洋菓子店が無い町に名物スイーツを…名物シェフが米使ったレシピ考案

人口が1万人に満たない岐阜・輪之内町には、町の名物がない。
そこで町は、「なめらかプリン」の生みの親である岐阜県出身の名パティシエに、名物となるスイーツの開発を依頼した。
シェフはスイーツ塾を開催し、町の人たちに「米を使ったプリン」の作り方を伝授。塾生たちは、スイーツの商品化に向け試行錯誤を続けている。

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長良川と揖斐川に挟まれた人口9500人ほどの小さな町、岐阜・輪之内町は、海抜0メートルの堤防に囲まれた輪中の町だ。

町役場の担当者:
輪之内町は名物がなく、農産物を使ってスイーツ出来ないかなって…。米を前面に推してスイーツを作ろうって

「洋菓子店が無い町に新たなスイーツを」。町が考えたのは、米を使ったスイーツ。輪之内町は、江戸時代初期から幕府の直轄地として将軍家に米を納めていた歴史があり、「徳川将軍家御膳米(ごぜんまい)」と名付けたブランド米を作っている。

その米を使ったスイーツの開発をお願いしたのが、「なめらかプリン」の生みの親として知られるスイーツ界のレジェンド、岐阜市の洋菓子店「プルシック」のオーナーシェフ所浩史さん。

所浩史シェフ:
やっぱり地元(岐阜)を盛り上げたいって想いはありますので、少しでもお力になれるならと…

2020年、プリンやフィナンシェ、サブレなどお米を使った7品のレシピを開発。

しかし、輪之内町には洋菓子店が1軒も無いため、せっかく開発したスイーツも販売する場所がない。

スイーツ製造販売できそうな人を招集…「塾」で作り方伝授

所さんが考えたのが、町でスイーツを製造販売できそうな人たちに作り方を教える「所塾」。今回の参加者は4人。

森島冬樹さん:
団子屋を通じて町づくりをしたいと思っていて、何かヒントがあるんじゃないかと

町唯一のショッピングセンター内にある、団子店「CONCO8(コンコヤ)」の森島さん夫婦。米農家でもある二人は、自ら収穫した米を使い団子を作っている。

団子米粉と水だけを使った人気の団子は、注文が入ってから焼き上げる。

もう一組は、町で27年喫茶店を営んできた西脇さん夫婦。

西脇国光さん:
コーヒー屋もやってますんで、プラスになることがあればいいかなと

お米の食感が絶妙…フランス流オレンジ風味の「お米のプリン」作り

「お米を使ったプリン」。所さんは、フランスにある米にオレンジ風味を付けたスイーツを参考に、レシピを考えた。

まずは、オレンジの皮を卵黄の中に入れる。

所浩史シェフ:
皮だけ入れることでさわやかに。これはプリンで使います

続いて、絞ったオレンジの果汁をお米と水が入った鍋に入れて煮込んでいく。

森島深雪さん:
ずっとこのブクブクのままやっていいですか?

所浩史シェフ:
強すぎると思ったら少し弱くしてもらって。この米の炊き具合が全てですから

煮詰まったお米は、容器の中へ。続いてプリン液を仕込む。プリン液は味を馴染ませるため、2回に分け、慎重に瓶に充填していくのだが…

西脇礼子さん:
難しい

所浩史シェフ:
だいぶこぼしましたよ。料理と違って正確に計量する。せっかく計量したのに、こぼしてたら全然意味がない

4人は、慣れないプリン作りに四苦八苦…。スチームオーブンに入れて蒸し、その後さらに冷やしたら、「お米プリン」の完成。瓶に米粒がついているのも個性的だ。

森島深雪さん:
お米がしっかり残ってて食感も良くて、オレンジの味も香り良くて美味しいです

西脇礼子さん:
すごく濃厚で、アイスクリームみたい

所浩史シェフ:
今までにないプリンができたなって思います。自分もお米入れたこと無いので。これで盛り上がって欲しいですね

「しっかりご飯があり食べ応えある」…商品化向けプリンの試作続ける

ショッピングセンター内にある森島さんの団子の店では、教わったメニューを正確に再現しようと何度も試作を重ねていた。お客さんに試食してもらうと…

男性客:
食感が変わって美味しいですね、モチモチやね

女性客:
しっかりあります、ご飯が。食べ応えがある感じ

森島深雪さん:
もっと所さんの作ったプリンに近づけるように、頑張っていきたいと思います

森島冬樹さん:
輪之内町が大好きなので、お米を使って団子とプリンを作って、輪之内町の魅力を発信できたら

岐阜県出身の所シェフは、これまでも町おこしのために、下呂市、高山市、白川郷などと一緒にプリンを製造、販売している。
小さな町・岐阜県輪之内町にも、新たな名物スイーツが生まれる予感が…。

(東海テレビ)