本物のグラスにしか見えない美しい切り絵がTwitterに投稿され、話題となっている。

「全て、切り絵作品です。。」とのコメントともにTwitterに投稿されたのは、黒い背景の前に、細かい模様が入った“ウイスキーグラス”を持っている画像。

さらにワイングラスや氷と水が入った薄口のコップ、ペットボトルと、合計4枚の画像があり、それぞれ手の位置も違っている。

左:作品名 ウイスキーグラス 右:作品名:ワイングラス
この記事の画像(19枚)
左:作品名 水と氷 右:作品名:ペットボトル

もちろん全て本物に見えるが、コメントにもあるように切り絵なのだ。ガラスの質感や水の光沢、グラスの細かい模様、どこを見ても本物だと思ってしまいそうな見事なクオリティだ。

しかし、横から見ると実際のコップに比べて明らかに薄く平面になっており、切り絵であることが分かる。

横から見ると平たく切り絵だとよくわかる

切り絵の作品をTwitterに投稿したのは立体切り絵作家の「SouMa」(@SouMaNoKirie)さん。

このクオリティがすごい作品にTwitterでは「すごく繊細な作品で素敵ですね」「本物にしか見えない」などの声があり、約1万4000件のリツイート、約8万5000件のいいねがつくなど話題となっている。(11月12日現在)

1枚の白い紙をカッターで切り取り、黒い背景紙に貼っている

切り絵と言われなければわからないほど、どれもリアルな質感で見事に表現されている。では、どのように作っているのか? 作品のこだわりや苦労についても作者の「SouMa」さんにお話を伺った。

ーー投稿にある切り絵を始めたきっかけは?

水と光の表現は以前から挑戦したいテーマでした。平面の切り絵よりも普段は立体切り絵を多く作っていてテーマは抽象的で想像上のものを作ることがほとんどです。写実的でシンプルな平面の切り絵を作るきっかけになったのは今回投稿した「ペットボトル」という作品です。

2021年に私の住む島根県で水害があり、生かす水と奪う水をテーマにリアルに作業机にあったミネラルウォーターを見ながら一心不乱に作ったことがスタートになっています。それ以降、水と光のテーマになりそうなモデルを探して作っています。


ーー作り方を教えて

1枚の平面の白い紙をカッター1本で切り取って、黒い背景紙に貼っています。皆さんが切り絵と聞いて思い浮かびやすいとてもベーシックでシンプルな切り絵の手法だと思います。そこから黒い背景紙ごと作品のシルエットを切り抜いて手で持てるようにしました。

少しずつ丁寧に紙を削っていく

ーー実物を見ながら作った?

作品は全て私物のグラスをモデルに実物を見ながら作りました。様々な光の反射のパターンをライトを当てて再現しながら、写真を撮るなどして観察して4つ全て約1週間程度で完成させました。


ーー光沢や質感をリアルに表現するうえで意識していることは?

陰影を再現するために「剥がし切り」という技法があります。背景紙の黒さの濃淡があり、グレーのように見える部分は紙の厚みを感じながらカッターの刃を刺す深さを変えて、削るように切っています。通常では紙をくり抜くために刃を最後まで刺して切りとりますが、刺す深さを途中で止めて切ることで紙が薄膜の状態で剥がされます。

一枚の平面の紙とカッター一本というシンプルな道具と素材ですが、切り方によって何段階もグラデーションを表現することができます。カッターは筆のようなもので、均一な線も擦れるような線も使い手によって、幅広い表現ができる自由度の高いものだと思っています。

削った部分を慎重に剥がす

原料から製法まで相談した専用の手漉き和紙

ーーどんな種類の紙を使っている?

数年前までは洋紙を使っていましたが、現在は立体的な切り絵を作る工程で捻ったり水で濡らするのに適している手漉き和紙を使用しています。手漉き和紙は島根県、石州和紙工房の久保田さんが私専用に原料から製法まで相談しながら漉いて頂いているものを使用しています。厚みはコピー用紙と同じくらい薄いです。


ーー紙を選ぶ基準は?

数年前までは洋紙(中性紙)を使用していましたが、創作に使用するのは全て私専用に漉いて頂いている手漉き和紙です。それに合わせて接着には和紙糊を使用していますが、手漉き和紙と和紙糊の組み合わせは日本画や書などの日本の美術作品において、昔から使用されていて歴史からみても保存性の高いことが証明されています。

さらに水を含ませることで接着を解いて修復が可能と万能なため、絵画の修復士や伝統工芸の職人さんからのご意見を参考に現在は主な創作は全て手漉き和紙を使用しています。

紙を切って模様にしている

ーーこだわりは?

白い部分をより白く錯覚する(光ってみせる)工夫もしています。紙そのものの白い線は全体にあるように見えますが、より光ってみせたいポイントを強調させるために光ってみえる場所以外の白い線全体を目では濃淡を区別できない程度に少しだけ剥がして明度を落としています。

近くで見ても剥がし切りをしていることが分からないですが、作品全体を引いて見た時に自然と光って見せたいところだけ明るく感じるように工夫しています。


ーー難しかったところを教えて。

平面作品で難しいのはカッター板を敷かずに切ることが難しいです。切り絵はカッター板の上でデザインを全て切り終えてから背景紙に貼るという手順が一般的ですが、私の場合はある程度切り進めると途中で背景紙に貼ってしまいます。

特に大きな作品になると全て切り終えてから貼る作業を行うのは大変なので自然と小さな作品でもカッター板を使わずにこの手順になりました。難しいのはそこから背景紙にカッターの刃が当たらないように切り進めていくことです。

作品名:僕らの街創り

切り絵を始めたのは5~6歳

ーー投稿した画像に入っている“手”はどういった意図?

サイズ感や紙の質感、作品をよりリアルに見せるため、シルエットを切り取って手を添えています。それに加えて作品から手が透けていない違和感を演出するために手を添えていますが、あくまでSNSのための演出です。


ーー切り絵を始めたきっかけは?

作品作りを始めたのは5〜6歳です。当時は切り絵というものを知らなかったのでただカッターを使った独自の方法になります。その後、切り絵という絵画の手法を知って平面作品も作るようになりました。

立体切り絵は子どもの頃に折り紙に切り込みを入れるなど立体的な作品を作っていて、その後に平面作品も作るようになったという流れです。作風は常に変化しています。


ーーお気に入りの作品を教えて

立体切り絵では「簪 〜光芒〜」です。平面作品では「望月」です。

作品名:簪 〜光芒〜

ーー反響についてどう思う?

今回のような現実にあるものや写実的な作品を平面の切り絵で表現することは私にとって最もシンプルな創作の1つでした。イメージがストレートに伝わる作品は展覧会とは違ったコメントや反響を頂けたように思うのでとても新鮮で嬉しいです。


ーー今後はどんな作品を作っていきたい?

SNSで画面を通して多くの人に作品を知っていただけたことはもちろん嬉しいですが、やはり実物を目の前に作品の説明文も読んでもらって、作品の奥にあるストーリーを感じて頂きたいです。

展覧会の機会をもっと増やせるようにまずは貪欲に沢山の作品を生み出すことに励んで、これからも切り絵の可能性を信じつつ、切り絵というジャンルにも縛られないSouMaらしい作品を追求していきたいと思います。

作品名:望月

普段は立体的で抽象的なモチーフの切り絵を制作しているSouMaさんだが、水と光の表現に関心があり、今回投稿したペットボトルの切り絵をきっかけに写実的で平面な切り絵を作ったという。

SouMaさんの作る一枚の紙に命を吹き込む切り絵は、まるで実物がそこにあるような不思議な感覚にさせてくれる。