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3人に1人があおり運転の被害に

あなたは「あおり運転」の被害に遭ったことはありますか?

警察庁が実施したあおり運転に関するアンケート調査では、過去1年間に「被害を受けたことがある」と答えた人はおよそ35%、3人に1人が被害に遭ったことがあるということになる。

あおり運転の被害に遭った夫婦2人が死亡(2017年東名高速)
あおり運転の被害に遭った夫婦2人が死亡(2017年東名高速)
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じゃあ、どうやってあおり運転を抑止するのか?という点については、「罰則の強化」が必要との回答がおよそ75%にものぼり、悪質危険なあおり運転に対して厳しい目が向けられていることを表す結果となった。

ドライブレコーダーの普及に伴い、近年、あおり運転がクローズアップされることがとても多くなった。

“罰則強化”の契機になったあおり運転殴打事件

記憶に新しいのが「常磐道のあおり運転殴打事件」。まさに衝撃の映像だった。
高速道路で男があおり運転を繰り返し、車を停止させた末、運転手の男性を殴りケガをさせた事件だ。

道をふさいで車を止め、運転手を殴打(2019年8月)
道をふさいで車を止め、運転手を殴打(2019年8月)

現在の法律では、あおり運転の定義はなく、直接取り締まることはできない。
車間距離保持義務違反などで取り締まりを重ね、悪質なケースでは刑法の暴行罪や強要罪などを適用し摘発してきた。

警察庁はこうした状況を変えるため、道交法を改正して、「通行妨害」を目的として一定の違反により交通の危険を生じさせる恐れのある場合について、あおり運転と規定し、新たに罰則を設ける方針を固めたのだ。

執拗に距離を縮める、急ブレーキ、進路変更・・・

具体的にどういう行為が対象となるのかというと、執拗に距離を詰めたり、急ブレーキや急な進路変更などが想定されている。
高速道路などでほかの車を停止させるなどした場合には、さらに罰則は重くなる見通しだ。

罰則については、暴行罪(2年以下の懲役または30万円以下の罰金)や強要罪(3年以下の懲役)を参考にしながら今後検討が進められるが、免許については即取り消しとなる。

(イメージ画像)
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あおり運転は極めて悪質で、非常に危険な行為だ。
警察庁は来年の通常国会に道交法の改正案を提出する予定だが、厳罰化によって少しでもあおり運転の被害が無くなることが期待される。

一方、法務省は、他人の車の前に割り込んで、停車する行為についても、『危険運転致死傷罪』の要件に加えるよう、自動車運転処罰法の改正を法制審議会に諮問する方針だ。

「ながら運転」も厳罰化

さて、皆さんご存じの通り、「ながら運転」は12月から厳罰化がスタートした。
違反点数だけでなく反則金もおよそ3倍に大幅アップ。
スマホを手に持って通話しただけでも違反点数は1点から3点に、普通車で6000円だった反則金は1万8000円に引き上げられた。

(イメージ画像)
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その「ながら運転」で事故を起こしてしまうと違反点数は6点となり、一発で免許停止。
さらに、反則金の対象からも除外され、「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」が科される可能性がある。
“ながら運転でも刑務所に”ということなのだ。

なぜこんな厳しくなったのか、それは「ながら運転」が原因の交通事故が後を絶たないからだ。

愛知県一宮市では、男がスマートフォンで「ポケモンGO」をしながらトラックを運転し、当時小学4年の男子児童をはねて死亡させる事故も発生。
「ながら運転」の事故はこの10年間で倍以上に増えて、去年1年間だけでも2790件も起きている。

ついついやってしまいがちな「ながら運転」はリスクしかない。
この厳罰化を一つの契機として、変化していく交通ルールをよく理解し、安全運転を心がけてほしい。

山下高志
山下高志

フジテレビ社会部記者司法キャップ。記者歴12年以上。
首都圏連続殺人事件やオウム真理教の死刑執行、国会議員の汚職など事件中心に取材。
埼玉県警担当・国土交通省担当・司法担当(検察・裁判)・警察庁担当を経て、現職。