「生活の質が大きく損なわれる」長期にわたる場合も
決して軽く見てはいけない、新型コロナウイルスの後遺症。新潟県医師会広報委員会の協力のもと、医師に詳しく聞いた。

新型コロナ後遺症外来がある、新潟県上越市の新潟労災病院。

2021年10月に開設して以降、院長の入江誠治医師は10代~80代の27人を診察してきた。
新潟労災病院 入江誠治 院長:
実際に色々な症状を訴える患者は本当に苦しんでいる。どういった後遺症でも、一つあると生活の質が大きく損なわれてしまう。

新型コロナウイルス患者は、回復後も強い倦怠感や記憶障害、嗅覚・味覚障害、息切れ、集中力の低下、脱毛などといった後遺症に長期間にわたって苦しんでいる実態が明らかになった。

新潟労災病院 入江誠治 院長:
男性不妊の原因になるかもしれないと心配している専門家が多い。
杉山萌奈アナウンサー:
オミクロン株は軽症・無症状が多いということで、風邪やインフルエンザと同等レベルで考える人も多いですよね。
新潟労災病院 入江誠治 院長:
決定的な違いは“重い症状で悩む後遺症のおそれがある”こと。
記憶障害訴えるも検査は“異常なし” 周囲に理解されず退職も

急性期の症状が軽くても、後遺症にならないとは限らない。
新潟労災病院 入江誠治 院長:
若年の男性が全身倦怠感と記憶障害を訴えて受診した。仕事から帰るとき、どこに車を停めたか思い出せない。同僚や上司の名前もすぐに思い出せないと言っていた。
しかし、入江院長のもとを受診したこの男性は、脳のMRIに異常はなかった。

新型コロナ後遺症は、症状があってもMRIやレントゲンで異常が分かるケースが少なく、“気のせい”だと思われがちだという。半年たっても症状が残る人の割合も多いため、長く仕事に行けず退職にまで追い込まれたという報告もある。

入江医師は「学校・職場の理解と協力産業医の正しい知識、そして行政の支援が不可欠」だと指摘する。
新潟労災病院 入江誠治 院長:
社会全体にとっても労働力が失われたり、未来の労働者である若者の勉学に支障が出るとなると、急性期のコロナ感染症より、後遺症のほうが社会全体に与えるインパクトが大きい。
増加が予想される後遺症患者 “なりやすいのは女性”
感染から1~2カ月後に症状が出るとされる後遺症。今後、オミクロン株の後遺症患者が増加していくことが予想される。

後遺症になりやすいのは、明らかに女性であることが分かってきたという。
新潟労災病院 入江誠治 院長:
女性がなりやすいというのには、女性ホルモンが影響していると言われている。「重症化して後遺症が出た方」と「女性で自宅療養し、初期症状が比較的軽くて後遺症が出てくる方」と、大きく分けて2つタイプがある。

軽々しく扱う病気ではない 後遺症予防にもワクチン接種を

新潟労災病院では詳細な問診と全身の診察を行った上で、対症療法のほかにも2種類の抗ヒスタミン剤を用いるなどの新しい治療も試みているが、何よりも重要なのが、後遺症を発症させないことだ。

このため、入江医師は3回目のワクチンを早めに接種するよう勧めている。

新潟労災病院 入江誠治 院長:
ワクチンを打っていれば、後遺症のおそれを半分に減らせる(報告もある)。未知の部分が残されたウイルスなので、決して軽々しく扱う病気ではないことは確か。
(NST新潟総合テレビ)