11月11日の「もやしの日」を前に掲載された、もやし生産者の窮状を訴える広告がSNSで話題となっている。
その広告がこちら。

日本経済新聞全国版 令和4年11月7日 朝刊掲載広告デザイン(画像提供:工業組合もやし生産者協会)
日本経済新聞全国版 令和4年11月7日 朝刊掲載広告デザイン(画像提供:工業組合もやし生産者協会)
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工業組合もやし生産者協会が11月7日の日本経済新聞の朝刊に掲載したものだ。
この中で、もやし生産者の窮状をこう訴えている。

「物価の優等生」として家計に貢献できることは、わたしたちの誇りでもありました。
しかし、安さばかりを追求していては、もう続けていけない状況です。


30年前と比べて、原料種子価格は3倍以上、最低賃金は1.7倍、様々なコストが上昇。
一方のもやしの全国・平均価格は2割以上も下落しているのです。
もやし生産者は8割減少し、今も減り続けています。

訴えにあるように、実際、もやしの主な原料種子である中国産の緑豆の価格は、特に2010年以降、作付面積の減少や人件費高騰、天候不順などにより、30年前と比べ原料種子価格は3倍以上に高騰している。

※もやしの原料種子価格の推移(画像提供:工業組合もやし生産者協会)
※もやしの原料種子価格の推移(画像提供:工業組合もやし生産者協会)

一方、もやしの全国・平均価格は90年代後半ごろから下降している。

もやしの全国・平均価格の推移(画像提供:工業組合もやし生産者協会)
もやしの全国・平均価格の推移(画像提供:工業組合もやし生産者協会)

こうした影響により、もやし生産者は30年前と比べ8割減少し、今も減り続ける苦しい状態が続いている。
また、工業組合もやし生産者協会は広告の中で、こうも訴えている。

もやしの未来のために 持続可能なサプライチェーンの実現のために
もやし生産者の窮状をご理解ください

この広告について、広告プランナーの加藤誠也さん(@adbrex_)が、Twitterでこのようにコメントを投稿。

今朝の日経新聞のもやしの広告。
かなり中身が衝撃的。30年前比較で、
・原料種子は3倍以上などコスト増
・もやしの全国平均価格は2割以上下落
・もやし生産者8割減
思わず「まじか」って呟いちゃったけど、もやしの日に向けて、色々考えさせられる内容でした。

すると、「心に迫る内容です。しかしどうすればいいのか…」「ほんと今までありがとう、無理せず、適正価格にしてください。今まで頑張ってくれてたんだから!私は買って応援する。それしか出来んけど」といったコメントなど、家計を助けてくれるもやし生産者の訴えに1万2000件超のいいねが付き、話題となった。(11月9日時点)

では、今回、工業組合もやし生産者協会はなぜ新聞広告を出したのか?最近の物価高・コスト高が生産者の窮状に拍車をかけているのだろうか?
工業組合もやし生産者協会の林正二理事長に詳しく話を聞いてみた。

原料価格だけでなく、生産コストが上がっている

――なぜ新聞広告を出すことにした?

新聞広告を出すには多額のコストがかかるわけですけど、それだけの広告を出さなければいけないくらい我々生産者が追い詰められているといえます。
原料価格が高騰しているだけでなく、もやしを生産するためのコスト(栽培するための燃料費、電気料金、包装資材の費用、物流費など)が一斉に上がっており、今までにないくらい危機的な状況に陥っています。
そうした窮状をご理解いただきたいと今回、広告を出させていただきました。


――生産者の数は年々減っている?

もやし生産者は30年前と比べ8割減少しています。
全国に100ほどの生産者があるのですが、すでに今年も3社か4社廃業しています。

今の価格は正常ではない、企業努力を越えた状況にある

――この先、もやしが我々の食卓から消える可能性もある?

値段は上がっていきますが、直近で食卓から消えることはないと思います。
しかし、現在、もやし生産者がない県もすでにあります。
全国津々浦々まで行き届くことができなくなる可能性は将来あるかもしれません。


――我々消費者が生産者を応援するためにできることは?

何が生産者を苦しめているのかというと、値段です。もやしは、安さという部分で皆さんに喜んでいただいている商品だと思います。しかし、安さゆえに我々を苦しめている商品でもあります。スーパーの野菜の中で、一番お買い上げいただいているのがもやしです。それだけ売れている商品だから、もやしが安いとこの店の商品は安いんじゃないかとお客様には思われやすい。
だから、スーパーは、競合店より目玉商品のもやしを安く売りたい。そういう位置づけになっていて、価格が上げられない。中には、仕入れ価格を下回って、もやしを販売するスーパーもあります。

しかし、今の価格は正常ではなく、企業努力を越えた状況であります。これまでのように安い値段で販売できる状況ではなくなっています。ですから、適正な価格でスーパーに卸して、スーパーは適正な価格で販売しなければ、生産者はやっていけません。
消費者の皆さんは、そういったことをご理解していただきたいです。

 

10月をピークに値上げラッシュはまだ続いているが、元々安い価格で販売していたものはコスト高の影響をより受けやすいだろう。もやし生産者の窮状を知って、消費者も販売する側も“もやしは安いもの”という認識を改める必要があるかもしれない。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。