政府は19日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済対策の取りまとめに向け、経済的な影響を受けた民間事業者などから意見を聞く「集中ヒアリング」を全7回の予定で開始し、23日の第4回会合で折り返しを迎えた。

ヒアリングでは、麻生財務相や関係閣僚、自民・公明両党の幹部も参加して約60人から話を聞き、4月中にまとめる予定の緊急経済対策に反映させていく。

19日の初会合は、個人事業主やフリーランスを中心に計10人を招き、約1時間半にわたって行われた。安倍首相は、「まさにどういう困難があるのか、現状をみてどういう政策を政府に望んでいるのかということを率直に皆様からお話を伺いたい」と挨拶した。

キッチンカー経営者、タクシー運転手、書道講師ら多様な人が政府に直接要望

ヒアリングの参加者は、政権幹部が「これだけ多くの業種の方が集まるヒアリングは初めての経験だ」と語るほど多種多様な顔ぶれとなった。ウイルス感染拡大の影響で失職した男性、キッチンカー経営者、習字教室の講師、タクシー運転手、フリーランスの女性、音楽専門学校で個人レッスンを営む女性、そして就職活動中の大学生と、業種も年代も境遇も様々だった。ヒアリングでは、実際にどのような声が挙がったのだろうか。

コロナで失職の男性(40代)「みるみるうちに仕事が減った」

都内在住の40代男性は、新型コロナウイルスの影響で、勤めていた販売関連の中小企業が業績不振となり、結果として解雇を言い渡された。このヒアリングにも、次の職場を探すための採用面接の帰りに参加したという。

「私は40代なので(就職)氷河期といわれている世代なんですけど、そのときと同じくらいの暗いダメージです。(中小企業は)ほんとに売り上げが少なくて苦しんでいるんですよね。その中でやむを得ず、資金を確保するために人件費を削らざるを得ないという実態ですよね。体力のある会社とは違いますので」

この男性の勤めていた会社では、安倍首相が全国の学校に対し一斉休校を要請して以降仕事量が減り、3月に入って10日ほど経った時点でもっとも深刻さを感じたという。男性は解雇された会社には、「ギリギリまで雇ってくれた」と感謝しつつ、次のように語った。

「純粋に職を失う怖さをリアルに感じるわけですよね。数字だけでなく目で感じるわけですから。自分がやる仕事が目の前からどんどんなくなっていくという現実を突きつけられたのは確かです」

そしてこの男性は、「中小企業の資金を補填してくれれば自分のような失職は減るのではないか」と述べ、中小企業に対する重点的な支援を要望した。

書道教室講師やタクシー運転手“ギリギリの生活”

さいたま市で書道教室を開く女性は、教室が開けず、現在の休業補償では生計が成り立たない現状を訴えた。

「学校の休校に伴い習字教室も3月いっぱいは全て休校せざる得ない状況なんですけれども、習字教室のテナントを借りているので、テナントの家賃ですとか、光熱費は発生するので収入が減るというよりはむしろマイナスで本当に困っている状態です」

また、都内のタクシー運転手(50代)は、客を乗せる回数が半減しているとした上で、自身の家庭環境もあわせて切実な声を政府に伝えた。

「休校中の子供の面倒をみながら、パート勤めをしている妻とやりくりをして生計を立てています。最低賃金割れくらい…、要するにもうギリギリの売り上げの中で生活をしている運転手が出てきているというのが現状だと訴えました」

さらに、この運転手は、不景気が続くとタクシーを含めた事故が絶対に増えるということ、児童手当の支給を前倒しして欲しいことなどを訴えたという。

キッチンカーはイベント自粛で大ピンチ、就活生も“不安”

また、フードトラック協会の代表理事も兼ねる東京のキッチンカー経営者(50代)は、次のように訴えた。

「キッチンカーでいうと、イベントというイメージがあると思うんですけど、そのイベントがなくなりましたので、だから、この2ヶ月間、3ヶ月でやっぱり4億とか6億とかいう数字が消えてしまっているというのが現状だと思います。 潰れていく業者も、車もどんどん出てきていますので、だからその下支えがお金を借りると、融資をお願いしますという形だと」

都内の大学に通う就職活動中の大学生3年生も参加した。航空・ホテル・観光業界志望のこの女子大学生は、「採用の募集人数が減るのではないか」と不安を口にした。また、採用の説明会がオンラインになったことによるデメリットや「留学や夏休みについての対策をどう行うのか情報を開示してほしい」と訴えた。

政府はどんな経済対策に踏み切るか

3月21日から22日にかけて行ったFNN世論調査では、安倍内閣の支持率は2月より5.1ポイント増えて41.3%だった。支持率が急落した2月と比べ持ち直した形だが、それでも日本経済への影響について「大変懸念している」と「ある程度懸念している」人の割合が計92.4%にものぼり、経済に対する不安感があらわになっている。

FNN世論調査より

政権は「中小企業が潰れたら日本は終わってしまう」と危機感を募らせており、これまでにない大胆な経済対策に踏み切る方針だ。フリーランス、個人事業主、さらに就職活動中の学生を前に、「支援を徹底的に行っていきたい」と述べた安倍首相だが、どのような規模感で、どこまできめ細やかな支援を練り上げられるのか、その真価が問われている。

(フジテレビ政治部 総理番記者 阿部桃子)