“脱炭素”の取り組みが国内でも広がりつつある中、佐賀市の二酸化炭素を分離回収する事業から、ちょっと変わった卵を開発する新しい取り組みが始まっている。きっかけは高校生のアイデアだった。

アスタキサンチンを多く含む藻「ヘマトコッカス」

佐賀市三瀬村にある養鶏場。ムーラン・ルージュという会社の石井利英社長が経営している。ここでは、ニワトリのエサに「藻」を混ぜている。

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ムーラン・ルージュ・石井利英社長:
これがヘマトコッカスっていうものなんですけど、藻なんです。藻を乾燥させてフレークにしたものだと思います

ヘマトコッカスには抗酸化作用があり、健康や美容の分野で注目されるアスタキサンチンという成分が多く含まれている。これをニワトリのエサに混ぜて食べさせると、卵から普通は含まれないアスタキサンチンが検出された。

ムーラン・ルージュ・石井利英社長:
食べさせて1カ月くらいで、まず一番初め検査に出した。その中で少し(アスタキサンチンが)出ていたもので、ならこれを続けてみようかということで、徐々に増えていった。ああこれは卵に乗っていっているなと

――もともと、ヘマトコッカスは知っていた?

ムーラン・ルージュ・石井利英社長:
いえ、全然知らなかったです。学生の提案で佐賀市が動いて、その佐賀市からの話の中で

二酸化炭素で藻を育て、藻をエサに…

事の始まりは、2020年10月。県内の高校生による政策提言コンテストで、弘学館高校の生徒たちが発表し、最優秀賞に選ばれた政策だった。

弘学館高校3年・松尾圭吾さん:
「ムツゴロウをより佐賀の基盤になるものとして扱っていくには、どうしたらいいだろう」と考えたのが一番最初で、ムツゴロウのエサである藻類が二酸化炭素で育てられるということで、二酸化炭素分離回収施設という佐賀市が持っている世界有数の技術を使って、それをムツゴロウに食べさせて安定的に生産ができるんじゃないかということで

地球にやさしい環境対策の一環として、佐賀市は清掃工場の排ガスから二酸化炭素を分離回収して再利用するバイオマス事業を展開している。

松尾くんは、中学生の時に施設を見学したことがあり、それを覚えていた。民間企業の施設に二酸化炭素が送られ、ヘマトコッカスなどの藻類に光合成させることで培養している。

佐賀市・増本嘉浩 藻類産業推進室長:
彼らのプレゼンを見た時に、すごく夢がある話だったんですけど、やっぱりちょっと無理があるなというところがあったんですね。1つは、ムツゴロウが養殖されているものじゃないというところです

佐賀市・増本嘉浩 藻類産業推進室長:
もう1つが、いま佐賀で培養されている藻類というのが、淡水性なんですね。ムツゴロウのエサになりえないんじゃないかという部分です

藻類をエサにするというアイデアをムツゴロウではない別のもので実現できないかと考えて行き当たったのが、佐賀市内でパン屋を営むムーラン・ルージュの卵だった。

佐賀市・増本嘉浩 藻類産業推進室長:
以前は(佐賀市)商業振興課というところにいたんですが、地場産品などの販路拡大のお手伝いをしている中で、石井社長が一生懸命トライされている姿を見ていたんです。もしかしたら彼の情熱に、高校生たちの情熱がうまくマッチングするんじゃないかなと思いました

弘学館高校3年・戸嶋康陽さん:
コンテストに応募して発表して、それでお終いなのかなと思っていたので、実際に取り入れてもらって嬉しかったですよ。自分たちのアイデアが政策で行われたので

濃い橙色の黄身が特徴 そのお味は?

佐賀市から話を受けたムーラン・ルージュは、藻類を培養している企業からヘマトコッカスを買い取り、2021年1月から実験的にエサに入れ始めた。そして2021年4月、アスタキサンチン入りの卵の商品化にこぎつけた。

バイオマス事業の藻類は、これまで主に化粧品やサプリメントに使われていたが、生鮮食品に活用されたのは初めて。新開発の卵は、アスタキサンチンの赤い色味が表れて黄身が濃い橙色なのが特徴。

4月下旬には、卵かけごはんの専門店「レストランサーグラ」をオープンした。

卵かけごはんを食べた客:
卵黄がすごく濃厚で、色も見たことないくらい鮮やかな色で、びっくりしました

卵かけごはんを食べた客:
白身もツルッとしていて、喉を通る時に嫌な感じがせず、すごくおいしかったです

現在は、新しい卵を使ったバウムクーヘンも試作中。

試作中のバウムクーヘン
試作中のバウムクーヘン

「大人は聞いてくれない」高校生が行政と企業を動かす

脱炭素、カーボンリサイクル、SDGs。国際機関や日本政府、そして自治体が対峙する大きな課題への取り組みは、いろいろな立場の人たちの発想や思いによって活気づいていく。

弘学館高校3年・戸嶋康陽さん:
(コンテストが)50点満点あって、そのうちの10点が「SDGS視点を入れる」というもので

弘学館高校3年・松尾圭吾さん:
10点分稼ぐためと捉えられるかもしれないけれど、今回の政策提言のように一つ一つが達成されていけば、最終的には社会をよくする方法に、その選択一つ一つが寄与していくのかなと

佐賀市・増本嘉浩 藻類産業推進室長:
最初やりとりした時に「こういう提言、最優秀賞とかコンテストで獲ったって、どうせ大人は聞いてくれないんですよね」と、そういうニュアンスの発言があったんですよね。「じゃあ大人の力見せちゃる!」というのはありましたね

ムーラン・ルージュ 石井利英社長:
脱炭素って大きく考えんでも、小さいんだけどその積み重ねでみんなが少しでも良くなったら。一人一人の考えとしては小さいんですけど、ただそういう中で人がつながっていくということが大事じゃないかと思います

(サガテレビ)