シリーズ「名医のいる相談室」では、各分野の専門医が病気の予防法や対処法など健康に関する悩みをわかりやすく解説。

今回は眼科の専門医、慶應義塾大学医学部 眼科学教室の清水映輔特任講師が、日本人の6人に1人といわれるドライアイについて解説。乾燥する冬は特に要注意のドライアイを引き起こす2つの原因と治療法、そして予防法について語る。

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ドライアイとは

ドライアイとは涙の量が減ったり、涙の質が悪くなったり、涙液と呼ばれる体の組織の異常によって、目の表面に傷がついたり、目がすごく乾く、目がゴロゴロするといった自覚症状が出てくる病気です。

涙の乾きやすさとドライアイの自覚症状がどれくらいあるかが診断基準になってきます。

具体的な症状として一番代表的なのは、目が乾く
あとは、目がゴロゴロする目が痛い、目がかゆいといった症状がありますが、重症な方の場合は、目が見えにくい目がぼやけるといった視機能障害も出てきてしまいます。

家でできるセルフチェックとしては、目を開けっ放しにする。
これが出来るか出来ないかでセルフチェックになります。

現在日本では、6人に1人、約2200万人がドライアイだと報告されています。
特にオフィスワーカーの方々は、コロナでリモートワークが増えたと思うので、環境因子等々でドライアイが非常に増えていることが分かっています。

さらにパソコンの作業だったり、スマホ、タブレットでの作業を長時間続けることによって、ドライアイが悪化することも報告されています。

ドライアイは季節性があります。
特に乾燥する時期なので、首都圏に住む方であれば、に非常に悪化します。乾燥して乾きやすくなるからです。

このドライアイを放置すると、目の不快感が続き、日々の生活に支障をきたして、いわゆるQOL(クオリティーオブライフ)が下がると言われています。
さらにドライアイによって仕事の生産性が低下するという研究報告もあります。

原因は涙の量と乾きやすさ

ドライアイの原因は2つあると言われています。
1つは、涙が少ない方。もう1つは、涙が乾きやすい方

特に涙が少ない方というのは、自己免疫疾患、シェーグレン症候群関節リウマチといった、自分の体を自分で攻撃してしまう病気で、そういった病気が涙腺という涙を作る組織を破壊してしまいます。
そのため涙の供給量自体が減ってしまい、ドライアイが悪化してしまいます。

シェーグレン症候群は女性に多い病気で、男女比は1:20と報告されています。
従って特に女性でドライアイのある方は、眼科を受診して血液検査等でシェーグレン症候群のスクリーニングをおすすめします。

また加齢によっても徐々に涙腺組織が弱ってくるために涙の量が少なくなることもわかっているので、ご高齢になればなるほどドライアイになることがわかっています。

次に涙が乾きやすい方。
代表されるのは、涙の中のの成分が足りない方が、涙が乾きやすいと言われています。

涙は3つの層に分かれています。
上からの層、真ん中にの層、一番内側に目の表面とくっつくムチンという粘液の層。涙はこの3層構造になっています。

この中での層を作るのは、マイボーム腺という涙の中の油の成分を出す腺構造があり、これが上下まぶたに大体30~40個ずつあります。

このマイボーム腺が詰まってしまうと涙の中に油が共有できなくなってしまうので、涙が乾きやすくなります。

先ほどの自己免疫疾患だったり、体の病気が原因でマイボーム腺が詰まったり、破壊されることで涙の中の油の成分が足りなくなることも報告されています。

ドライアイの治療法

ドライアイの治療法はいくつかあります。
基本となる治療は点眼薬、つまり目薬です。市販の目薬でも対処できますが、特に重症のドライアイの方は、市販の目薬に入っている防腐剤によって目の表面の傷が治療できなくなったりしますので、眼科を受診した方がいいと考えます。

さらに眼科では様々な治療ができます。
例えば飲み薬。副交感神経を刺激することで、涙を出しやすくする飲み薬があります。

さらに外科的な処置では、手術という意味ではありませんが、涙の通り道である「涙点」を塞ぐことによって、涙を目の表面に溜め、相対的に涙を増やす治療も可能です。

涙点を塞ぐ処置は、涙点プラグ涙点閉鎖といいますが、その場で終わります。
あごを乗せて診察をする細隙灯顕微鏡という台がありますが、それがあれば1~2分でできる処置です。

先ほどもいいましたが、ドライアイは季節性があるので、冬になると悪化するので冬の間だけ涙点プラグをして、夏には取る。あるいは自然に取れることもあるので、そういった治療をされている方もいます。

ドライアイの予防

ドライアイの予防は家で出来ることもあります。まずは、まぶたの周りを清潔に保つことが重要です。

涙が乾きやすいタイプのドライアイの時にお話ししたマイボーム腺は、アイメイクをする方、特に女性だったり、最近は男性もアイメイクをする方が増えていますが、マスカラアイメイクはマイボーム腺が詰まったり、炎症等を起こす原因となるので、マイボーム腺をきれいにする必要があります。

マイボーム腺自体をきれいにすることはなかなか難しいのですが、まぶたを清潔にすることによってケアすることができます。

クレンジングだったり、まぶたのお化粧をきれいに落とすことをおすすめします。

もう1つ、ドライアイの予防で効果的な方法があります。
まぶたを温めることです。
市販のまぶたを温めるアイマスク等で毎日目を温めることで、詰まっているアイボーム腺が良くなることがわかっています。

ドライアイの予防は毎日やることが重要です。
マスカラとアイメイクをしっかり落とし、まぶたを温めることを毎日やっていただくと良いと思います。

そして最も重要なことは眼科を定期的に受診していただくことです。
健康診断で視力や眼圧を測ったり、眼底写真を撮ることもありますが、ドライアイはこれらの検査では診断することができません。

健康診断の項目で、ドライアイ有り、ドライアイの疑いということで眼科にいらっしゃる方はほとんどいません。
眼科を受診すればドライアイ以外にも様々な病気の検査をすることができますので、定期的に通院いただき、ドライアイだけでなく、様々な目の病気の早期発見、早期治療をすることがおすすめです。
 

清水映輔
清水映輔

現在, 慶應義塾大学医学部眼科学教室特任講師。 2013年慶應義塾大学医学部卒, 眼科専門医・医学博士(同大学で取得)。 東京医療センター, 東京歯科大学市川総合病院, 慶應義塾大学病院などに勤務。眼科医として, ドライアイや眼アレルギーを専門とし, 特に自己免疫疾患関連の重症ドライアイに関して多数の臨床研究や基礎研究の実績をもつ。第5回ジャパンSDGsアワードSDGs推進副本部長(外務大臣)賞・2020年 国際失明予防協会 The Eye Health Heroes award・2020年日本眼科アレルギー学会優秀賞・第十四回日本シェーグレン症候群学会奨励賞・2018 ARVO/Alcon Early Career Clinician-Scientist Research Award等受賞。