2018年に行われた調査によると、日本の空き家率は13.6%で、10軒に1軒が空き家だ。
長野・諏訪市に、解体する住宅から柱や床板などの古い木材を引き取り、家具などを作っているリサイクルショップがある。この店を営む男性は、捨てられる古材に新たな命を吹き込んでいる。

古材ならではの表情を残したまま…古材に新たな命を吹き込む男性

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長野・諏訪市にある「リビルディングセンター ジャパン」、略して「リビセン」には、全国から人が集まる。

店内に並ぶのは、解体した建物や空き家から引き取った古い器や、古い家具、なつかしい暮らしの道具など。そして、柱や床板などに使われていた“古材”もある。

リビルディングセンター ジャパン代表の東野唯史さん:
床板に使われていたような板が多い。全部ナンバリングして、そのお宅がどういう家だったか、どういう人が住んでいたか、わかるようにしています

店の代表・東野唯史(あずのただふみ)さんは、「古材は“宝の山”」と話す。

東野唯史さん:
(松の木に残る)“ちょうな”という道具の痕、今こんな道具使わない。昔の人の手作業の痕。機械化されていない時代じゃないと出てこない表情

他にも、栗の板に残る線は、“おがのこ”という大きなのこぎりで丸太から板にした痕だという。東野さんは、このような古材ならではの表情を残したまま、家具などに仕上げている。

名古屋市立大学の芸術工学部で建築デザインを学んだ東野さんは、空間デザイナーとして店舗や住宅の設計・改装を手がける中で、あることに気付いた。

東野唯史さん:
空き家がすごく多くて、どんどん壊されていく。これが日本全国で起きていると思うと、やばいぞと…。何とか空き家を活用できる方法ないかと思っていたときに、ポートランドのリビルディングセンターに出会って…

“DIYの聖地”と呼ばれる、アメリカ・ポートランドの「リビルディングセンター」。この倉庫で売られていたのは、古い木材に窓、建具、洗面台、ドアノブなど…。ポートランドには、市民が古材を大切にする“文化”があった。

ポートランドでは、2016年に制定された条例で、1916年以前に建てられた建物を重機で取り壊すことが禁止された。

東野唯史さん:
人の手で一個一個ばらしなさいみたいな…。まだ使えるのに捨てられている現状から、リユースすることで環境負荷を下げる。もう一つは、家主さんの気持ちとか建物のストーリーとかをそのまま引き継ぐ

築100年の家から救い出される立派な木材…古材とともに思いをつなぐ

この日、5代に渡って住み続けた築100年の家が解体されることになった。リビセンでは、諏訪市から車で1時間以内の場所であれば、古材や古道具の引き取り“レスキュー”を行っている。

家主:
おそらく明治初期に建てた建物。先祖の思い出は詰まっておりますので、そのまま産業廃棄物にするのはちょっと耐えられないなと

50年以上前の日本家屋は、丸太から切り出した頑丈な“無垢材”が使われている。手入れをすれば、何百年も使うことができる。床の間にも、立派な木が使われていた。

リビセンのスタッフ:
多分ケヤキ。カウンター席の天板とか、テーブルとして使ってもらったり、家具として使いやすい感じ

家主の親族:
また次の方に使っていただいて、再利用される。この木が生きていくのが嬉しい。すてきな木材をいっぱい使って、この家が建っていたとは驚きました。ご先祖様へ「ありがとうございました」と伝えたい

リビセンのスタッフ:
今回分で2万9000円です

家主:
そんなにもらえた。ありがとうございました。やっぱり胸に迫るものがありましたね。良かったです

100年の歴史と家族の思い出…。あふれる思いを、どこかの誰かにつなげる。

自分でやれることは自分で…依頼主と一緒に古材使ってリノベーション

この日、名古屋市中区にあるカフェ「アーリーバーズブレックファスト」では、東野さんがリノベーションの作業をしていた。「自分でやれることは自分でやる」「依頼主と一緒に作る」のがリビセン流だ。

東野唯史さん:
予算も減らせるし、自分の店を一緒に自分で仕上げるのは、その店がより好きになる

カフェの店主:
真新しいもので作るよりも、使ってきたものを使う方が、店にとっても一緒に歩んでいくみたいなイメージがあるのでいい

カウンターは、昭和の時代に住宅建材として流行ったラワン材という木を使って作られた。

東野唯史さん:
これは、長野県諏訪の近くでりんご箱を作るために用意されていた木

リンゴ箱はベンチに。大きなレッドシダーの一枚板は、窓際のテーブルになった。

東野唯史さん:
古材って、古い傷がついた木って印象が多いけど、このお店に関しては、ほとんど新品の木と変わらないような感じの使い方をしているので、かわいい感じにしたいときも使えると気付いてもらえるといいかな

古いものを生かしながら暮らす…古材が宝の山に生まれ変わる社会目指す

古材の魅力を知ってもらうために、リビセンでは初心者向けのワークショップを開いている。この日は、古材を繋ぎ合わせてテーブルを作っていた。

参加した女性A:
捨てられるものを、また生活の中に取り込める。楽しかったし、環境にもいいことをしたなと

女性B:
どんな生活をしていた人が使っていたのかな、と想像しながら使うのは楽しい

古いものを切り捨てて、新しいものは使い捨て。そんな時代はもう終わりだ。

東野唯史さん:
ウッドショックで木の値段がすごい上がっている。古材は全然関係なくて、余っているような状態。お金を払えば買える時代が終わって、自分たちで生産するとか、あるものを生かす暮らしをしていく時代が来る

古い木材から新たな価値を作る…。東野さんは、古材に新たな命を吹き込んでいく。

(東海テレビ)

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