2021年の夏、石川県内で相次いだ新型コロナウイルスによるクラスター。そのひとつが金沢市中央卸売市場。石川の台所を支える市場で当時何が起きていたのか、関係者を取材した。

“起こらない”と思われていた市場で感染拡大 クラスター67人に

11月26日、金沢市木倉町にある飲食店は営業開始前にもかかわらず、ほとんどの席が予約で埋まっていた。

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居酒屋割烹・佐野彰代表:
やっぱりお魚がメイン。そこに力を入れている

店の売りは金沢の市場から仕入れる魚介類。

――食材は地元から仕入れたい?

居酒屋割烹・佐野彰代表:
もちろんそうですね

こうした飲食店を支える金沢市中央卸売市場。全国各地から食材が集まる石川の食の拠点。野菜などを扱う青果部門と魚介類を扱う水産部門には、1日で多い時は2000人が出入りしている。

そんな市場で2021年夏、新型コロナ感染者のクラスターが発生し、かつて経験したことのない困難に遭遇した。

市場関係者の間でクラスターが発生。初めて感染がわかったのは7月30日。最終的には市場で働く人で44人、その同居する親族などで23人と、クラスターは合わせて67人にまで膨れ上がった。

金沢中央市場 青果卸売協同組合・片山茂理事長:
今までにないことの始まりだった。市場から(感染者が)出たらどうなるんだっていう心配は、みんな持っていた

当時をそう振り返るのは、青果部門の仲卸業者が加盟する組合の片山理事長。市場内でクラスターが発生する確率は低いと考えていた。

青果卸売協同組合・片山茂理事長:
(市場は)密閉どころかオープンですよ。そういうこと考えた場合、金沢では(クラスターは)ないだろうというのはあった

中央卸売市場は、常に扉やシャッターが開けられている開放型のつくり。場内が常に換気されているため、感染が広がる状況にはならないと思われていた。

恐怖や不安よりも、安心安全な食を届ける使命がある

金沢中央水産物卸協同組合・塩川英広理事長:
一番嫌だったのは、いったん(感染者が)出た時にバッと広がったこと。それが一番ショックだった

そう話すのは、水産部門の卸売組合の塩川理事長。市場に関わって50年。感染症と正面から向かい合ったのは初めてだった。

金沢中央水産物卸協同組合・塩川英広理事長:
恐怖や不安というよりも、休日以外は必ず開けて提供する使命がある。安心で安全な食を届けなければいけない。閉めることは許されない。過去、たとえ地震が来ても、天災が来てもそうだった

感染者が確認された店や施設は休業し、消毒などの措置をとるのが一般的。しかし、市場は国のガイドラインに沿って衛生管理を徹底しながら営業を続けた。

営業継続で誹謗中傷も…従業員1000人超にPCR検査

食の供給を絶やしてはならないという決意で臨んだ営業継続だったが、市場関係者への誹謗中傷がおきた。

金沢中央水産物卸協同組合・塩川英広理事長:
一般の市民の方から「あなたのお父さん市場で働いているんでしょう?」とか「ご主人は市場の人ですね」とかはあった

これ以上、感染を拡大させるわけにはいかない。市場がとった感染対策、それは水産部と青果部で働く従業員1000人以上への大がかりな一斉PCR検査だった。

金沢中央水産物卸協同組合・塩川英広理事長:
(市場内の)何カ所かから感染者が出たのは間違いないが、1カ所だけの責任じゃない。全体として捉えていかないと。誰が悪いわけではない

市場内で最後に感染者が確認されたのは8月22日。最初に感染者が確認されてから約3週間で感染の波は止まった。現在、市場ではマスクの着用やアルコール消毒など基本的な感染対策が徹底されている。

金沢中央水産物卸協同組合・塩川英広理事長:
恐怖感はあるがそれなりの予備知識も勉強した。もう、クラスターが発生するようなことは二度とないと自負している

塩川英広理事長が話す誹謗中傷以外にも「金沢の市場の食品は危ない」といった風評被害があったという。

農林水産省によると、食品を介して新型コロナウイルス感染症に感染したとされる事例は報告されていない。そのため市場の関係者は、安心して消費してほしいと話していた。

(石川テレビ)

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