新潟の夏に欠かせない野菜といえば、栽培面積・消費量ともに全国1位の枝豆。しかし、農家の高齢化が進んだことなどで収穫量が年々減少傾向にある。何十年経っても枝豆をおいしく食べられる環境を目指して、2022年6月に始まったばかりの取り組みを取材した。

「希望の値段を言えたことはない」枝豆栽培の現状

新潟県内有数の枝豆の産地、新潟市西区。この日、保苅農園で収穫されていたのは、枝豆の早生品種「初だるま」。

県民にとってはうれしい季節となったが、実は今、枝豆を取り巻く環境に異変が起きている。

保苅農園(新潟市西区)
保苅農園(新潟市西区)
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保苅農園 保苅孝志さん:
地域でも70代の方が多くなってきている。やめないにしても、規模を縮小している方が圧倒的に増えているんじゃないかと思う。金銭的にも労働に見合った給料かと言われると、なかなかそうでもない時が多い

鮮度が命の枝豆の収穫作業は日が昇る前から始まるが、収益性が低く、栽培をやめてしまう人も増えているという。

収益性の低い枝豆 栽培をやめてしまう人も
収益性の低い枝豆 栽培をやめてしまう人も

保苅農園 保苅孝志さん:
ある程度、量がまとまってくれば、どうしても価格は下げざるを得ないし、なかなか希望の値段を実際に言えたことはなかった

輸送コスト削減で枝豆農家を守る! 新たな取り組みスタート

この問題を解決するために立ち上がったのが、イベント会社を営む初瀬義一さん。6月から枝豆農家と飲食店を直接つなぐ取り組みを始めた。

取り組みを企画した 初瀬義一さん:
農家さんがどんどん少なくなっていって、今普通に売っている枝豆が、もしかしたら僕らがいい年になる頃には消えてしまうのではないか、という疑問を持ったところから始まった

農家を守るために、農家の希望する価格で枝豆を買い取る初瀬さん。しかし、そのままでは飲食店などへの販売価格も高くなってしまうため、考えたのが「輸送コストの削減」だ。

松尾和泉アナウンサー:
輸送といえば普通はトラックを思い浮かべますが、この取り組みでは新潟市中央区まで自転車で枝豆を運びます

新潟市西区から中央区まで自転車で輸送
新潟市西区から中央区まで自転車で輸送

枝豆を運ぶのは、自転車が趣味だというこちらの男性。

枝豆の輸送を担当する男性:
枝豆農家さんの実態を聞いて、ぜひ協力できることがあればと思って今回参加した

見た目は最近流行りの自転車を使った食事宅配サービスの配達員。朝採れたばかりの枝豆を週に3日、自転車で職場に向かうついでに飲食店に届ける。

枝豆の輸送を担当する男性:
運ぶだけなので、自転車の練習やトレーニングに比べたら、そこまできつくはない。楽しくやれている

新潟市中央区の飲食店に到着
新潟市中央区の飲食店に到着

取り組みを企画した 初瀬義一さん:
当日便で運輸を使おうとすると、かなりの値段になる。値段で言うと、確実に半分以下。コスト的にはもっと少ない

「存続に貢献したい」 飲食店にとっても大事な枝豆

輸送コストを抑えるだけでなく、排気ガスを出さないエコな自転車配送で無事に届けられた枝豆。午後5時、新潟市中央区の飲食店でお客さんに提供されていた。

若旦那 別邸(新潟市中央区)
若旦那 別邸(新潟市中央区)

お客さん:
「初物の枝豆が始まりました」っていうと、ワクワクしてまず頼んじゃう

お客さん:
甘くておいしくて、手が止まらなくなる

枝豆を注文したお客さん
枝豆を注文したお客さん

県産の旬の食材を多く扱うこの飲食店。特に枝豆は特別な存在で、朝採りのものの提供にこだわっている。

若旦那 別邸 高橋恭平マネージャー:
やはり新潟県民として、なければいけない夏の風物詩。飲食店で働いていく中で枝豆は必須

初瀬さんから仕入れる枝豆の価格は、スーパーマーケットなどとほぼ同じだということだが…。

若旦那 別邸 高橋恭平マネージャー:
それで農家さんが助かってくれるなら。将来の枝豆の存続にちょっとでも貢献できれば

取り組みを企画した 初瀬義一さん:
この取り組みのようなアクションが起きていったら、もっと大きな取り組みになるかもしれない。おいしい枝豆が新潟県でずっと食べられるような、そういう形で残っていってくれたら

新たに始まった、枝豆を未来に残すための取り組み。

保苅農園 保苅孝志さん:
飲食店で使ってもらって、朝採りをその日のうちに店に出してもらえるというメリットもある。希望の価格で依頼できたというのがすごく大きい

小さな動きの積み重ねが、農家を助ける持続可能な流通の仕組みの構築につながるかもしれない。

(NST新潟総合テレビ)

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NST新潟総合テレビ
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