東南アジアのタイで新型コロナウイルスに感染し、治療中の日本人男性(36)がFNNの取材に応じた。男性は4月2日にバンコク市内の病院に入院し、陽性判定を受けた。現在は治療を受けながらツイッターを通じて、詳しい病状や闘病生活の様子を発信している。

最初の症状は? 「風邪よりも楽で…」空咳から始まった

男性によると最初の症状が始まったのは3月末頃当時は軽い咳程度で熱もなく、風邪の症状よりも楽なくらいだったため、新型コロナウイルスに感染したかは確証が持てなかったという。

ーー最初の症状はどんな感じでしたか?

バンコクで治療中の男性:
「3月23、24日に軽い咳が、ゴホゴホというのが出るようになりました。一週間くらい経っても、咳はひどくはならないけれども、ちょっと気になってはいました。私が経験した空咳というのは、インフルエンザなんかよりも全然楽ですし、そもそも普通の風邪よりも楽です。もしこれが仮にコロナが蔓延していない世界だったら、病院にも行かないですし、薬も飲まないレベルの咳です。本当に風邪のひき始めとすら思わない咳。味覚も嗅覚もなにも違和感がなくて、今でもなにも違和感がないです。」

男性が入院しているバンコク市内の病院
男性が入院しているバンコク市内の病院
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入院するまでの経緯は? PCR検査+レントゲンに「白い影」

タイ・バンコクでは複数の病院で、PCR検査を受けることができる。
男性はレントゲン検査とPCR検査を同時に受け、肺に白い影が複数確認されたことから即入院。PCR検査の結果で、新型コロナウイルスの感染が判明した。

バンコクで治療中の男性:
「病院に行ってPCR検査を受けて、その時に咳の話をしたら、ちょっとレントゲンを取りましょうという話になりました。そしたら、レントゲンの左の肺の下の方に白い影があるという話になって。これはちょっと怪しいということになって、それで検査結果が出る前に入院しました。」

感染ルートは? 「思い当たる節ない」

新型コロナウイルスに感染した経路について、心当たりがあるか男性に聞いた。
バンコクでは3月22日から規制強化で、飲食店内での食事などは禁止されていた。男性も密閉空間などへ行く機会はなく、感染経路の確証は持てないという。

ーー感染に関しての思い当たる行動はあるか?

バンコクで治療中の男性:
「感染に関しては本当に思い当たる節がなくて、そもそも4月2日より前の2週間くらいは、どの飲食店も持ち帰りは出来るけど、飲食店でそもそも食べられない。バーとかも全部やっていなかった。そもそもお店にあんまり行けない。」
「自宅でけっこうコロナの話題になって気をつけていて、自宅に帰ったらアルコールでまず手を洗って、手を洗って、うがい薬でうがいをして、着替えを洗濯機に入れて、そのままシャワーを浴びて、部屋着に着替えるという行動をしていて、けっこう気をつけていましたし、密閉空間と呼ばれるところにも行っていないですし…いつ感染したかもわからないです。え、これで感染なのという感じです。」

バンコクでは3月22日から商業施設・バー・パブなどの営業が禁止されている
バンコクでは3月22日から商業施設・バー・パブなどの営業が禁止されている

感染ルートの可能性も? 気になる「入管での混雑」

感染経路の確証は持てないものの、もしかしたらここではないか、という疑念はあるという。それは滞在ビザ更新のために訪問した入国管理局だ。当時、入国管理局はビザ延長を求める外国人で大混雑していた。

バンコクで治療中の男性:
「可能性としてあるなと思うのは…1つは3月16日にビザ延長でイミグレ(入国管理局)に行ったんです。ずっと密閉空間と呼ばれる場所に不特定多数の人、さらに不特定、色んな国の方々と一緒に椅子に座ってずっとひたすら待っているという感じがあった。かなり怪しいなと。3月23とか24日に咳が出始めているので、その日がコロナの発症日だとしたら、ちょうど日数的にぴったりかなというのがあります。」

バンコク市内の入国管理局 当時はさらに混雑していた
バンコク市内の入国管理局 当時はさらに混雑していた

海外の医療は大丈夫か?

男性は現在、日本ではなくタイ・バンコク市内の病院で治療を受けている。海外での治療に不安はないのか、また病院での生活は問題ないのか聞いた。

ーータイの病院はどうですか?

バンコクで治療中の男性:
「タイの病院はきれいですし、日本語が通じる、全員は通じないですけど、通訳の方もいますし、全然きれいですし、いいですよ。皆さんちゃんと質問したら答えてくれますし、日本と本当に遜色ない医療レベルかと思いますね。問診とかだけしか受けていないですけど。そこらへんは本当に安心です。」

現状をツイッターで発信する理由は?

男性は現在、ツイッターで自分の闘病の様子を発信している。その理由は、自分自身が当初の乾いた咳だけでは新型コロナウイルスと確証が持てなかったためだった。多くの人に、こうした初期症状を知ってもらい、危機感を持ってもらいたいと男性は話す。

バンコクで治療中の男性:
「私は空咳が出て、空咳が結構続いた状態で、あれ?これはコロナの可能性があるなと思ったんですよ、正直3月末くらいに。ただ、空咳以外の症状がないから確信が持てない。」
「かなりの人が陽性なんじゃないかと思っております。全然陽性だけどぶらぶら歩いている人は結構いると思います。」

男性は今後も、病院での治療の様子や、退院後の自主隔離の様子などをツイッターで発信し、多くの人に自分の経験を伝えたいと話している。

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【取材:FNNバンコク支局長 佐々木亮】

佐々木亮
佐々木亮

物事を一方的に見るのではなく、必ず立ち止まり、多角的な視点で取材をする。
どちらが正しい、といった先入観を一度捨ててから取材に当たる。
海外で起きている分かりにくい事象を、映像で「分かりやすく面白く」伝える。
紛争等の危険地域でも諦めず、状況を分析し、可能な限り前線で取材する。
フジテレビ 報道センター所属 元FNNバンコク支局長。政治部、外信部を経て2011年よりカイロ支局長。 中東地域を中心に、リビア・シリア内戦の前線やガザ紛争、中東の民主化運動「アラブの春」などを取材。 夕方ニュースのプログラムディレクターを経て、東南アジア担当記者に。