大震災から9年 特別な制服を着て中学校の入学式へ

この春、中学校に進学した宮城県石巻市の佐藤珠莉さん。津波で亡くなった姉への思いを胸に、新たな生活が始まった。

佐藤珠莉さん:
クラスの発表があるので、ドキドキしています

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宮城・石巻市に住む、佐藤珠莉さん(12)と母親の美香さん(45)。
この日は、珠莉さんの中学校の入学式。

着ていく制服は、特別な一着だ。

佐藤珠莉さん:
元は、もう卒業したお姉ちゃんの制服で。刺しゅうのところに、お姉ちゃんの名前と自分の名前が2つ並んでいる制服です

制服は元々、長女・愛梨さんのために仕立てたもの。
しかし愛梨さんは、袖を通すことはなかった。

当時3歳の珠莉さん かすかに残る姉との思い出…

愛梨さんは9年前の3月11日、幼稚園のバスに乗って家に帰る途中、津波と火災に巻き込まれ亡くなった。

愛梨さんは、当時6歳。
珠莉さんは、わずか3歳だった。

クリスマスには、「お姉ちゃんに会いたい」とサンタクロースにお願いした。

七夕の短冊には、「また愛梨お姉ちゃんと遊べますように。ぜったいに会えるよ。信じてね」と願いを込めた。

2018年に開かれた講演会で、珠莉さんはかすかに残っているという愛梨さんとの思い出を振り返った。

佐藤珠莉さん:
お姉ちゃんと一緒にいた時は、すごく仲が良かったね。一緒にごはんを食べて、一緒に遊んで、一緒に笑ったりしたね。ごはんはママが手作りしてくれたハンバーグがおいしかったね。これからも、ずっとずっと一緒にいてね。お姉ちゃんのこと大好きだよ。 珠莉より

突然いなくなった、大好きなお姉ちゃん。
珠莉さんはその現実を、少しずつ受け入れていた。

中学生になれなかった姉の制服 名前の刺繍は2人分

2017年、愛梨さんが生きていれば、中学生になる年。
母親の美香さんと珠莉さんは、愛梨さんのために中学校の制服を作った。

母 美香さん(当時):
本当はね、本人がいればね、いろいろと試せたんでしょうけど…。制服作ってあげられるとしたら、最初で最後だから…

そしてこの春、珠莉さんは12歳になった。

「お姉ちゃんの制服を着たい」と、愛梨さんの制服で中学校に通うことにした。
制服には、愛梨さんの名前の下に珠莉さんの名前が刺繍されている。

「いつもお姉ちゃんのそばにいたい」、珠莉さんの願いだ。

佐藤珠莉さん:
『一緒に新しい生活が始まるから、頑張ろう』って声を掛けました。きっと、『頑張ろうね』って、言ってくれると思います。少しドキドキと、わくわくが重なり合うような感じです。楽しくて友達と仲良くできるような生活を送りたいです。(姉に)普通の学校生活を見せてあげられたらいいなって思います

母 美香さん:
愛梨と珠莉の名前が入った、たぶん他の子にはないような制服なので。愛梨にもね、守ってもらいながら、見守ってもらいながら、生活が送れたらいいなと思っています

中学生になれなかった大好きなお姉ちゃんと一緒に…。
亡き姉への思いを胸に、珠莉さんの新たな生活が始まる。

(仙台放送)

仙台放送
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