長崎県の南部に位置する雲仙市。
美しい海岸線や普賢岳などの雄大な自然に加え、県内一の農産地としても知られている。

長崎県雲仙市で生産される良質の野菜
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しかし、生産される良質の野菜が地元でほとんど消費されず、また認知度が低いことが長年の課題だ。
雲仙の魅力ある野菜をもっと知ってもらおうと、いま地元では試行錯誤が始まっている。

雲仙福田屋・草野玲料理長:
(雲仙市)国見町に八斗木(はっとぎ)地区があって、八斗木白葱ってあるんですけど、その葱の青い部分だけで作ったソース。甘くておいしいですね

八斗木白葱のソース

コース料理の前菜にも、料理長の食材へのこだわりが詰まっている。

雲仙福田屋・草野玲料理長:
島原半島の野菜は、ものすごい宝物がいっぱい埋まっているなって思っていまして。雲仙に来ないと食べられない、福田屋に泊まらないと食べられない野菜を、食材を使っていきたい

雲仙市の旅館「雲仙福田屋」の草野玲料理長(48)。
関西のホテルなどで経験を積み、14年前から地元で腕を振るっている。

雲仙福田屋の草野玲料理長

この旅館で使う食材は、ほぼ島原半島で採れたものだ。
きっかけとなった一つに、5年ほど前、生産者が持ち寄った野菜を調理した時の苦い経験がある。

食材はほぼ島原半島で採れたもの

雲仙福田屋・草野玲料理長:
「そのままでおいしいのに、なんでそんな余計なことをするのか」と指摘された。十分おいしいのに、それに余計なことをしてしまった。料理人のエゴだったのかなと

以来、草野さんは食材の味を生かすため、「素材が8割、腕が2割」という信念で料理に向き合っている。
今では自らも畑を耕して、季節ごとに地元にしかない野菜を中心に育てている。

この日は、壱岐の旅館関係者が草野さんの取り組みを視察した。

平山旅館・平山周太朗料理長:
非常に野菜愛が伝わりました

“食の宝庫”なのに流通網がない…生産者と店結ぶ新事業

雲仙市がある島原半島は恵まれた土壌や気候などから農業が盛んで、市内では4800haの農地で、米やジャガイモ、レタス、ブロッコリーなどが栽培され、産出額は190億円と県内随一を誇っている(2019年度)。

そして、「雲仙こぶ高菜」など雲仙にしかないものや、野菜の種を採り、種から育てている生産者など、多種多様な野菜が育てられている地域でもある。

しかし、豊かな産地にも関わらず、地元で流通している野菜はそう多くない。

雲仙市観光物産課・松坂良太さん:
すごい土地の中で、すごいものがあるのに、その中に住んでいるのに、雲仙市で食べられないのは何故だろうと

雲仙は食の宝庫にも関わらず、全国的に知られていない、地元に流通網がないといった問題がある。そのため、生産者と地元の旅館やホテル、飲食店とを結ぼうと、2021年度「雲仙の食をつなぐ事業」が始まった。

旅館関係者:
地元に特化していくと、物がそろわない。野菜もそう

生産者:
個人で販売している方が少ないので、そこまで考えが至らないかもしれない

旅館などにとって、入荷する量や時期が分からないとメニューを決められない。また、野菜を誰が配送するかなど課題は山積している。

この日の会議では、アプリなどを使いながらコミュニケーションを図ろうという提案があった。

雲仙市観光物産課・松坂良太さん:
食材の仕入先の情報、この季節にこういうところに、こういうものがあるという情報が今まで全く共有されてこなかった。色んな情報を共有して、よりいいものを作ろう、料理しようという動きが高まっている

「野菜の味が2倍、3倍、4倍にも…」

この日 草野さんは、吾妻町で農薬を使わずに野菜を育てている生産者を訪れた。

雲仙つむら農園・津村義和さん(43):
ヒノナカブ、アスカカブ、あとはミヤマカブ、アヤメカブあたりがちょうど今週、来週が採りごろ

雲仙福田屋・草野玲料理長:
ヒノナを少しもらっていきましょうかね

草野さんは普段、生産者から直接野菜を仕入れている。

雲仙福田屋・草野玲料理長:
色が濃くて味が濃い、すごく野菜自体に生命力が満ちている、元気な野菜だとつくづく思う

交流を通して料理のヒントをもらったり、これからの野菜の収穫時期や野菜の持つ本来の味などを共有する場になっている。

雲仙福田屋・草野玲料理長:
説得力が沸くっていうか、農家の言葉をそのままお客さんに伝えるだけで、「こんなに手間をかけた、可愛がって作られた」という野菜と分かってお客さんが食べると、野菜の味が2倍、3倍、4倍にも膨れ上がるかなって

雲仙つむら農園・津村義和さん(43):
食べておいしかった、農家に行って野菜を買いたいとなれば、雲仙市で完結するような地域循環、人の流れも作れる。すごく賛同している

店から魅力を発信…目指すのは「新しい旅の形」

2021年1月、草野さんの野菜への思いを体現した店が旅館内に誕生した。
香りを楽しめるという意味で名づけられた天ぷらのお店「香ふく」だ。

雲仙福田屋内にできた天ぷらのお店「香ふく」

雲仙福田屋・草野玲料理長:
八斗木白葱です。まるごと揚げて、水分を中に閉じ込める。天ぷらだけど蒸し焼きみたいな感じ

八斗木白葱の天ぷら

素材の旨味を最大限に引き出したいという思いから、天ぷらを選んだ。

島原半島の食材つかった天ぷら

男性客:
雲仙、島原半島のものを使って、その香りを引き出す料理を料理長がしているのを本当に感じましたね

女性客:
味が濃いなと思いました、野菜の。こんな野菜は普通のスーパーにないんですよね

草野さんは雲仙を訪れた人に、島原半島の食材や魅力をカウンター越しに直接伝えて食べてもらう、新しい旅の形を目指している。

雲仙福田屋・草野玲料理長:
京野菜、鎌倉野菜とかブランドがあると思うんですけど、雲仙野菜として島原半島の野菜を吸い上げて全国に発信していければ、おもしろいものが出来てくるんじゃないかなと思っています

雲仙の野菜に魅了された草野さん。店のオープンもきっかけに、地元・雲仙でさらに消費が進んでいくことを願っている。

(テレビ長崎)

記事 414 テレビ長崎

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