新型コロナウイルスが感染拡大している中、岩手県は新型コロナウイルスの感染者が確認されていない(4月30日現在)。そんな岩手県の北部に位置する人口5500人ほどの九戸村(くのへむら)が制作した感染防止啓発ポスターが話題となっている。

それがこちらだ。

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鶏に扮したキャラクターが「1テノヒラ」「2テノコウ」「3ツメノアイダ」「4ユビノアイダ」「5オヤユビ」「6テクビ」との文言とともに、感染予防のための手洗いのやり方を説明している。「チキント手アライ」というシュールだが、ためになるポスターだ。

このポスターをデザインしたのはテレビドラマのグッズの制作などを手掛けている「サトウコウスケ」(@kosukesato)さん。


コロナ発症「0」を続ける岩手県の中で人口5,500人の九戸村のコロナ対策ポスター。
子供達の不安を解消しながら感染予防の徹底。クラスターへの厳重警戒。
緊急事態宣言。本気でやろう。ちきんやろう。

 

サトウコウスケさんがTwitterに投稿すると「この鷄達…なんかクセになる!」「素晴らしいポスターありがとうございます」など、話題となっている。

自然が美しい九戸村
自然が美しい九戸村

ユニークなポスターだが、それにしても、公式サイトに「小さくても活力と笑顔溢れるしあわせの郷」とある自然豊かで小さな村の九戸村がなぜ今回このようなポスターを作ろうと思ったのか?また、鶏に扮したキャラクターは何なのか?九戸村の担当者に話を聞いた。

鶏に扮したキャラクターは「キングオブチキン」と呼ばれている

ーーなぜ作ろうと思った?

厚生労働省が呼びかけるPOPを見かけていて、もっと地元向けに分かりやすく、目につくようなデザインにできないかを考えていました。


ーーポスター制作の流れを教えて

最少人数で写真撮影し、あとは自宅で作業しました。構想は全て頭の中でできていました。


ーー鶏に扮したキャラクターは何者?

2019年から地元をPRするために九戸村商工会青年部がつくったキャラクターです。名前はないのですが「キングオブチキン」「オブチキ」などと地元では呼ばれています。若鶏(ブロイラー)畜産日本トップクラスの生産量を誇るこの地域にふさわしいキャラクターとしてこのデザインを制作しました。
 

ーーこのキャラクターは普段もこういう形で活動している?

地元・社会性をもったテーマ・アートの三つを柱に2019年7月より活動しています。イラストからはじまったこのキャラクターは地域を盛り上げるデザインとして様々使われてきました。

半年程の活動でグッズ制作も多岐にわたります。活動の幅を広げるために今回着ぐるみ制作を行い、つい最近できたばかりです。このポスターが初仕事になります。


ーーなぜこのようなデザインにした?

本来であれば、地域をPRするものを制作しようと思っていましたが、世界的コロナ禍によって誘客するわけにはいかなくなりました。その中で自分たちができることは何か話し合った中で、頭の片隅にあった啓発ポスターを思い出しました。

インパクトのあるデザインとおもしろさ、キャッチコピーはいつも意識しています。ポージングをみればこのキャラクターがどういう性格なのかが想像できると思います。

「深夜に爆笑しながら撮影しました」

ーーポスター撮影時はどんな雰囲気か教えて?

深夜に爆笑しながら撮影していました。


ーー反響はあった?

つながりのあるプロの漫画家さんなどが広めてくれたこともあり、たくさんのコメントをいただきました。「一緒に頑張りましょう」というものが多かったです。あとはネットニュースをみてくれた地元の方から声をかけられます。


ーーこのポスターで村民の意識は変わったと思う?

周辺市町村の店舗で様々使っていただいているという情報をいただき、少しでも役に立てているのかと安心はしています。
 

あと2つのポスターもユニーク

実はこの他にも新型コロナウイルス感染防止啓発ポスターが2つ制作されているので紹介する。

1つ目のポスターには、「卵40個分のディスタンス」と書かれていて、会議室にいる2羽(?)の「キングオブチキン」の間に卵が40個置かれている。岩手県九戸村産・鶏卵Lサイズ50ミリ×40個分の2メートルの距離で、感染防止のためのソーシャルディスタンスをアピールするものだ。


2つ目のポスターには、「NO3密」と大きく書かれていて、その下には「×密閉」「×密集」「×密接」という文字の背景に密集する「キングオブチキン」が描かれていて、「3密」を避けるよう訴えている。いずれもセンスある仕上がりで、メッセージもしっかり伝わる。

岩手県内でなぜ感染者がゼロだと思う?

ーーこれらのポスターを通じて伝えたかったことを教えて?

自分ができることを全力でやる。そのひとつが今回の作品だったと思います。これからも作品を通して日本国内で一緒にこの難局をのりきりましょうとメッセージを送りたいと思います。


ーー九戸村ではどんな感染防止策をとっている?

手洗いうがい、ドアノブ等の消毒、3密をさける注意、県外からの来県者には2週間家で自粛する呼びかけなどを行っています。


ーーなぜ岩手県内ではゼロだと思う?

私たちの意識としては潜在的感染者はいるという想定で、都心部と同じような考えで行動しています。休日は外出しませんし、接触は極力避けるようにしています。それが結果的に感染者ゼロに繋がったのではないでしょうか。
 

担当者は「岩手県の田舎でお金もない、人もいない。それでも工夫とアイディアでクオリティの高いものを生み出したいと常に思っています。」と語ってくれた。

感染防止のための自粛ムードでなにかと息苦しいが、こうしたユニークな試みにふれて、ふっと力を抜く時間もいま必要なのかもしれない。
 

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プライムオンライン編集部
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