物があふれ出した家。隣の飲食店は悪臭とシロアリ被害に悩まされ、「財産だと言われ、手も足も出ない」と肩を落とす。
全国で問題となるいわゆる「ごみ屋敷」。解決へ静岡市は新たな条例の制定に向けて動き始めた。

隣家の壁がシロアリ被害に

物に埋もれた車やバイク。散乱したビニール袋やお菓子の袋。

よく見るとバイクが埋もれていた
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静岡市の住宅街にある民家の駐車場。近隣の住民によると、この家は約20年前に火災があり、焼けた家屋は今も修復されず放置されている。
駐車場に物があふれ出したのは火災の直後からで、今は駐車場の奥で男性が1人で暮らしている。

この状況に長年頭を悩ませているのが、隣りの飲食店だ。

隣の飲食店 窓側が物があふれた家と接している

飲食店店主:
例えば窓の枠の桟のところ。タテに線が見えると思うんだけど、あの裏は触るとぺこぺこなんですよ。シロアリに全部食われて

問題の駐車場と接する店内の壁には、いくつもの亀裂や穴が。放置された木くずから発生しているとみられるシロアリの被害にあっている。

物があふれた家に接している壁には亀裂や穴が

テープで応急処置をしているが、徐々に壁が腐食して大規模な修復が必要だ。

飲食店店主:
(壁の修理の)見積もりで百何十万円。その修理代を僕が出さなければいけないものなのか、そもそも問題なんだけど…自分がもちましょうとやっても、ごみが隣にべったりきているので、壁を壊すこと自体ができない

隣の飲食店 物が壁にべったり接し修繕すらできないと訴える

さらに夏場は、駐車場にあふれた物から悪臭も発生し、営業にも支障をきたしていると言う。

店主はこれまで町内会などと協力し、住人に対してものを片付けるよう説得を試みるも応じず。状況に耐えかね2021年7月、撤去や損害賠償を求めて民事調停を申し立てたが、不成立に終わった。

住人の驚きの言い分「人のせいにするな」

では住人はどう考えているのか、話を聞いた。

(Q.隣の人が苦情を言っていることに対してどう思うか)
住民:
言いがかりだよ

(Q.シロアリが出てしまっていることは)
自分たちがやってねえからだろ、人のせいにするなよ。ちゃんと消毒していれば出ない

(Q.なぜ民事調停は不成立だったのか)
向こうが変な条件をつけてきた。市役所に片づけさせると

(Q.片づけられるのは嫌というのはどうしてか)
勝手に捨てられるじゃん

(Q.勝手に捨てられるのは嫌か)
あたりめえじゃん!財産だもん!

駐車場のものは「ごみではなく財産」と主張している。

飲食店店主:
ごみじゃなくて財産だというと、まったく手も足も出ないわけですよね。ぼくの財産権じゃなくて、ごみ屋敷の住人の財産権の方が圧倒的に強い状況ですね。おかしいですよね

隣の飲食店の店主「隣の財産権の方が強い状況」

解決策となるか?「条例」制定

こうしたごみ屋敷の問題に対し、静岡市では、住民や議員、行政が集まり勉強会が開かれた。

2021年12月 静岡市のごみ屋敷条例の勉強会

参加した自治会:
現状では、起因者の自発的撤去を待つしか方法はないのではないだろうか。強制力の行使に頼らざるを得ない状況となっているのではないだろうか

静岡市担当者:
堆積したものを自分の財産だと主張されたり、片づけを拒否されるケースは福祉部局としての対応に限界を感じていたところです

対応に限界を感じている静岡市

あふれたものが敷地内にあるため、行政も本人の許可なく処分することができない現状。そこで提案されたのが、条例の制定だ。静岡市によると、ごみ屋敷に関する条例は、静岡・袋井市を含む全国で25の自治体が制定している。

自治体によって詳細は異なるが、条例ではごみの堆積や放置などを発見したら、所有者に対し行政が書面や訪問による指導を行う。それでも改善しない場合は、勧告や命令、最終的には行政代執行を行うことができると定めている。

カギは「人への支援」ができるか

全国の自治体に先駆け2013年に条例を施行し、これまで200件以上の問題を解決してきた東京・足立区。条例では代執行など厳しい措置を可能にしている一方で、人への支援に重点を置いている。

足立区はゴミ屋敷問題8割の解決率を誇る

足立区生活環境保全課・志田野隆史課長
身体障害や病気、生活困窮など様々な問題を抱えておりますので、それらの問題を1つ1つ丁寧に解決して、生活再建をはかるということに重点を置きながら再発を防止する

生活困窮など別の問題を抱えていると話す足立区の担当者

足立区では病気や経済的理由のため、ものを片付けられないと判断した場合、医師や弁護士などでつくる審議会が支援を行うかを判断し、支援が決まった場合は100万円を上限に区が直接片づけを行うことができる。

また、ごみ屋敷の対応は役所内の担当課があいまいで、たらい回しになりがちな状況を改善するため、担当部署を決めて関係機関と連携しながら解決にあたってきた。

足立区のHP 対応の流れが説明されている

その結果、条例施行後の解決率は8割を超えている。

足立区生活環境保全課・志田野隆史課長:
問題点をみんなで寄り添って解決していくということがこの条例によって可能になったので、スピーディーな解決につながるということと、解決した後も連携をしたいろんな所管が見守りを行っています。見守りによって再発を防いでいるというような状況になっています

静岡市はこうした例を参考にしながら条例案をまとめ、2022年度中の条例制定を目指していく。

長年、地域を悩ませているごみ屋敷の問題。行政には片づけられない原因にも目を向けた上で、根本的な解決が図られる条例づくりが求められる。

隣の飲食店は問題の家の大家と民事調停を行い、2022年は住人との賃貸契約を更新しないと決まった

(テレビ静岡)

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