自由気ままな子どもたちに、いつも親はハラハラドキドキ、時にもやもや。
「笑った!困った!」…でもウチの子はどうしてこんなことするんだろう。その行動の裏には、知られざる“子どものココロ”が隠されているはず。
今回、元気なココロちゃんとマナブくんきょうだいの育児に追われる小木(こぎ)さん一家に寄せられたのは、こんなエピソード。
「お友達のおうちで遊んでいて、まだまだ遊びたい我が子…『ママがまだ帰らなくていいって言ってたよ』『ママが今日は泊まってもいいって言ってた!』と言うけれど、ママはそんなこと一度も言ってません!」
まだまだ遊び足りない!そんな時にストレートに「まだ遊ぶ!」と言ってくれるならまだいいのだけれど、「ママがまだ帰らなくていいって言ってたよ」とウソをついちゃう我が子。
ママ本人に確認すればすぐにわかっちゃう“バレバレ”なウソはちょっとかわいいのだけれど…ウソをついちゃいけません!と叱る前に、そもそも子どもたちってどうしてこんな小さなウソをついちゃうの?
育児に役立つ“子育て心理学”を発信している公認心理師・佐藤めぐみさんにお話を聞いた。
小さなウソは「とっさに出るもの」
――子どもたちが「小さなウソ」をついちゃう理由って?
こういうこと、ありますね。本人は相手をだまそうとか、悪意があって発言しているわけではなく、自分がやりたいことをただ実現させたいがために、このようなウソを言ってしまっています。すぐにばれてしまうような内容が多いのは、まだ様々な角度を踏まえた見方ができないからです。
つまり「○○ちゃんのママが電話で確認したらばれちゃうかな」というようなことは考えていないわけで、なんとかして長居をするためにとっさに思いついた短絡的なウソを言ってしまうのです。
小さい頃のウソは圧倒的に自己防衛に用いられることが多く、
(1)自分がいい思いをするため
(2)悪い思いをしなくて済むため
この2つのパターンが多いです。(1)が今回のようなパターンで、(2)はパパやママに叱られるような場面で出やすくなります。
――そもそも子どもがウソをつくのを学ぶのって、いつから・どうやって?
もし“ウソ=事実ではないこと”とするならば、たとえば2歳の子が「(ぬいぐるみのクマの)プーちゃんがピザ食べたいって言ってる」というのもウソになってしまいます。なぜなら、ぬいぐるみは話をしないからです。でもそれは事実ではなくとも、親がウソをついているとは感じませんし、むしろ可愛いなぁと思うものです。
子育て中のパパやママが気にしてしまうウソは、“事実ではないこと”という定義に加え、言われるとショックだったり、“ずるい”と感じる類のものが多いようで、年齢的には、3歳くらいから出始め、幼稚園以降に気にされる方が増える印象です。
日頃の育児相談などで見聞きする、親御さんが気になってしまうウソのパターンは、
・欲しいものを手に入れたい:「まだ1個も食べていない!」
・叱られたくない:「自分はやってない」
・できればやらずに済ませたい:「もうやったよ」
このようなものが多いです。
初回は自分を守るためにとっさに出るウソですが、もしそのおかげでうまく行った場合(例:怒られなくて済んだ、お菓子を追加で食べられた)、その後も繰り返されるようになるので、学習される部分も大きいと言えるでしょう。
――子どもたちの小さいウソ、パパママはどうしたらいい?
今回のような自分の思いを押し通そうとするときに出るウソは、それが実際には叶わないことで学んでいきます。ウソをついても通用しなかったということが経験値として積まれ、意味がないものだとだんだん理解できるようになるわけです。
親が工夫できるのは、叱る場面で出がちなウソの方でしょう。先述の通り、子どものウソは自己防衛が圧倒的なので、叱る場面で親が子どもを責めると、ウソで逃げようとする確率を高めてしまいます。
一番多いのが「これ、誰がやったの!!」のような責任追及です。この聞き方をされて、「はい、ボクがやりました。ごめんなさい」と言える子はおそらくおらず、なぜ正直に言えないかと言えば「これ、誰がやったの!!」の段階で、すでにパパやママが怖くなっているからです。
そうすると、その子の自己防衛バリアが瞬時に張られてしまい、自分を守るために「ボク(ワタシ)じゃない」とウソが出てしまいがちになるのです。親は子どものウソに敏感ですから、そこでアンテナが反応し「○○した挙句、ウソまでついて、ホント許せない!」と余計に強く叱ってしまうことになりかねません。
お家の中で、壁にいたずら書きがしてあったとか、床が水浸しになっているとか、このような事態が起こったら、親が見れば誰がやったのかは明らかで、わざわざ誰がやったかを追及するまでもないことがほとんどです。叱る場面で親が子どものウソを誘発してしまっていることはとてもよくあるので、そこを工夫するとウソの数は確実に減るはずです。つまり、子どもがウソでしか逃げられないような質問は避けるということですね。
それよりは、いたずら書きや床の水を一緒に掃除するなど、行動で「ダメだよ」を学ばせる方が賢明な対処と言えるでしょう。
子どもたちがついちゃう「小さなウソ」は、まだそれが「ママに確認されたらウソだってバレちゃうかも…」など、いろいろな角度から自分のついたウソを見ることができず、とっさに出てしまうもの。
でも、もっと楽しいことをしていたい、叱られたくない…そんなちょっと“ずるい”気持ちから出たウソは、一度成功してしまうと学習してしまうもの。
「ママがまだ遊んでいいって言ってたよ!」と言われて「そんなこと言ってないよ~」と思わず笑ってしまいそうになってもグッと我慢。きちんと予定通りの時間で遊びを切り上げて、ウソをついて得をしちゃった!という“成功体験”をさせないようにするのが、子どもたちに小さなウソをつかせない一歩になるはずだ。
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※改めて取材をさせて頂く場合もございます。
(解説:佐藤めぐみ/公認心理師)
英・レスター大学大学院修士号取得・オランダ心理学会認定心理士。欧米で学んだ心理学を日本の育児で取り入れやすい形にしたポジ育メソッドを考案。アメブロの「ちょっと子育て心理学」(http://ameblo.jp/la-camomille/)にて発信中。
(漫画:さいとうひさし)