あの名選手が一堂に

ラグビーW杯の準決勝翌日の10月28日午後、東京・上井草のグラウンドに往年の名プレーヤーたちが集まった。NZ、オーストラリア、イングランド・・まさにレジェンドと呼ぶにふさわしい面々だ。

南アフリカ・Bハバナ氏(左)イングランド・Jウィルキンソン氏(右)両国は今回決勝で対決
往年の名プレーヤーたち 中央は豪州・Jグレーガン氏

そこで開かれたのは子供たちに向けたラグビー教室。教室といってもラグビーボールに慣れ親しむ程度のものだが、それでもグラウンドは子供たちの歓声に包まれた。平日にもかかわらず応募が多く、参加者は抽選で選ばれた。

平日にもかかわらずグラウンドは子供たちの歓声に包まれた
『手つなぎ鬼』をする名プレーヤーと子供たち

ちなみに我が日本の代表は、TBSドラマ「ノーサイドゲーム」に出演した、浜畑こと廣瀬俊朗元日本代表キャプテンだ。
みんなの笑顔があふれる中で、彼だけは「うまく収拾できるやろか」とイベントの行方を心配していた。元キャプテンだけあって全体のマネジメントに気が向くのはさすがである。
もちろん、彼らが日本にいるのはW杯の模様を母国に伝えるためだが、その合間を縫って草の根レベルのイベントに参加してもらえるのは本当にありがたい話だ。
彼ら自身も楽しんでいることが、その表情からうかがえた。

廣瀬俊朗元日本代表キャプテン

少年は大人に、大人は少年に

こうしたラグビーの精神を表すものとして「ラグビーは少年を大人にさせ、大人には少年の心を抱かせる」という言葉があるのをご存知だろうか。元フランス代表のキャプテンの言葉だが、少しひも解いてみる。

ラグビーの激しいコンタクトは当然痛い。恐怖もある。それはラグビースクールに通う子供にとっても同じである。人生経験が少ない分、そのハードルはむしろ子供の方が高いかもしれない。
それでも仲間のため、勝利のため、意を決してタックルに向かう。指導者が見るのは技術というよりその心である。見事なタックルで相手を止める。すると不思議なもので喜びと充実、何より自信が子供たちの眼に宿るのだ。吹っ飛ばされてもかまわない。「よくやった」「次にまた頑張ろう」でいい。タックルに向かう気持ちこそが称賛に値する。それが自然に伝わることはリーチ主将が証明してくれた。仲間との信頼や困難に立ち向かう勇気、責任感はこうして培われていく。成熟した心が育まれるのは道理だ。

「ラグビーは少年を大人にさせ、大人には少年の心を抱かせる」提供:早稲田大学ROBクラブ

一方「子供の心を持つ大人」と考えて、ある人を思い出した。百聞は一見にしかず。

吉田荘治さん。長らく早稲田大学のコーチを務め、このほど還暦を迎えられた、ラグビーと酒と犬をこよなく愛する方である(敢えて荘治さんと呼ばせていただく)。
その服装や髪型もさることながら、40歳以上の人たちで作るラグビーチーム「不惑クラブ」で、その激しい発言から出入り禁止になった過去を持つ。「子供のような」などというと失礼にあたるかもしれないが、個性豊かな良き先輩でもある。

吉田荘治さん(左)

実は年齢を重ねてもラグビーを続けている方々は非常に純粋だが、それだけにこだわりが強く、頑固な人も多い。
40代、50代、60代と年齢によって短パンの色が分かれている不惑クラブでは安全を考慮し「20代以上上の人にはタックルしてはいけない」という不文律があるが、タックルをしたら「ルール違反だろ!」と怒鳴られる一方、しなければ逆にプライドを傷つけられ「なめてんのか!」となる。「子供」の意味が幼児性を示すような話である。

その不惑クラブにいた荘治さんはこのほど結婚され、過日私の同期でパーティーを催したのだが、なぜかみんな上半身裸になり、リアルにスクラムを組んでお祝いした。これも「子供の心」ではなく、単に意味不明の愚かな行為なのだが、この精神年齢の低さは幼稚を通り越して痛快である。その際の写真もあるが、さすがに見苦しいので割愛させていただく。

吉田荘治さん結婚パーティー

また、彼はとある機会にテレビ朝日のディレクターの目に止まって取材を受け、夕方ニュースの18時冒頭で10分間、VTR出演した。視聴率競争が激しいこの時間に一民間人が10分も出続けるのは異例であり、彼の素敵なキャラクターを示す出来事ともいえる。

もう一度日本でW杯を

日本ラグビー協会の森重隆会長

28日の上井草のグラウンドにはレジェンドたちの他に、日本ラグビー協会の森重隆会長も来ていて、子供たちを前に「君らが大きくなった頃にもう1回日本にW杯が来るからね」とあいさつした。
多くの子供たちが未来の日本代表を目指し、またラグビーの楽しさや面白さを感じて、グラウンドを走り回ってもらいたいものである。もちろん大人もプレーや観戦などを通じて、その魅力をもっと味わっていただきたい。
今回のW杯のキャッチフレーズは「4年に一度じゃない。一生に一度だ」だが、これが嘘になることを願ってやまない。

(フジテレビ政治部デスク・山崎文博)