FNN記者のイチオシのネタを集めた「取材部ネタプレ」。
今回取り上げるのは、経済部・安宅晃樹記者が伝える「奄美・沖縄 5年越しで悲願の世界遺産の理由」

7月26日、世界遺産委員会で正式に世界自然遺産への登録が決まった奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島
実は過去に1度、ダメ出しを受けて申請を取り下げており、今回2度目の挑戦で悲願達成となった。
この成功の裏には、審査で突きつけられた宿題をクリアするための努力があった。

5年越しで悲願の登録

加藤綾子キャスター:
安宅記者はアナウンサーでもありますが、先ほど聞いて驚きました!世界遺産検定1級の資格を持っているんですね!

経済部・安宅晃樹記者:
そうなんです。実はこの資格、俳優・鈴木亮平さんや芸人・あばれる君さんも持っている、意外と人気な資格なんです。

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東京は連日、オリンピックでメダルラッシュですが、実は世界遺産も7月26日に奄美大島、徳之島、沖縄北部及び西表島が世界自然遺産に、そして7月27日には北海道・北東北の縄文遺跡群が世界文化遺産に登録されるなど、世界遺産ラッシュでもあるわけです。

奄美・沖縄が世界自然遺産に決定したときの奄美市役所の様子です。大盛り上がりです。

さらに、奄美大島出身の歌手・元ちとせさんも歌を歌って盛り上げていました。
元ちとせさんは「延期になっていたこの時間が大切だった」と語っています。

その通りで、 今回この登録延期という苦難を乗り越えたことが今回の大きな特徴となっているわけです。

まず、日本にある世界自然遺産を見ていくと、青森県・秋田県の白神山地、北海道の知床、鹿児島県の屋久島、東京都の小笠原諸島と4件がこれまでに登録されていました。

この度これに加えて奄美・沖縄が5件目として登録され、さらに「日本最後の自然遺産になるかもしれない」と言われている遺産です。

意外と世界遺産の登録基準をご存じない方が多いかと思います。
自然遺産に登録されるためには、まず4つの基準があってそのどれかに該当する必要があります。

どのような基準があるか見ていきます。
まず1つ目は「美しい自然」。オーストラリアのグレートバリアリーフ、きれいな自然でそのままですね。

2つ目は「地球の歴史を証明」するということ。アメリカのグランドキャニオン、これも想像しやすいかと思います。

3つ目は「独自の生態系」。エクアドル領のガラパゴス諸島、ガラパゴス携帯(ガラケー)という言葉があるくらいですから、これに該当します。

4つ目は「生物多様性」。私の好きな遺産ですが、タンザニア自然保護地域のンゴロンゴロ自然保護区という、しりとりの切り札になり得るかもしれないところです。

今回の奄美・沖縄は、この4つ目の「生物多様性」に該当すると言います。
見ていくと、奄美・沖縄は面積としては国土の0.5%未満ですが、哺乳類や昆虫など代表的なものだけでも8700種以上が生息しています。

さらに、絶滅危惧種のアマミノクロウサギやヤンバルクイナなど95種類が生息しているということで、なんと「奇跡の森」と言われていたりするわけです。

ただ、3年前の審査では登録延期勧告。つまり“待った”がかかってしまったのです。
その理由が、「完全性」の概念をクリアできずということです。「完全性」は聞き慣れない言葉かと思います。

「完全性」というのは、「必要な要素が全て含まれている」「重要性を示す適切な大きさの確保」「開発および管理放棄による負の影響を受けていない」、本当にわかりやすく言うと「100点満点必須」ということです。まさに完全な状況でなければいけない。

加藤綾子キャスター:
1点の減点も許されないということですね。でも、なぜそこまで基準を厳しくするんですか?

経済部・安宅晃樹記者:
やはり、一度遺産に登録されても管理を放棄されることによって廃れていってしまう。そうすると、世界遺産全体としての価値が下がることにもつながるので、こういった厳格なルールがあるわけです。

これからは「世界の奄美・沖縄」を守る

経済部・安宅晃樹記者:
世界自然遺産への前回推薦時と今回推薦時の地図です。緑の部分が遺産の対象地域ですが、前回は赤丸部分の空白があったり上に飛び地が多いです。
この空白は何かというと、もともとは米軍の訓練場があった場所で、2017年の直前に返還され各種調整が難しいことがあり、対象から外されていました。

ただ、やはり生態系は周囲との関わりがあって成り立つものですから、今回はそういったところも増えて全体的に緑が増えた印象はありますね。

こういった努力をした結果、面積としても約4000ヘクタール増え、飛び地をなくしたことによって推薦地も24件から5件にまとめました。
こういった数々の努力を重ねた結果、この貴重な生物の多様性を今後もきちんと維持できますよということで、その結果、7月26日の世界自然遺産の登録となったわけです

加藤綾子キャスター:
これによって100点満点を取ったということですね。

経済部・安宅晃樹記者:
完全な状態に仕上げました。私自身も世界遺産マニアとしてうれしい限りです。今まで、日本の奄美・沖縄からこれからは「世界の奄美・沖縄」となっていくわけです。世界に対して遺産を守っていく責任が生まれるということです。

加藤綾子キャスター:
ここが大事ですよね。観光客を呼んで盛り上げること、それから自然保護の両立です。
住田さん、ここが課題になりそうですね。

住田裕子弁護士:
米軍基地で沖縄に随分ご負担をおかけしてますけど、今回はこの遺産を守っていく。国を挙げて私たち一人一人がこの資源を大切にしたいです。

加藤綾子キャスター:
そういう意識付けのきっかけになりそうですね。

(「イット!」7月28日放送より)

安宅晃樹
安宅晃樹

フジテレビアナウンス室 兼 SHIP戦略推進室
1992年山口県生まれ。東京大学大学院工学系研究科原子力国際専攻修了。1児の父。
THE NEWS α、PRIME NEWS α、Live News itなど報道番組を中心に担当。
現在はLive News days(月・火)、日曜報道 THE PRIME。