オミクロン株の流行で、再び感染が急拡大している新型コロナウイルス。
発生する患者すべてに関与し、疫学調査や健康観察を行う、“命を守る砦”が保健所だ。
しかし、これまでのやり方では限界を迎えると保健所のトップは危機感を募らせている。
大阪府の豊中市保健所・松岡太郎所長に、これからの保健所とコロナの関係はどうあるべきか聞いた。

「抑え込みはもはやできない」疫学調査の見直しを

松岡所長は、濃厚接触者を特定する疫学調査をやめるべきだと主張している。
従来株の潜伏期間では、陽性者がいつ、誰と会ったかなどを保健所が調べて濃厚接触者を特定する疫学調査を行うことで、感染の抑え込みが一定できていた。
しかし、2~3日が潜伏期間とされているオミクロン株では、濃厚接触者が分かる頃にはすでに発症していたり、感染させている恐れがあったりするというのだ。

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松岡所長は「言ってはいけないが、疫学調査に無力感を感じている。学校や高齢者施設などは必要な調査をしたいが、家庭や友人関係まですべてをきっちり把握するのは非常に難しい」と、もどかしさをあらわにした。
全国一律で、感染者本人から濃厚接触者に連絡をする形に変えるべきとしている。

患者への“ファーストタッチ”や経過観察は医療機関に軸足を

さらに松岡所長は、これまで全ての患者に対して保健所が連絡を取り、自宅療養者に対しては毎日健康観察をしている現状にも限界が来つつあると指摘。
インフルエンザや風邪のように、かかりつけ医が患者を診察したあと、薬を処方したり経過観察をしたりするのが望ましいと主張している。

松岡所長:
陽性者がとにかく多いが、9割以上は軽症か無症状。高齢者やリスクのある人の中には重症化する人が必ず出てくると思うので、十分な支援を担保した上で、ノーリスク・ローリスクの方は医療機関でフォローして頂けないかと思う。

リスクの低い人にかけるマンパワーをリスクの高い人に集中させ、命を守れるようにしたいと話した。

コロナ対応の“パラダイムシフト”を 市民の捉え方を変えていくべき

コロナ対応の“脱”保健所を掲げる松岡所長が念頭に置くのは、コロナによる“副作用”だ。2年近くにわたるコロナ禍で、様々な健康被害が出ているという。

⓵メンタル不調による自殺未遂者の増加
②高齢者の認知症・フレイル(身体的機能や認知機能の低下)の進行
③定期健診の受診控えによるがん発見の遅れ
④糖尿病など生活習慣病のコントロール不足
⑤整形外科など待機手術の遅れ(後回し)

…などを把握しているということで、市民が「コロナ=怖い」というイメージを持つがゆえに生じるこれらのリスクと、コロナのリスクを科学的に検証すべきと主張。
国に対して、コロナとインフルエンザの死亡率・重症化率との比較を速やかに検証し、明らかにするべきだと訴えている。
命を守る保健所が効果的に機能するため、いまコロナへの向き合い方が問われている。

(関西テレビ「報道ランナー」2022年1月13日放送)

関西テレビ
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