日韓関係にとって2019年は「1965年の国交正常化以降最悪」との評価がほぼ固まった1年だった。いわゆる元徴用工問題の解決の糸口は全く見えず、日本の輸出管理強化や軍事機密を共有するための協定「GSOMIA」の 問題も未だ燻る。

12月に1年3か月ぶりに行われた日韓首脳会談も、具体的進展は無く、対話による解決を目指すとの事で一致するに留まった。2020年の日韓関係は一体どうなるのか?

結論から言えば、改善に繋がる要素はほとんど無く、さらに悪化するか、良くて現状維持の可能性が高そうだ。

ソウル・龍山駅前の徴用工像 日韓関係最大の「地雷」だ

日韓関係は「地雷原」

日韓を揺るがす最大の問題は徴用工問題だ。現在、韓国国会では日韓の企業と市民の寄付によって問題解決を図ると称する「文喜相議長案」が提出されているが、日本企業の差し押さえ資産の現金化を進める原告らはこの案に反対している。ある日本政府関係者も「原告が法案に反対している以上、現金化手続きを止めさせるのは難しく、問題解決にはならないだろう」と悲観的だ。

韓国大統領府も否定的な見解を持っていて、この法案が解決の決め手になる可能性は低い。輸出管理の問題は実績を積まなければ緩和されない問題なので、当然時間がかかる。GSOMIAについては、アメリカが強力に反発した実績があるために韓国が再び破棄という決定を下すのは難しいとみられるが、現状維持になったところで日韓関係そのものに大きなプラスになるかというと疑問だ。

これらの問題以外にも、日本政府を相手取った損害賠償訴訟が進行中の慰安婦問題、東京オリンピックでの旭日旗使用問題と選手村での福島産食材使用への韓国の反発、福島原子力発電所の処理済み汚染水問題など火種は数多ある。韓国の聯合ニュースは「2020年の日韓関係は展望が暗く地雷原だ」と評したが、まさにその通りだろう。実は、これら多くの問題の解決が困難な背景もある。

2020年前半の韓国は総選挙一色に

韓国では2020年4月15日に国会議員の総選挙が行われる。この選挙は5年の任期の折り返し地点を過ぎた文在寅政権が求心力を維持できるのか、革新派が次の大統領選挙でも勝利出来るのかを占う、まさに天下分け目の戦いだ。文大統領率いる革新派与党は、自分たちに有利に選挙制度を変えるなど、なりふり構わず勝利を目指している。文大統領の支持率は2019年の1年間を通して45~50%付近で推移していて、選挙で100%勝てる状況ではないからだ。

スキャンダルに揺れたチョ・グク前法相

一方野党である保守派は、チョ・グク前法相のスキャンダルや経済の低迷という与党側の失策を徹底追及している。そのような状況で、徴用工問題や慰安婦問題で日本に対して妥協するような政策を文大統領は取れるのか?韓国国立外交院・外交安保研究所は、日本の東京オリンピック開催と韓国の総選挙などを背景に「政治的な理由で日韓両国に攻撃的民族主義が大きく高まり、対立が繰り返される」と予測している。

保革問わず反日がベースである韓国の民族主義的世論を考えると、選挙前に日本へ妥協する政策を取るのはあり得ない選択となる。4月の選挙までに、韓国側から日韓関係を劇的に改善させるような案が出る可能性は極めて低いと言える。

低迷する韓国経済

韓国経済の低迷も、対日政策で妥協できない要因の一つだ。2019年の韓国のGDP成長率は2.0%を割り込むとの見通しが多い。日本に比べれば良い数字ではあるが、2016~18年には成長率は3%前後あったので、成長は明らかに鈍化している。雇用も良くない。

2020年もこの傾向は続き、成長率見通しはIMF= 国際通貨基金 が2.2%、韓国銀行、韓国開発研究院、経済協力開発機構は2.3%となっている。大幅な改善予測は出ておらず、多少は改善してもなお厳しい状況が続くとの見通しが多い。どの国でもそうだが、政権支持率を一番左右するのは経済だ。経済の低迷も、日本へ融和的な政策を取りにくい要因となる。

アメリカとの非核化協議が難航するなか金正恩委員長は2020年強硬姿勢に転じるのか

北朝鮮問題と日韓関係

2019年2月に行われた第2回米朝首脳会談の決裂以降、非核化を巡る米朝の交渉は暗礁に乗り上げている。緊張感を増す2020年の朝鮮半島情勢は、北朝鮮がミサイル実験や核実験を繰り返した2017年の状態に逆戻りするか、さらに悪化する可能性もある。こうした情勢は当然日韓関係にも影響を及ぼす。日韓がいがみ合っている場合ではないとの考えが広がり、北朝鮮という共通の脅威の存在が日韓の距離を近づける事もあり得るだろう。実際2017年は、2018年や19年に比べて明らかに日韓関係は良かった。

一方で、対北朝鮮政策の違いこそが現在の日韓の軋轢の最大の原因だと指摘する専門家も多い。ひたすらに南北融和を目指す文在寅政権と、アメリカとともに制裁を徹底する事で非核化の実現を目指す安倍政権とは水と油なのだ。南北融和が最大の関心事である文在寅政権がどこまでその信念を貫くのかも、日韓関係に影響を及ぼす事になる。

2020年の日韓関係は引き続き厳しい状況が続きそうだ

韓国外交は2020年も困難に…

韓国は日本や北朝鮮との関係以外にも、周辺国との軋轢を抱えている。アメリカとはGSOMIAと駐韓米軍駐留費分担金問題でギクシャクし、中国とはアメリカのミサイル防衛システム=THAAD配備問題が尾を引いていて、恒常的に圧力を受けている。ロシアも頻繁に韓国の防空識別圏を侵犯しているという具合だ。

韓国のシンクタンク牙山(アサン)政策研究院のハン・スンジュ理事長は聯合ニュースの取材に対して「北朝鮮と平和を維持する一方、アメリカ・日本との軍事共助で強い抑止力を確保し、アメリカの核の傘を含む戦略資産を活用して中国とも良い関係を維持しなければならない」と韓国政府に助言を送った。文大統領が気の毒に思えるくらい実現が困難な助言だが、それだけ韓国は外交的に厳しい状況にあるという事だ。

文在寅大統領は2020年5月に就任4年目に突入する。韓国大統領の任期は5年で再選は無く、これまでの大統領は任期後半には求心力を失ってきた。任期が少なくなるにつれて、内憂外患を抱える文大統領の頭の中には「難しい日韓関係は次の大統領に任せてしまおう」という考えが出てくる可能性がある。さらに最悪なのは、李明博元大統領のように、政権末期の支持率低迷を跳ね返すために、竹島上陸などの反日カードを切る事だ。どちらにせよ、そのような事態になれば2020年の日韓関係はさらに深い対立の泥沼に陥る事になるだろう。

韓国が不法占拠する島根県の竹島

執筆:FNNソウル支局長 渡邊康弘