新潟県内の企業でウイスキー造りに参入する動きが相次いでいる。
なぜいまウイスキーを造るのか。
そこには、会社の存続をかけた経営者の思いがあった。

はんこ工場の隣でウイスキー造り

新潟市江南区ではんこを製造する大谷。
はんこの売上で全国1位を誇り、従業員の数は565人にのぼる。

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この工場の隣の建物では、まったく違ったものが造られている。
大谷が2019年に設立したのは、ウイスキーを造る会社「新潟小規模蒸溜所」。

約2億5,000万円をかけ、蒸留器や発酵タンクなどを備えた本格的な蒸留所を敷地内に建て、2021年3月から試験蒸留を始めている。

新潟小規模蒸溜所・堂田浩之社長:
今は僕らのウイスキーの進むべき道を、どっちの方向に振るか、決めていく段階

大谷の取締役で、ウイスキー事業を発案した堂田浩之さん。
新事業に乗り出したきっかけは…

新潟小規模蒸溜所・堂田浩之社長:
僕が昔からジャパニーズウイスキーが大好きで。日本のウイスキーも高くなり、手が届かなくなるという話を夫婦でしたときに、社長であるわたしの妻が、「だったら造ればいいじゃない」と言った

一方で大谷を含む、はんこ業界をめぐっては2020年に大きな動きがあった。

河野太郎行革担当相:
三文判を押す行為は、個人の認証にもならないからいらない

河野大臣の「脱ハンコ」発言で、ハンコの買い控えも経験。
さらに、少子化による市場の先細りも、以前から不安材料となっていた。

新潟小規模蒸溜所・堂田浩之社長:
従業員を雇用し続けるために、新しいことを絶対にやらなきゃいけないという使命感はあった

とはいえ、経験のないウイスキー造り。
堂田さんは、客として通っていた新潟市のカウンターバーで働く近藤康夫さんを頼った。

ヨークシャテリア・近藤康夫さん:
(堂田さんから)「本気でウイスキーを造ろうと思っている」というお話をいただき、「一緒にやらないか」と(誘われた)

この道13年の近藤さんは、国内ウイスキーブランドのシニアアンバサダー。
蒸留の作業で最も難しい「蒸留液の切り替え」を主に担当している。

ヨークシャテリア・近藤康夫さん:
切り替えが遅かったり早かったりすると、苦い部分が入ったり雑味の部分が入ったりする

堂田さんはこのほか、麦汁の質を一定に保つため、糖化の工程をオートメーション化したり、本場スコットランドの蒸留所を20カ所あまり見学したりして準備をしてきた。

堂田さんがめざすのは、1つの蒸留所の原酒だけで作る、シングルモルトウイスキー。
蒸留所の個性やこだわりが、そのまま反映されるのが魅力。

新潟小規模蒸溜所・堂田浩之社長:
山の中や海の近くにたるを置いて、ブレンドするときに全部あわせて、1杯で新潟を表現できるようなウイスキーが造れたらいい

県内で相次ぐウイスキー造りへの参入

今 県内では、このウイスキー造りへの参入の動きが相次いでいる。

八海醸造・南雲二郎社長:
レギュラー酒の高品質化に取り組んできて、結果として今がある

清酒・八海山で知られる南魚沼市の八海醸造も、2021年3月からウイスキー造りを始めた。

その背景にあるのは、強い危機感。

八海醸造・南雲二郎社長:
日本でのアルコール消費量は確実に減る。もうとっくに減っている。ウイスキー造りも将来の存続の可能性を広げるものという期待はすごく大きい

八海醸造は5年前、地元でウイスキーの試験的な製造に着手。
蒸留所を建設したのは、社長が以前から交流のあった北海道のニセコ町。

2020年度、16万人の外国人が宿泊したニセコ町。
蒸留所には、観光客向けの店舗も併設予定で、日本伝統の技術を世界に発信していく考え。

八海醸造・南雲二郎社長:
八海醸造の一番大事な目的は、「終わらない会社」。未来永劫終わらない会社を目指す

大谷や八海醸造が製造に取り組むウイスキーは、近年市場が急拡大。
国内の消費量は2016年からの5年間で44%も増加。
海外への輸出も増え、輸出額は去年は清酒を抜き271億円となっている。

海外のコンテストで金賞に輝くウイスキーも

こうした中、県内にも自社ウイスキーの輸出に先行して取り組んでいる会社がある。
新潟市西蒲区のクラフトビールメーカー新潟麦酒。

新潟麦酒・宇佐美健社長:
これは全部アメリカへの輸出ですね。2万本近くなると思う

新潟麦酒は、3年前からウイスキー製造に乗り出し、現在は年間約80万本を世界30カ国以上に輸出。
2020年の売り上げは、5億7,000万円にのぼっている。

主力は、海外から輸入した原酒をブレンドし、新潟で追加熟成させた銘柄「越ノ忍」。
ミズナラのたるで熟成させた豊かな香りが特長で、海外のコンテストで何度も金賞に輝いている。

新潟麦酒・宇佐美健社長:
味・品質・値段、この全てで競争力がなければ海外では生き残れない。スコットランドの有名なブランド、日本の大手ブランド、それに匹敵するところまで広げていきたい

経営者たちの思いが込められたウイスキーが、どれだけ消費者の支持を獲得できるのか。
今後の動向に注目。

(NST新潟総合テレビ)