円安や原材料価格の高騰は、静岡県の観光牧場にも影響を与えている。輸入に頼るエサ代の値上がりだ。ピンチを乗り切りため、スタッフは様々な工夫を重ねている。そのひとつが、生まれたばかりのヒツジやヤギの名づけ親になる権利「めぇ~めぇ~権」の販売だ。
値上げの波が止まらない
帝国データバンクによると、10月から値上げされた食品は6532品目で、月別の値上げ品目は2022年で最も多くなった。

要因は「原材料価格の高騰」「円安」「原油高」が続いているためだ。どれくらい上がったのかというと、例えばビール・チューハイなどが2~13%、ペットボトル飲料が4~25%、マヨネーズなどが2~20%、ハム・ソーセージ類が2~34%となっている。

困っているのは人間だけではない。動物たちのエサ代も高騰している。
「28年働いて初めて」エサ代1.7倍に
ヤギやヒツジをはじめ、ウシ、ウマ、ウサギなど、たくさんの動物とふれあえる観光スポットとして人気なのが、富士宮市にある「まかいの牧場」だ。

さまざまな商品の値上がりは、10種類・約180匹の動物たちが暮らす牧場にも影響を及ぼしている。特にエサ代は深刻だ。

動物たちが食べるのは、海外から輸入する乾草やトウモロコシなどの穀物を原料にした配合飼料だ。すべての動物が1日に食べる量を合わせると約150kg。価格は穀物の高騰や円安の影響などで、2021年と比べ1.4倍から1.7倍になった。
まかいの牧場 観光部 新海貴志課長:
私は働いて28年になりますが、こんなことはない。冬にエサが手に入らない状態になりそうなので、本当に不安がいっぱい

頭を悩ませるのはエサ代の高騰や不足だけではない。新型コロナによる収入の減少のほか、レストランや販売コーナーで日々使用する電気代や商品製造にかかる小麦粉など、原材料価格の値上がりも重い負担となっている。

まかいの牧場 観光部 新海貴志課長:
電気代が8月も1.4倍になった。去年と使用量はほぼ同じだったが料金は4割アップ。今やれることをやっていこうと、ピンチはチャンスという気持ちでいろんなことをやっている
荒れ地を活用し飼料に 節電努力も
池田孝記者:
エサ不足を少しでも解消しようと、雑草をエサに代えるために 草刈りが行われています

苦しい状況を乗りこえようと、取り組んでいることがある。元々は牧草地だった土地に生える草をスタッフたちが仕事の合間に刈り取り、飼料の足しにしている。

また、電気代節約のためにエアコンの室外機や冷蔵庫に反射シートを付けたり、放電を防ぐため、抜いていいコンセントには赤いシールを貼ったりと、小さな工夫や努力を重ねている。
来場者:
個人の生活でも物価が上がっている。大きな施設の牧場は、よりその影響が大きいと肌で感じる。僕らも一組のお客として、できることをいろいろやりたい。(有料の)エサやりなどして、少しでも売り上げに貢献できれば

別の来場者:
私たち観光客のために、いろいろやってもらえるとありがたい
ヒツジの名づけ親「めぇ~めぇ~権」を販売
牧場スタッフ:
この子は「ちまきちゃん」。仲良しの子がいるので一緒によく寝ている。この子は「いろはちゃん」です。この子は双子のお姉ちゃん、妹の「なのはちゃん」とぴったりくっついて寝ている姿がかわいい

名前をつけたのはスタッフでない。スタジアムに企業名を入れる「命名権」ならぬ、「めぇ~めぇ~権」を抽選で獲得した利用客だ。
1万円をいただき名づけ親になってもらうもので、10匹に49人の応募があったという。苦しい状況を乗り切るため、スタッフが考えたアイデアだ。成長が気になって、名づけ親がたびたび足を運んでくれる効果も期待される。

まかいの牧場 観光部 新海貴志課長:
発案したらまずやってみて、失敗してもやってみる。まかいの牧場の社長の方針もあり、七転び八起きでみんなで取りかかっている。明るく頑張っているスタッフが近年、特に増えてきた。本当にここで働いて良かったという会社にすることが、この難局を乗り越えることになる

日々の節約とともに従業員のやる気とアイデアが、ピンチをチャンスに変えるカギになりそうだ。
(テレビ静岡)