「佐渡島の金山」が世界文化遺産に推薦されるなど、いま大注目の新潟・佐渡島。豊かな自然と文化が息づく島を古地図とともに探検する。
この記事の画像(26枚)一緒に旅をしてくれるのは、地図先案内人の小林政能さん。持ってきたのは、まるで絵巻のような地図だ。
これは佐渡汽船の前身「佐渡商船会社」の航路案内で、鳥の視点で表現する「鳥瞰図(ちょうかんず)」と呼ばれる地図。
「東洋一」と言われた巨大鉱場の今
まず向かったのは、佐渡金銀山のおひざもと相川地区。
江戸時代には佐渡奉行所が置かれ、島の政治経済の中心地として栄えた。地図でもひときわ大きく、細かく書かれている。
飛田厚史アナウンサー:
相川と言えば金山。金が出てくるところですね。
このエリアを案内してくれるのは、佐渡市 世界遺産推進課の宇佐美亮さん。
まずは大人気スポット、北沢浮遊選鉱場跡へ。政府が世界文化遺産に推薦した「佐渡島の金山」に関連する遺構の1つだ。
朽ちた巨大建造物にツタがびっしり絡まる姿は、映画に出てくる「あの天空の城みたいだ」と人気を集めるスポットになっている。
佐渡市 世界遺産推進課 宇佐美亮さん:
ここはかつて大きな鉱場があって、全体に屋根がかかった建物があった。
こちらの写真が、大きな屋根の建物が稼働していた頃の選鉱場。鉱石を処理し金銀を集める重要な施設で、完成時は「東洋一」とうたわれる巨大鉱場だった。
佐渡市 世界遺産推進課 宇佐美亮さん:
地図に茶色い建物があるが、これがいま横に残っている火力発電所の跡。
地図先案内人・小林政能さん:
見比べるとたまらない。この煙は火力発電所で燃やしていた時の煙?
佐渡市 世界遺産推進課 宇佐美亮さん:
そうですね。
衝撃の事実…20年前までは別の施設だった
写真撮影に夢中な小林さんだが、ここである疑問が…。これほど人々を魅了する施設が、なぜ最近まで忘れ去られていたのだろうか。
宇佐美さんから衝撃の事実が告げられる。
佐渡市 世界遺産推進課 宇佐美亮さん:
ゴルフの練習場です。打ちっぱなし。
北沢浮遊選鉱場跡は20年ほど前までゴルフ場だった。当時の写真を見ると、確かに練習場が整備されている。
佐渡市 世界遺産推進課 宇佐美亮さん:
建物がネットなどで隠れていたため、地元の人も知っているが、この風景は見られなかった。
繁栄を築いた相川地区 メインストリートを歩く
続いて、江戸時代に大いに栄えた相川の街へ。かつての繁華街・京町通りを歩く。
佐渡市 世界遺産推進課 宇佐美亮さん:
このあたりが、金山と佐渡奉行所を結ぶメインストリート。最盛期には4~5万人が相川に住んでいたと言われている。
江戸時代前期の相川は当時、指折りの大都市。福岡や仙台など大藩の城下町とほぼ同じ人口規模だった。
これがその当時の相川を描いた絵。斜面びっしりと家が並ぶ様がわかる。
佐渡市 世界遺産推進課 宇佐美亮さん:
西陣織を扱う店があったので「京町」と言っていたという由来がある。
現在、集会所として利用されているこちらの建物は、もともと三菱の社宅だった。
飛田厚史アナウンサー:
本当だ。スリーダイヤモンドがついている。
金を求め…手掘りで山を真っ二つに
いよいよ相川、そして「佐渡島の金山」のシンボルとも言える、道遊の割戸へ。
金山が発見されてすぐに採掘がはじまった道遊の割戸。頂上からずっと金を掘り続けたため割れている。巨大な露頭掘りの跡だ。
地図先案内人・小林政能さん:
ダイナマイトがない時代ですよね。
佐渡市 世界遺産推進課 宇佐美亮さん:
江戸時代の絵図でも山が割れている。確実に人の手だけで掘った。
割戸の裏に回ってみると…。
佐渡市 世界遺産推進課 宇佐美亮さん:
昔の人が掘った穴。「狸穴(たぬきあな)」と呼んでいる。江戸時代の人が人力で鉱脈を探して掘った穴。
飛田厚史アナウンサー:
崖もいいところですよ。ここを掘ったんですか。
佐渡市 世界遺産推進課 宇佐美亮さん:
実際は地面の中を掘っていって突き出ちゃった。おそらく山の中は、江戸時代の人が掘ったトンネルがアリの巣のように張られている。
新潟県や佐渡市が2023年の世界文化遺産登録を目指す「佐渡島の金山」。その周辺では、かつての繁栄の名残を今に残すスポットが数多く点在している。
たくさんの魅力が詰まった佐渡に足を運んでみてはどうだろうか。
(NST新潟総合テレビ)