5月1日からタイ旅行がさらに容易に

日本ではゴールデンウィークまっただ中の5月1日、タイ政府は新型コロナウイルス対策の入国制限を緩和した。大きな緩和ポイントは、ワクチンを2回以上接種していれば、入国時のPCR検査と待機が免除されたことだ。未接種の人でも、渡航前の検査で陰性を証明できれば隔離は免除される。この緩和により日本人は海外旅行先にタイを選びやすくなった。

タイ・バンコク(2022年5月1日撮影)
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2020年3月に日本からタイに渡航した私(ワクチン接種済)の場合、夕方にスワンナプーム国際空港に到着した後、空港から車両でバンコク中心部にあるホテルへ移動し、その道中に設置された検査場でドライブスルー型のPCR検査を受けた。「陰性」と結果が伝えられ、ホテルから出たのは翌朝7時。5月以降はこうした手続きを踏む必要もなく、空港に着いたらすぐに観光でき、旅行が容易になった形だ。

人気観光地でも日本人の姿はまばら

規制が緩和された5月1日の午前9時、人気観光地の「ワット・ポー」に行ってみた。

ここには全長46m、高さ15mの涅槃像が祀られていて、装飾が施された柱の間から黄金に輝く巨大な顔がこちらをのぞき込む。

ワット・ポー(2022年5月1日撮影)

ワット・ポーには海外からの観光客の姿が戻ってきている。しかし日本から観光に訪れた人の姿はわずかだった。

前日の4月30日午前5時にタイに到着したという健大さん(31)は、「欧米の人の姿はよく見るけど、日本人の姿はあまり見ない」と話す。入国規制緩和の知らせを受けた時にはすでにフライトを押さえていたため、そのまま渡航した。

「コロナ渦になって以来の海外旅行。ようやくという感じ。ゴールデンウィークが来たので、勢いで来ました」。気ままな一人旅、久々の海外旅行だ。

一人でタイを訪れた健大さん(31) 三輪タクシー「トゥクトゥク」の車内にて

ともに船でチャオプラヤ川を渡り、三島由紀夫の小説『暁の寺』にも描かれた「ワット・アルン」へ向かうと、美しく壮大な仏塔が見えてくる。

船から見えたワット・アルンの仏塔(2022年5月1日撮影)
ワット・アルン(2022年5月1日撮影)

タイでは、4月から5月にかけての今が最も暑い時期だ。バンコクでは40度を越える日もある。ワット・アルンの大仏塔には実際に上ることもできるが、階段はとても急だ。健大さんは「日本の夏もこれくらい暑い気がするけど、いまの日本は寒い日もあるので、寒暖の差がキツいですね。それでも写真ではこの壮大さは伝わらない。来て良かった」と話した。

その後、健大さんは、大学時代の仲間で現地に駐在している大西さんと合流し、ともにタイ料理に舌鼓を打った。

健大さんと大西さん バンコク・プロンポン駅近くのレストランにて撮影

大西さんは2021年にバンコクに赴任した。コロナ渦のなか実際に訪ねてきてくれた友人は健大さんが初めてだという。健大さんに、大西さんと会いたい気持ちが強かったのか尋ねると「それはもちろん」と答えた。大西さんは「うそやろ」といいながらも嬉しそうに頬をほころばせていた。

「料理は美味しいものもあれば、合わないものも……でもそれが良い。海外に来たぞって感じで」。健大さんの旅行はまだ始まったばかりだ。

健大さんと大西さん バンコク・プロンポン駅近くのレストランにて撮影

ワット・ポーの周辺は、コロナ前であれば多くの観光客で賑わっていた地域だ。コロナ前であれば、高温多湿のなか忙しく走り回っていた三輪タクシー「トゥクトゥク」の運転手のなかには、車内で寝そべっている人もいる。旅行者が増えたら収入は戻ってくる、そろそろその時期では?と話を聞いてみると、運転手は「希望は持ちたくはない。もし期待した通りにならなかったら不安になるから。日本人が来てくれればもちろん嬉しい」と先行きへの不安をにじませた。

日本はゴールデンウィーク期間中だが、バンコクの街に日本人観光客の姿は多くない。街の人に聞くと、ほかの国からの人々の姿もコロナ前の水準には到底戻っていないという。あまり人のいない観光地は寂しいものだが、逆にのんびりと観光がしやすい状況ともいえる。暑さには注意が必要だが、ココナッツジュースや各種フルーツのスムージーなどが街中でよく売られているので試していただくのもオススメだ。

ココナッツジュース

「予算が上がったな…」円安の影響も

ワット・ポー周辺で出会った光田さん一家は、妻の倫子さんがベトナムで駐在生活を送っていて、日本で暮らす夫の光弘さん、娘の夏実ちゃん、息子の啓悟くんと、バンコクで落ち合ったのだという。

光田さん一家(2022年5月1日撮影)

一家のタイ入国は4月29日と30日。およそ半年ぶりという家族団らんを楽しんでいた。一方で、円安による影響は厳しいという。「タイバーツは3円から3.5円くらいのイメージだったので、5000バーツを替えても、2万円はいかないと思っていた。けれど実際は2万1000円。驚きました。予算が上がったな……」と倫子さんは話す。一家はドルを持参し、なるべくそれを両替するように努めているという。

マンゴーを売る路面店 4~5月はマンゴーが旬を迎え日本より安価で購入できる

出入国の際に必要なことは?

