20隻以上の漁船が重油回収

博多港の防波堤に衝突し乗り上げていた、パナマ船籍の貨物船「レディローズマリー」。9576トン。事故から9日後の12月7日、ようやく貨物船の撤去作業が完了した。

城谷陽一郎記者:
午前11時すぎ、博多湾上空です。貨物船とタグボートがロープでつながれ、引き出し作業が始まっています

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貨物船撤去が始まる前、周辺の漁業関係者は20隻以上の漁船を出し、貨物船から流出した重油を回収する作業を行った。

川崎健太記者:
周辺にはまだ油が残っているということで、きょうも漁師たちが油の除去作業に追われています

漁師にとっては稼ぎ時の12月。事故発生の直後から、重油が漁場まで広がらないように食い止めるこの作業に追われ続けた。

漁師・森穣司さん:
だいたい12月、“おせち”とかの注文も入ってる中で、油の除去作業に駆り出されている。もう漁に出られてないけんですね、実際。正直、もう限界ですね。怒りとかとうに通り越しとるし

漁師たちは重油の除去作業に追われていた
漁師たちは重油の除去作業に追われていた

貨物船「レディローズマリー」は11月28日夜、バナナを積んで博多港を出港。神戸港に向かっていたが、まもなく防波堤に衝突した。

日本人2人を含む乗組員22人にけがはなかった。

重油は10km先まで…困難を極めた貨物船撤去

城谷陽一郎記者:
座礁した船の近くに来ています。完全に突き破っています。オイルの臭いが感じられます

船首部分が損傷し、燃料タンクの重油が流出。オイルフェンスの設置や吸着マットでの回収を行ってきた。

しかし、強風などの影響で貨物船の撤去作業とともに重油の回収も難航。一時、約10km離れた志賀島にも流れ着くなど、重油の流出は拡大した。

 
 

志賀島の漁師:
すぐに対応したが、油が入ってきていたので遅かった

志賀島の漁師:
正直、迷惑な話。漁もできないし

同時に、貨物船の燃料タンクに残った大量の重油を抜き取る作業も行われてきた。抜き取る前に無理に船を動かすと、さらに油が流出し被害を拡大させる恐れがあったためだ。

そして12月7日、燃料タンクの重油の抜き取りが完了したため、船の撤去作業がようやく行われた。貨物船の引き出しは、動かしやすいように満潮の時間帯が選ばれた。

午前11時半すぎ。タグボートに引っ張られ貨物船が動き始めた。ふ頭には、引き出し作業を見守る人たちも見られた。

撤去作業を見に来た人:
引き離したあと、どうなるのかなと。船体に穴が空いている。また油が出たりしないかな

貨物船は引っ張られながらゆっくりと博多港に向かう。貨物船が引き出されたあとも、防波堤の周辺や貨物船が引っ張られた跡に油が広がった。

防波堤の周辺や貨物船が引っ張られた跡に油が広がった
防波堤の周辺や貨物船が引っ張られた跡に油が広がった

漁業関係者たちは、油の除去作業に追われ続けた。

漁師・森穣司さん:
海面に多少、油が浮いていようと生活できるかもしれないけど、僕らは生活できんからね。また事故が起きた時に同じようなこと繰り返して、また漁師がどうにかしてくれるやろとか、そういう考えじゃなくて。改善点、課題は今回の事故で浮き彫りになったと思う

 
 

“死活問題”の海洋被害 行政と漁師にズレ?

漁師にとって海は生活の場所そのもの。海洋事故が起きた際、船会社は保険に入っているので賠償支払いが発生するが、風評被害や海産物への影響は簡単に元には戻らない。それを最小限に食い止めるには、一日も早い油除去が重要だということを漁師たちは知っているのだ。

油による海洋被害は、漁協関係者にとって死活問題となる。そのため事故当日から油の除去にあたってきた。事故の責任は船会社にある。海上保安部や福岡市も油の除去に参加していたが、結果的に作業の大半は漁師たちが担うことになった。

そして、午後0時半。貨物船は中央ふ頭に着岸し、撤去作業は完了した。

高島彩記者:
今ボンベを背負った人が1人、海に入りました。これから船底の潜水調査が行われます

潜水調査の結果、船底に損傷はあったものの航行できる状態であることが分かり、貨物船は停泊スペースのある福岡市東区の香椎パークポートに移動した。

今回の油除去対応について、福岡市の担当者は「市と漁協の協定に基づき事後処理をお願いした」としているが、福岡市漁協の森さんは「漁師だけでは足りなかった。海保や市は、対応スピードと支援の量が足りなかった」と主張している。

漁業関係者としては、行政が何らかの形でより早く、より多くの油除去船を調達していれば、油の拡散は今よりは抑えられたのではないかというのだ。

油の除去シートも、途中から圧倒的に足りなかったといわれている。最初は漁師が自分たちで用意して、市に助けてくれと主張したら提供が始まったとのことだ。

福岡海上保安部は、業務上過失往来危険の疑いで70代の船長に話を聴くなど、事故の原因を詳しく調べている。

(テレビ西日本)

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