動画「ウイルスの次にやってくるもの」が話題

新型コロナウイルスの感染が拡大する中、医療従事者や感染者への偏見や差別が問題となっている。

こうした中、日本赤十字社が4月21日、「人と人が傷つけあう状況はウイルスよりも恐ろしい」と警鐘を鳴らす動画を公開。Youtubeで130万回以上再生されている。(4月27日現在)

動画は、温かみを感じる“絵本アニメーション”のかたちで描かれていて、男性が手を洗うシーンから始まる。

「きちんと手を洗うだけで感染する確率はぐんと下がる」「でも心の中にひそんでいて、流れていかないものがある」といった言葉に合わせて、“黒いモヤモヤ”が現れる。

提供:日本赤十字社
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そして、“黒いモヤモヤ”は暗いニュースや間違った情報を食べてどんどん育ち、他の人を傷つけ始める。

(提供:日本赤十字社)
(提供:日本赤十字社)

「ウイルスが広まったのはあいつのせいだ!」
「世界がこうなったのはあいつのせいだ!」


人々が互いに言い争う内、自分があんな風に言われたらどうしようと、具合が悪くても元気なふりをするようになり、誰が感染してるか分からなくなる。こうしてウイルスがどんどん広がっていく。

(提供:日本赤十字社)
(提供:日本赤十字社)

そんなとき、家で鏡を見ると、「そこに、もう、あなたは、いない」
そいつの名前は「恐怖」
“黒いモヤモヤ”の正体は「恐怖」だったのだ。

(提供:日本赤十字社)
(提供:日本赤十字社)


新型コロナウイルスの感染拡大から生じる「恐怖」を、「ウイルスよりも恐ろしいもの」として描き、体だけでなく心を守るように訴えかけている。

さらに動画の後半には、「恐怖に飲み込まれる前にできること」として、以下のようなものを提案している。

「ときにはパソコンやスマホを消して、暗いニュースばかりを見すぎるのはやめよう。不確かな情報を、うのみにしないで、立ち止まって考えよう」

「非難や差別の根っこに、自分の過剰な防衛本能があることに気づこう。冷静に、客観的に、恐怖を知り、見つめれば、恐怖はうすれていくはずだ」

「恐怖が苦手なものは、笑顔と日常だ。家族や友人と電話して、笑おう。いつものように、きちんと食べて、眠ろう。恐怖は逃げていくだろう」

(提供:日本赤十字社)
(提供:日本赤十字社)

そして最後には「恐怖は、誰の心の中にもいる」「だから励ましあおう。応援しあおう」「人は団結すれば、恐怖よりも強く、賢い」といったメッセージを投げかけている。

(提供:日本赤十字社)
(提供:日本赤十字社)

この動画に対し、Twitterでは「ぜひ広まってほしい」「ウイルス並に拡散させた方がいい」など、共感する声が相次いでいる。

どのような思いから、このような動画を制作、そしてアップしたのか?

日本赤十字社の広報担当者に話を聞いた。

不安や差別が感染拡大につながる…絵本アニメでわかりやすく

――どのような思いがあって、このような動画、しかも絵本アニメというかたちでアップしたのでしょう?

新型コロナウイルスは、「体の感染症」、「心の感染症」、「社会の感染症」という“3つの顔”を持っており、これらが“負のスパイラル”としてつながることで、さらなる感染の拡大につながっていくことを伝えるため、日本赤十字社ではこの負のスパイラルを知り、断ち切るためのガイドをホームページ上で公開しておりました。

(提供:日本赤十字社)
(提供:日本赤十字社)

それをさらに分かりやすく伝えることを考え、今回の絵本アニメーションでの表現を企画しました。

不安や差別が、自らの感染を隠すことにつながり、感染拡大を引き起こすと考えられているため、大切なことを知っていただき、さらなる感染拡大の防止に寄与したいと考えております。

また、動画を視聴いただいたみなさまに「人が団結し、励ましあい、応援し合うことにより、心の中にある『恐怖』を乗り越えることができる」ということ、そして、「ひとりひとりがそれぞれのいる場所で、今、自分にできることに取り組んでいこう」ということが伝われば、と思っております。

(【関連記事】日本赤十字社が「新型コロナの3つの顔」をスライド解説…差別や不安から“負のスパイラル”に

――動画に対しては、どのような反響、感想が寄せられていますか?

公式Twitter、Facebookでの投稿が多くの方にリツイート、シェアという形で、拡散しております。 
また、SNS上では以下のようなご意見を頂戴しております。

・大事なことを的確にまとめられており、分かりやすく、伝わりやすい
・子供たちに見せます
・みんなに見てもらいたい
・自分がどんなに不安を抱えているか、よく分かる
・客観的に落ち着いて、みんなで励ましながら、乗り越えましょう

新型コロナウイルス感染拡大の防止には全員の協力が必要だ。
YouTubeの動画には英語の字幕も設定していて、日本赤十字社の担当者は「世界中の皆様へのさらなる拡散を期待している」と話していた。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。