教師の負担軽減や子供たちの選択肢の拡大などを目指し、中学校の部活動の運営を地域の民間団体に移行する取り組みが、全国で進められている。
静岡県掛川市には、全国に先駆けて活動を始めたNPO法人が運営する、いわゆる「地域部活」がある。楽しみながら、地域とともに発展していく部活動を目指す取り組みとは。

全国の先駆けとなった文化系「地域部活」…やりたいことを自由に選択

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7月9日、掛川市で開かれたイベントで、ダンスや演劇などを披露している中学生。学校の部活動を地域の民間団体が主体的に運営する、いわゆる「地域部活」に所属する生徒たちだ。

掛川市を拠点に活動している、「掛川未来創造部Palette(パレット)」。2018年、全国初の文化系「地域部活」として、掛川市のNPO法人によって創部された。

中学生「自分がやりたいことも楽しめる」
中学生「自分がやりたいことも楽しめる」

参加する生徒:
学校で気に入った部活が見つからなくて、パレットなら自分がやりたいことも楽しめると思って選んだ

パレットには現在、市内の中学校7校から48人が所属。平日の週2回、公共の施設で活動をしている。

ダンスチームは、スマホやタブレットで音楽を流し、メンバー同士が楽しみながら、練習に臨んでいた。演劇に取り組むチームもいれば、別の部屋ではタブレットに絵を描くチームの姿もある。

参加する生徒:
友達のオリジナルキャラクターのイラストを描いています。

他にも、IT・プログラミング制作チーム。
さらに舞台の袖にも、2人のメンバーの姿があった。2人は、舞台の演出などを手掛ける舞台監督。イベントに向け、進行表やMCの原稿作りに取り組んでいた。

中学生「良い発表会にするために毎回考える」
中学生「良い発表会にするために毎回考える」

参加する生徒:
知らなかった舞台裏の事も知れ、どうやったら良い発表会ができるか毎回考えて作っています

さまざまなジャンルから、自分がやりたいことを自由に選択して挑戦できることが、パレットの魅力でもある。

活動現場には指導者はおらず、スタッフは見守りに徹する中で、メンバーが自由に活動している。

中学生「他校の人と交流が増えた」
中学生「他校の人と交流が増えた」

参加する生徒:
学校と孤立してしまうのではという不安があったけど、他校の人との交流も増えたので良かったと思っています

中学生に主体性・地域とともに発展を

Pocca(静岡・掛川市)
Pocca(静岡・掛川市)

パレットを運営しているのが、掛川市にあるNPO法人「日本地域部活動文化部推進本部」通称Pocca(ポッカ)だ。運営や広報、イベントの開催など、費用や手間が掛かる業務のサポートを行っている。

Pocca・斉藤理事長「継続的に子供たちが文化・芸術活動に触れられたら」
Pocca・斉藤理事長「継続的に子供たちが文化・芸術活動に触れられたら」

Pocca・斉藤勇 理事長:
継続的に、子供たちがいろいろな文化活動や芸術活動に触れられるような場ができたらいいなというのが、地域部活を最初に考えたきっかけです

少子化による部活数の減少や、教師の長時間労働…。それらの問題を解決し、子供たちの選択肢を広げる為にも、スポーツ庁の有識者会議は中学校の運動部活について、“2023年度から段階的に学校から地域に移行するよう”提言している。

文化部活もまた地域への移行が全国的に進められる中、このNPO法人では、中学生に主体性を持たせ、地域とともに発展していくことを目指している。

Pocca・斉藤理事長「テーマや課題をみつけ協働でつくる」
Pocca・斉藤理事長「テーマや課題をみつけ協働でつくる」

Pocca・斉藤勇 理事長:
自分で課題やテーマを見つけて、まわりと協働して創っていく。この取り組みを、将来的な地域の発展とともに、自分たちの好きなこと・楽しいことでやっていく。
これが地域部活動の理想的な姿だと思います

パレットは2021年10月、掛川市で開催されたまちづくり芸術祭「かけがわ茶エンナーレ」のオープニングセレモニーに参加。見事にMCや運営を務めあげた。

部活動の課題解決の「新たな視点」…持続可能な部活動とは

この日は、日頃の活動を発表するイベントが開かれた。

第1部は、企画から運営まで、すべてパレットのメンバーが行う。舞台出演はもちろん、音響や照明、映像の送出や舞台監督に至るまで、それぞれが役割を持って臨んでいた。

オープニングを飾るのは、ダンス。
これまでの練習の成果を皆が発揮し、伸び伸びとしたパフォーマンスで会場を盛り上げた。

その後も、演劇やアート作品など、地域部活動の魅力をプレゼンしたメンバーたち。
客席から見えない場所でも、奮闘する裏方のメンバーの姿もあった。

子供たちが創り上げる舞台を、保護者や支援者、それに北海道から訪れた大学の研究者も見守っていた。

北海道教育大学・石森淳教授「課題解決の新たな視点に」
北海道教育大学・石森淳教授「課題解決の新たな視点に」

北海道教育大学 地域教育専攻・石森広美 准教授:
自分たちのやりたいことを、自分たちが決定したルールに従って行っていくことが非常におもしろい。
部活動の行き詰まりや課題を解決する、新たな視点をもたらしてくれると感じました

子供たちの未来を見据え、持続可能な部活動の構築をー。

地域部活には、指導者や財源、活動場所の確保など、さまざまな課題がある。時代やニーズに合わせた新しい部活動が、その課題解決にむけたひとつの鍵となりそうだ。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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