これまで「伝統芸能」や「工芸」の分野から選ばれていた人間国宝が、新たに「食」の分野からも選ばれることが分かった。
文化庁は、2020年の4月に食文化を担当する専門部署を新設。和食の料理人や日本酒造りの職人(杜氏)など「食の達人」が将来的に人間国宝に認定されるという。
人間国宝と聞くと、伝統的な技を持ったすごい人というイメージはあるが、しっかりと説明できる人は少ないのではないだろうか?
人間国宝は、一般的に重要無形文化財保持者のことを言うが、文化庁のHPでは下記のように説明している。
無形文化財とは、演劇、音楽、工芸技術、その他の無形の文化的所産で我が国にとって歴史上または芸術上価値の高いものをいう。無形文化財は人間の「わざ」そのものであり、具体的にはそのわざを体得した個人または個人の集団によって体現される。
国は、無形文化財のうち重要なものを重要無形文化財に指定し、同時に、これらのわざを高度に体現しているものを保持者または保持団体に認定、我が国の伝統的なわざの継承を図っている。
そして保持者等の認定には、「各個認定」(個人)、「総合認定」(2人以上の者が一体となって芸能を高度に体現している場合など)、「保持団体認定」(芸能または工芸技術の性格上個人的特色が薄く、かつ、当該芸能または工芸技術を保持する者が多数いる場合において、これらの者が主たる構成員となっている団体)の3方式がとられている。
要するに、演劇、音楽、工芸技術などの分野で歴史上または芸術上、価値の高い重要なわざを体得した人を一般的に人間国宝と呼ぶ。
2013年に「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録され、日本の食が世界から評価されていることも今回の決定の背景にあると思われるが、そもそも人間国宝とはどのように決められ、どのような特典があるのか? また食の達人の場合も同じ決め方なのか? 文化庁の担当者に話を聞いた。
国際的なブランド力を高め、観光資源として活用を目指す!
――「食」の分野から人間国宝を認定する狙いは?
衣食住に関わる日本の文化の中でも、「食」は注目されており、今後、国際的なブランド力を高め、観光資源として活用するために。例えば、食に特化した「人間国宝」の認定などの方策を考えています。
――そもそも、伝統芸能や工芸では人間国宝はどのように選ばれている?
毎年1回、重要無形文化財の保持者の死亡による認定の解除数、芸能及び工芸技術の分野の実態などを踏まえて、文化審議会の専門的な調査や検討を行い、その答申に基づき、文部科学大臣が保持者や保持団体に対して認定を行っています。
認定されると年額200万円の助成が受けられる
――そもそも人間国宝に選ばれるとどんな特典がある?
重要無形文化財の保持者には、保持者が行う技術の錬磨、伝承者養成等に対し、国は、年額200万円の助成をしています。
――人数に上限は?
各個認定の予算上の定員は116人です。わざの錬磨や後継者育成のための事業(年一律200万円補助)を行っていただくため、これが最大人数となっています。なお、現在の実員は115人です。
――認定の解除は亡くなられた時だけ?
法律上、認定の解除は「心身の故障のため保持者として適当でなくなつたと認められる場合(略)その他特殊な事由があるとき」となっていますが、過去、死亡解除以外の例はありません。
――「食」の人間国宝の場合も同じ?
どのような支援ができるかは今後検討していく予定です。
現在、実態把握と政策手法を検討中
――現在、どこまで進んでいる?
4月に文化庁に食文化を担当する専門部署を新設します。その後、どのように食文化を振興していくのか政策手法を検討していく予定です。
――「食」の人間国宝を選ぶためにどのような検討が必要?
食といっても、分野は広いので、まずは実態を把握するとともに、味、技能、歴史などどんな切り口で評価していくのかなど、様々な観点での検討が必要です。
――「食」の人間国宝の誕生はいつごろになりそう?
4月から新たにできた部署において、実態把握や政策手法の検討を始めますので、現段階で具体的な時期を示すのは難しい状況です。
“食”の人間国宝認定のための土台作りはまだ始まったばかり。ただ日本の食は、国内だけでなく世界に誇れる資源であることは間違いない。“食”の人間国宝の誕生をきっかけに、さらに日本の和食ブランドを世界に発信してほしい。