90年の歴史に幕を下ろした老舗のそば店が復活した。国の制度を使い後継者を募集し、伝統の味を受け継ごうというのだ。地区唯一の飲食店がよみがえる。

妻も知らない「汁のレシピ」を書き記し…

北海道三笠市幾春別(いくしゅんべつ)地区で90年続いた老舗そば店「更科食堂」。

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2020年8月に閉店したが、1年ぶりに明かりがともった。

元店主の平田尚敬さん(66)。体調不良で店を閉めたが後を継ぐ人が現れ、秘伝の味を伝えることにしたのだ。

更科食堂 元店主 平田尚敬さん:
金をもらってもダメと代々言われてきたので、作り方は絶対教えなかったですね

35年連れ添ってきた妻の紀美子さんも知らない「汁のレシピ」を初めて書き記し、後継者に伝える。

更科食堂 元店主 平田尚敬さん:
父や祖父も「それならいい」と言ってくれるのではないかなと

店を継ぐことになったのは、白髭克彦さん(40)。北海道旭川市出身で、現在は東京で居酒屋やラーメン店などを経営している。

更科食堂の後継者 白髭克彦さん:
地域の再生や地方創生など、地域と東京を組み合わせて何かできたらいいと考えていたんです

更科食堂の後継者を募集したのは三笠市だ。国の制度「地域おこし協力隊」を活用した。

3年間は市が給料を支払うという条件で公募し、応募した約30人の中から白髭さんに白羽の矢が立った。

炭鉱で栄えた街の”最後の飲食店”を残したい

市に更科食堂の復活を強く働きかけたのは、幾春別地区の町内会長、富樫良一さん(75)だ。

幾春別地区町内会長 富樫良一さん:
食堂が1軒もなくなったら、幾春別も寂しくてどうしようもなくなります

炭鉱で栄えた幾春別地区。

かつては多くの飲食店が軒を連ねていたが閉店が相次ぎ、最後に残った1軒が更科食堂だった。それがなくなるのは地域の消失にもつながりかねないと、富樫さんは元店主の平田さんから店舗を譲り受け、3年間、維持管理費を負担することを決断した。

元店主の平田さんは、後継者の白髭さんにそばの打ち方を教える。

更科食堂 元店主 平田尚敬さん:
祖父の代から沸騰した湯を使うように言われている。その方が粘りが出る

東京で飲食店を経営している白髭さん。のみ込みが早いようだ。

更科食堂 元店主 平田尚敬さん:
初心者とは思えない

しかし、そば切り包丁は使い慣れていない。平田さんが切ったそばに比べると、太さにばらつきがある。

70年以上、更科食堂に通い詰めていた富樫さんに試食してもらう。

幾春別地区町内会長 富樫良一さん:
味がちょっと、しょっぱい

厳しい評価だが、平田さんは安堵していた。

更科食堂 元店主 平田尚敬さん:
普通に売れるそばができたので、何も心配することはないです

更科食堂の後継者 白髭克彦さん:
教わったことを忠実にやり、変わらない味で作れるように頑張ります

更科食堂の再開は10月中旬の予定だ。

(北海道文化放送)