観光が容易になったとはいえ、2022年5月現在、日本からタイに向かう飛行機に乗る前にやるべきことはまだある。入国申請システム「タイランドパス」に、ホテルの事前予約証明書とワクチン接種証明書、海外旅行医療保険の確認書(補償額は1万ドル以上と規定)などをアップロードする必要がある。

タイの英字紙「バンコクポスト」でタイ観光産業協会は、このタイランドパスにより海外旅行客獲得に支障が出ているとして、6月1日から撤廃すべきだと主張。夏休みシーズンの前に実現すれば、海外からのツアー客200万人の上乗せが見込まれるという。タイのプラユット首相はこれまでコロナ対策と経済のバランスをとるために最善を尽くすと語ってきたが、先行きに注目が集まる。また日本に帰国する前には、タイ出国前72時間以内の検査証明書も必要だ。

目下、タイの1日当たりの新規感染者数は2万人前後で推移していて、公共の場所でのマスク着用は義務化されている。その一方でタイ政府は2022年4月にはタイへの到着前72時間以内のPCR検査義務を廃止し、規制緩和を段階的に進めてきた。バンコクでは、1月から4月までの間、飲食店での酒の提供は午後11時までだったが、5月1日から深夜0時までに延長された。こうした緩和の狙いは、外国人観光客の受け入れを促進し、観光産業を立て直すことだ。

コロナ渦以前、人口6618万人のタイには例年、年間4000万人近くが訪れていた。人口1億2622万人の日本を訪れた外国人旅行客3188万人(2019年・観光庁)と比べてもはるかに多い。豊かな観光資源をもつタイは実に国民所得の約20%を観光業から得ていて、観光客数の低調は経済回復が遅れる要因のひとつとなっている。

観光大国復活と感染対策 両立の難しさ

緩和の流れのなか、感染対策の難しさを垣間見た一幕もあった。それは4月12日、「水かけ祭り」として知られるタイの正月「ソンクラーン」が始まった日のことだった。

バンコクのカオサン通り(2022年4月12日午後8時頃撮影)

水をかけあい、新年を祝うのはこの国の恒例行事で、感染拡大前は5万人もの人が集まっていたとされるが、2020年、2021年に続き、2022年も「水かけ」は禁止となった。しかし、外国人観光客が集まるバンコクの「カオサン通り」には、水鉄砲などで水をかけあう大勢の人々の姿があった。

「お客さんに注意してください。水かけは禁止です。水かけは禁止です」「ソーシャルディスタンスをとってください。感染対策のためです」。地元自治体バンコク都の行政警察官が通りにある店の従業員に拡声器を使って注意を呼びかけるが、人々は言うことを聞かない。

タイ政府はソンクラーン前から注意を呼びかけてきた。タイ政府・新型コロナウイルス状況管理センター(CCSA)の報道官は「路上で水をかけたり、泡パーティーをしたりしてはいけません」と警告を続けたが、そんなことはまったく無視。そして午後8時、通りはさらなる盛り上がりをみせた。マスクをしている人の姿もまばらで、ルール無視の大宴会の様相になった。

一方で、コロナ渦の前は水かけを楽しむ大勢の地元の人で賑わっていたほかの通りは閑散としていた。海外からの観光客で賑わうエリアだけでルールが守られていなかった形だ。

バンコクのシーロム通り(4月12日午後10時頃撮影)
コロナ前のソンクラーンには歩行者天国となり大勢の人で賑わったが、この日は閑散としていた

カオサン通りの状況などを踏まえ、タイ警察は「逮捕もあり得る」と警告し、警察官を配備。その結果、ソンクラーン初日の狂騒は翌日以降なくなった。

観光大国・タイ。経済再生のための規制緩和を進める一方で、それによるリスクとも向き合わなければならない難しい局面を迎えている。

【執筆:FNNバンコク支局長 百武弘一朗】

百武弘一朗
百武弘一朗

FNNバンコク支局長 1986年11月生まれ。國學院大學久我山高校、立命館大学卒。社会部(警視庁、司法、宮内庁、麻取部など)、報道番組(ディレクター)、を経て現職。

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