプリンクラーの操作盤(裾野市提供)

スプリンクラーはレバーを操作することで作動する開放型のスプリンクラーだ。配管は4系統に分けられていて、それぞれのエリアに対応したレバーを操作すると起動する仕組みとなっている。

この操作盤は舞台の両脇2カ所にある。

裾野市・勝又教育部長:必ず手動レバーの操作が必要
裾野市・勝又教育部長:必ず手動レバーの操作が必要

裾野市・勝又明彦教育部長:
開放型のスプリンクラーになるので、必ず手動のレバーの操作をする必要がある。

記者:
どんな場合においても?

裾野市・勝又明彦教育部長:
そういうことになります。通常は閉じた状態、「横」になっています。それを「縦」にして開く状態にして、再び「横」に戻したとしても、開栓された後は、スプリンクラー自体は止まりません

市が調べたところ、4系統ある配管のうち2つに開栓されたあとがあったという。また、火災報知器とは連動しておらず、火災や煙を感知して水が出ることもない。

これまでに、誰かがレバーを操作したという形跡は確認されていないものの、レバーが自動で下がることはなく、市は「何者かが作動させた可能性も否定できない」としている。

原因分からず深まる溝

裾野市・村田市長:まず原因を明らかにすることが必要
裾野市・村田市長:まず原因を明らかにすることが必要

裾野市・村田悠市長:
市民の大切な税金を預かる立場として、まずは原因を明らかにすることが必要であるというのが市の一貫した主張です。設置や管理に瑕疵があったと認められなければ、公金を搬出し補償することはできかねます

裾野市役所
裾野市役所

市は 原因の究明にむけて第三者による事故調査委員会を11月中に立ち上げる方針だ。

原因がわからないことから、謝罪や補償はできないと主張する裾野市。

こうした市の対応に、楽団は不信感を募らせている。

楽団側の会見
楽団側の会見

シンフォニエッタ静岡・中原朋哉芸術監督:
市長・自治体としての責務が全く果たされておらず、お粗末極まりない。裾野市の対応は非常識。こういう態度をとり続けなくてはならない理由が、どこかにあるのではと考えています

楽団は今後の市の対応によっては数億円の損害賠償を求める裁判も検討している。

中原芸術監督:楽団に犯人がいるとの二次被害も
中原芸術監督:楽団に犯人がいるとの二次被害も

シンフォニエッタ静岡・中原朋哉芸術監督:
市は事故の可能性は低く人為的な操作があったという主張を繰り返している。こういった裾野市の動きによって二次被害もあって、オーケストラの中に犯人がいるのではないかとネット上に書き込まれました

静岡県警・裾野署
静岡県警・裾野署

市と楽団はそれぞれ警察に相談していて、レバーの指紋を調べるなど捜査が続けられている。

スプリンクラーは「誤作動」か、「誰かのしわざ」か。裾野市と楽団の主張は真っ向から対立したままだ。

市が設置する第三者委員会がどこまで原因に迫ることができるのか、注目されている。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
テレビ静岡

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