1日あたりの詐欺被害は8000万円超
1日に約8260万円。これは1日あたりの特殊詐欺の被害額である。
2019年の特殊詐欺の認知件数は1万6836件で、前年より1008件、5.6%減少した。
1年間の被害額も81億4000万円減ったものの、301億5000万円にのぼる。
減少傾向にはあるが、1日に8000万円を超える被害が出ていて、依然深刻な状況が続いていると言える。
オレオレ詐欺被害の8割超が高齢女性
被害に遭った人の多くが高齢者だ。
65歳以上の女性の被害認知件数は全体の65%を占め、オレオレ詐欺に限ってみれば84.3%にのぼっている。
特に80歳前後の女性に被害が多くみられるという。
警察庁が初めて調査した女性被害者の年齢別分布によると、
オレオレ詐欺では、他の年代より70代半ばから80代半ばまで特出して多くの被害が出ていることが確認できる。
なぜこの年代の女性に被害が集中しているのだろうか?
“カギ”は「女性の単独世帯数」と「就業率」にありそうだ。
厚生労働省の国民生活基礎調査では、2018年6月7日時点で、
75歳以上の女性が1人で住んでいる「女性の単独世帯」は293万5000世帯。
一方、「男性の単独世帯」は94万4000世帯。
つまり75歳以上で、1人で住んでいる女性は男性の3倍以上いるということになる。
さらに、総務省の労働力調査で、2019年平均の就業率をみてみると、75歳以上の男性が15.6%なのに対し、女性はわずか6.7%だった。
こうした社会情勢から高齢の女性は1人で家にいる率が高く、詐欺集団のターゲットになっているとみられている。
「アポ電」詐欺は9万件超
一方、家族構成や現金の保管場所を事前に聞き出すいわゆる「アポ電」。
警察庁の調査で、2019年4月から12月末までのわずか9ヶ月間に9万1798件もあったことが判明した。
47都道府県全てで確認されていて、東京が2万5558件で最多。
埼玉が9242件、千葉は7553件、神奈川は6790件、大阪は6730件で、この5都府県で全体の60.9%にのぼった。
こうしたアポ電が強盗事件に発展するケースも相次いでいる。
東京・江東区では2019年2月、アポ電を受けた80歳の女性が強盗に襲われ、死亡した。
2019年1年間だけでも東京、群馬、神奈川、静岡、茨城、埼玉で11件起きていて、今年に入ってからもすでに3件発生している。
警察庁は、
「知らない電話番号には出ないようにして、留守番電話の機能や自動通話録音機を活用してほしい。
お金の話も含めて個人情報は絶対話すことのないよう気をつけてほしい」と
注意を呼びかけている。
(執筆:フジテレビ社会部警察庁担当 山下高志)