伝統の花豆の特産化に、長野・大町市美麻の中学生が取り組んでいる。
これまでの活動が実り、今 白馬村のスキー場でソフトクリームやパフェになって販売されている。

白馬村のスキー場の新メニュー「花豆パフェ」
白馬村のスキー場の新メニュー「花豆パフェ」
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定番の「煮豆」に、小豆の代わりに入れた「赤飯」。東北信を中心に栽培されている大きくて甘い花豆。

花豆の定番料理は赤飯や煮豆だが…
花豆の定番料理は赤飯や煮豆だが…

花豆の可能性を広げる新メニュー

このほど、その可能性を広げる新メニューが登場した。ソフトクリームに、パフェだ。

新メニューの「花豆ソフトクリーム」
新メニューの「花豆ソフトクリーム」

記者リポート
口の中に入れた瞬間、花豆の香りがすごく広がってきて、アイスとの相性も良くてとてもおいしいです

中学生が特産化に取り組んで7年…

美麻小中学校の畑で花豆を栽培・収穫した(長野・大町市・2021年夏)
美麻小中学校の畑で花豆を栽培・収穫した(長野・大町市・2021年夏)

使われているのは、中学生が特産化に取り組む大町市美麻の花豆。
美麻小中学校の畑で、2021 年も大粒の花豆が実った。2020年は猛暑の影響で収量が伸びなかったが、2021年は豊作。

美麻小中学校9年生
収穫してどんどん溜まっていくのを見ていくと、『わあ、すごい』とか、自分たちのやつなんだって思うと、すごくうれしく思います

収穫した花豆(ベニバナインゲン)
収穫した花豆(ベニバナインゲン)

長野県は北海道に次ぐ花豆の産地。栽培に適した、標高が高く涼しい場所が多いからと言われている。

長野県立大学健康発達学部・中澤弥子教授
長野県立大学健康発達学部・中澤弥子教授

長野県立大学健康発達学部・中澤弥子教授
もともとベニバナインゲン(花豆)は、江戸時代の末には観賞用で伝わっていたそうです。北海道で明治から大正にかけて栽培されていて、それが長野にも伝わっていて、基本的に標高が高くないと実にならない。ぜひ長野の栽培ができる所で、おいしい花豆を作ってもらいたい

美麻小中学校では2014年から花豆について学習している
美麻小中学校では2014年から花豆について学習している

美麻も花豆の代表的な産地。美麻小中学校では2014年から、中学生にあたる7年生から9年生が、地元の食材を学ぼうと授業の一環として栽培に取り組んでいる。

2017年には、なんと「会社」も立ち上げ、地元の生産者たちと連携して販売やPRに取り組んできた。
3代目の「社長」を務めるのは阿久津幸太さんだ。

花MAME株式会社3代目社長・阿久津幸太さん(9年生)
地域の方がすごい協力して下さって、中学生がやることに意味があるって言ってくれて、自分たちが花豆を通して美麻を盛り上げていきたいなって思います

テーマは「地域活性化」

大町市美麻地区
大町市美麻地区

美麻地区の住民は860人。移住者も徐々に増えているが、高齢化と過疎化が課題。
民宿を営みながら「地域学校協働コーディネーター」として生産者との橋渡し役をしてきた前川さん。生徒たちの活動を心強く思っている。

前川浩一さん(右)
前川浩一さん(右)

地域学校協働コーディネーター・前川浩一さん
私たちが地域づくりをやっている中で、特産品をつくるってことはすごい課題だった。それがなかなかできなかったという思いがあって、それを子どもたちに話したら、子どもたちがその取り組みを始めてくれた

2021年の活動のテーマは、花豆による「地域活性化」。現在、制作しているのは『花豆BOOK』だ。栽培農家や花豆を扱う店の紹介、花豆料理のレシピ集を盛り込む予定としている。

この日、生徒たちは地元のおやき店を取材した。こちらの店は、イベントなどで花豆を「あん」にした特製おやきを出している。

花豆を「あん」にした特製おやき
花豆を「あん」にした特製おやき

猪乃源・細野ちとせ代表
アズキと違ってカカオみたいな…

生徒
商品を作るときに大事にしていることはありますか?

猪乃源・細野ちとせ代表
おいしい食材を使って、おいしい物をお客さんに食べていただこうという気持ちで日々、仕事に取り組んでいます

「花豆BOOK」は3月ごろ完成予定だ。

猪乃源・細野ちとせ代表
猪乃源・細野ちとせ代表

猪乃源・細野ちとせ代表
子どもが頑張ってるのを見れば大人も一緒にやろうって気持ちになるし、地域活性化につながると思う。一生懸命やってる姿を見ると、何かできることがあれば協力したいって気持ちが生まれる

スキー場が花豆の新メニューを開発

同じ日、生徒たちはバスで白馬村へ
同じ日、生徒たちはバスで白馬村へ

同じ日、うれしいことが生徒たちを待っていた。バスで向かったのはお隣・白馬村。

エイブル白馬五竜スキー場
エイブル白馬五竜スキー場

「エイブル白馬五竜スキー場」は高山植物園も運営している。グリーンシーズンの魅力づくりの一つとして、美麻の花豆に着目した。

エイブル白馬五竜 営業推進部・田中小枝さん
エイブル白馬五竜 営業推進部・田中小枝さん

エイブル白馬五竜 営業推進部・田中小枝さん
中学生と一緒になって何かできたら地域の貢献にもなるし、話題性もあるのではないかと、花豆を押し出していきたいと始まりました

この夏、スキー場で売り出した「花豆ソフトクリーム」
この夏、スキー場で売り出した「花豆ソフトクリーム」

この夏にスキー場で売り出したのは、花豆のペーストを練り込んだソフトクリーム(税込500円)に大きな花豆を添えた豪華な花豆パフェ(税込700円)。
生徒たちが試食…

生徒
おいしいです。花豆の味がしっかり出ていておいしいです

アイスクリームに使われている花豆には、生徒たちが栽培したものも含まれている。これまでの活動がまた一つ、実を結んだ。

生徒
あんまり実感ないけど達成感があります

生徒                                         自分たちの先輩から続いて、今やってきて、美麻でどんどん農家さんが増えて、ここの有名な所に貢献できるっていうのが、自分たちの努力とか先輩たちの(思い)がつながって今これ食べているんだなって思うとすごいぐっとくるし、今年で終わるのもちょっと寂しいなって思います

3年間、生徒たちを見守ってきた担任の平林先生は…

美麻小中学校9年生担任・平林隆昭先生
美麻小中学校9年生担任・平林隆昭先生

美麻小中学校9年生担任・平林隆昭先生
ここまでダイナミックな、地域を巻き込んでの本当の『総合的な学習』というのは経験がなかったので、「本当の学びだったんだな、これが」って思っています

地元の特産品で地域おこしのお手伝い。生徒たちは教室を飛び出し、花豆を通じて貴重な経験を積んでいて、大人たちに刺激を与える存在になっている。

(長野放送)

長野放送
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