ものを作る上で必ず発生するゴミ。
衣服など繊維製品を作る場合、生地の約15%の裁断ゴミが出ると言われていて、その余った生地の活用方法が課題となっている。
カバン製作から持続可能な社会を目指す、新潟市の企業の取り組みを取材した。
名前は“ゴミのない世界” 環境に優しいカバン

新潟市中央区の新潟伊勢丹。
松尾和泉アナウンサー:
新潟県内企業が作っている食品や雑貨などが並ぶ売り場。この場所で売られているのが、色鮮やかなカバン。実はとても環境に優しいものなのです
青や濃いピンクなどの色合い、そしてかわいらしい動物の刺繍が目を引く、このカバンの名前は『WWWBAG』(World Without Waste=ゴミの無い世界)。

WWWBAGは新潟市東区にあるスパンギャルドが製作している。
スパンギャルド 残間健太郎 取締役:
工場からものすごくいっぱいゴミが出ていた。極力、ゴミを出さない方法はないかと色々試行錯誤して、新しい縫製方法・製造方法を考えついた
ゴミが一切出ないエコなカバンとは…?

一見、普通のカバンと変わらないように見えるが…
スパンギャルド 白石香里 取締役:
ゴミが一切出ない裁断方法で作られている。

カバンを作る際、通常は型紙に合わせて生地に線を引いて切っていくため、細かい“はぎれ”が出る。
しかし、WWWBAGで使用するのは1枚の布。
一直線にハサミを入れて生地を切るだけなので、はぎれが出ないのだ。

計算して裁断された生地に、取っ手や刺繍を入れたものを折り紙のように折りたたみ、ミシンで生地の脇を縫っていくと、わずか数分でWWWBAGが完成した。
はぎれを出さない縫製方法で大幅にゴミ削減

松尾和泉アナウンサー:
実際に、廃棄されるゴミというのは減ったのでしょうか?
スパンギャルド 残間健太郎 取締役:
裁断ゴミは年々減ってきている。うちが他社様の商品を作るときも、「その技術で作りたい」という方がかなり増えているので、なおさら前よりは減っている
スパンギャルドでは、この方法を取り入れたことで大幅にゴミを減らすことに成功。

こうした環境に配慮された取り組みが注目され、WWWBAGは新潟伊勢丹を始め、全国の百貨店の催事で販売されている。
新潟伊勢丹 NIIGATA越品バイヤー 長谷川雅史さん:
ゴミが出ないよう計算して作ったバッグというところ、より深く関心を持った中では共感をいただいている
評判は上々。しかし、まだまだ課題も。
さらなるゴミ削減へ… 福祉施設と連携

スパンギャルド 白石香里 取締役:
(他にも)色々かばんを作っているが、どうしてもはぎれが出てしまう
そこで、このはぎれを生かすために…

松尾和泉アナウンサー:
障害者の就労支援を行っている施設と連携して、新たな商品を作っています
新発田市の福祉事業所・マザーアースで利用者が黙々と進めていたのは、布を一定の大きさに切る作業。
スパンギャルド 残間健太郎 取締役:
パッチワークのバッグには、どうしても出てしまうはぎれの再利用ができるし、ゴミも減らせるので『パッチワークを切ってください』と依頼した
“ゴミ削減+施設の収益UP” パッチワークバッグで障害者雇用

利用者が一定の大きさに揃えたはぎれを利用して誕生したのが、環境に優しいもう一つのかばん『パッチワークバッグ』。
マザーアースと取り組むことで、障害者の雇用の創出にもつながっている。
マザーアース 秦徹 代表取締役:
ゴミが削減できて、障害者の福祉機関としても収益が上がるというのは、非常に色んな意味で良いこと

つまみ細工やアクセサリーの製作などで収益を上げているマザーアース。
残間さんは、その作品のクオリティーの高さに衝撃を受けたという。
スパンギャルド 残間健太郎 取締役:
現地に見に行った時、『僕よりすごいことをしている』というイメージに変わって、何か一緒に取り組んでみたいなと
“色々な能力持った人が活躍する社会に” カバン製作から考えるSDGs

こうした思いから共に連携し約1年。
今後はカバン作りにも挑戦してもらうなど、利用者の活躍の場を広げていく考えだ。
マザーアース 秦徹 代表取締役:
なかなか障害福祉というと、できないことに注目してしまうが、そういう人の中でもできることや得意なことはそれぞれある。色々な能力を持った人が活躍していける社会になれば良い

スパンギャルド 残間健太郎 取締役:
新潟だけでなく、全国の就労支援施設が困っている。困っている人たちが楽しく生活できるように、もっと日が当たってほしいなと思っている
新潟発のエコなカバンから広がる新たな取り組みが、誰もが活躍できる社会を少しずつ作り出している。
(NST新潟総合テレビ)